おはようございます。
新年最初の話題は「原作者のお仕事」にしましょうか。
というのも旧年中、私の所に(編集の石川さんを通じて)いくつか「原作者になりたいんですが」という問い合わせが来てたのに、まったく対応しきれてなかったので、まとめてお答えしようかと。
「原作者は、目指すな!」
…いきなりな返答ですみません。原作者って、漫画家のように「なろうとして目指してなる職業」じゃないな、と。おそらく「原作者を目指す」方って、漫画が好きで、けど絵は描けない(もしくは描きたくない)から、得意なシナリオの分野で漫画界で生きていくには原作者だ、と考えてらっしゃると思います。数ある雑誌を読んで「これくらいなら自分の方が面白い話が書ける。この程度で原作者を名乗れるんなら、自分でも」と。そういう向上心はとてもいいと思います。けど、向上心や才能だけじゃどうしようもないところがあって。
「原作者は、もうからない!」
いやホント。漫画で家は建ちますが、原作で家は建ちません。確かに売れっ子の原作者は何人かいますが、その数は売れっ子の漫画家に比べれば、遥かに少ないです。「うちの子供が漫画の原作者になりたいと言うのですが」という親御さんがいれば、私はこう言います。「もしお子さんがそこそこ絵が描けるなら、しっかり絵の勉強をさせて、漫画家にさせましょう」と。確実に、原作者よりも漫画家の方がお金になりますから! 原稿料も単行本印税も。若い人の中には「バクマン。」を読んで、「作画と原作の取り分は5:5」だと思ってらっしゃるかも知れませんが、あれは「サイコーとシュージンの二人が仲良しの同級生」だから成立する話。本来なら原作者はもっと少ないです。特にあの雑誌は! あとそれに、原作よりも作画の方が潰しがききます。ゲームの作画とか、同人誌(親御さんは眉をひそめるかも知れませんが)とか。
同人誌の話が出たのでついでに言いますが、「最近の同人上がりの作家は自分でストーリーが作れないから、原作者の存在はますます必要のはずだ」という考えがあります(私は反対ですが)。確かに同人誌出身の作家は増えてますが、それはただ編集部の台所が厳しいからです。新人賞に賞金なんて用意できない、1から新人を育てる余裕もない。だからある程度出来上がっている同人作家スカウトに力を入れているだけで。そんな編集部が、原作者までつけるお金を用意できるとはとても思えません。万が一、作家がストーリーを考えられないなら担当が変わりに考えます。
例外があるとすれば、ラノベのノベライズですね。自社のヒット作をコミカライズしたい。けど、漫画家も担当も「ネーム」が切れない、という時。そういう時には「ネーム原作」のできる人に声がかかります。実は昨年、私にもそういう話がありました(アニメにまでなった作品です)。けど、とてもネーム原作者にまでお金を用意できません、と、先方から断わってきました。…とすると、これも例外じゃないか。とにかく、原作者は、もうからない。お金にならないことを承知で目指すなら、反対はしません。
これまでの話は、あくまで「漫画原作者を目指す人」に向けて書いたテキストです。例えば弁護士さん、公認会計士さん、もしくはお医者さんという「偉い人」が原作をする場合には、それなり高額のギャラが支払われます。あ、そうだ。
「原作者を目指すなら、国家資格を取れ!」
…これを締めの言葉にしたいと思います。身も蓋もないですが。

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