小説『7.5グラムの奇跡』  書籍関係

[書籍紹介]

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7.5グラムとは、人間の眼球の重さ

主人公の野宮(のみや)恭一は国家試験に合格し、
視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、
なかなか就職先が決まらなかった。
後がない状態で面接を受けたのは、
北見眼科医院という、町の小さな眼科医院。
ようやく北見眼科医院に採用され、
視能訓練士として働き始める。
どちらかというと不器用で
技師には向かないと言われた恭一なので、
新米の間は失敗続きだったが、
北見医師や先輩たちの支えがあって、
次第に視能訓練士として、力を付けていく。
恭一の北見医院での1年間の成長記録
この連作短編集。

5つの章で扱う患者は、
心因性視覚障害の少女、
円錐角膜の女性、
緑内障の男性、
緑内障と認知症の老夫婦、
ぶどう膜炎の少年
たち。
その患者たちに恭一は、寄り添い、
治療のための補助検査をする。

その恭一を取り巻き、
人が良いながら、プロの眼科医として
確かな腕を持つ北見治五郎医師、
凄腕の視能訓練士・広瀬真織、
マッチョな男性看護師・剛田剣、
カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣たち。
そして近所の喫茶店ブルーバードのオーナーの三井さん、
緑内障が進み、職を退いて、
ブルーバードで働くようになった門村さん、
亡くなった祖父との約束の青い鳥・
ルリビタキを探し求める木村君
たちが周辺を彩る。
みんな善人で、一人として悪人は登場しない。

従って、読中感、読後感はすこぶるいい

視覚というのは、5感の中で最も重要なもので、
私は他の4つの感覚を失ったとしても、
視覚だけは残してもらいたい、と思っている。
ただ、普段の生活の中で、
その価値を自覚していないことも確かで、
本の中で、次の言葉が胸に響く。

見えるということは、この世で、
最もありふれた奇跡なのだ。


この部分で、以前読んだ小説の中に出てきた、
                                        
そもそも目は五億年ほど前に奇跡のように誕生した器官だという。
                                        
という言葉を思い出した。

視力医療に関わる件を
小説で読んだのは初めてだ。

著者の砥上裕将は、きっと医師だろうと思ったら、
そうではなく、
水墨画家だという。
水墨画の世界を描いた「線は、僕を描く」で
第59回メフィスト賞を受賞しデビューした人。

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同作でブランチBOOK大賞2019受賞、
2020年本屋大賞第3位に選出された。
眼科医療に関わる専門的知識を学んで、
小説として確立する手腕は確かだ。
ただ、身近にはいて、
妹さんは視能訓練士だという。

視能訓練士という職業を知ったのは、初めてだが、
ざっくりいうと目の専門の検査技師らしい。
病院というのは、中心は医師だが、
それを支える専門職が沢山いる。
そのことを、本書は、次のように書く。

病院に勤め始めて、時間が経つうちに、
病院=医師ではないのだと思うようになった。
医師の診断を支えるために
幾つものシステムや機材がそこにあり、
たった一人の治療のために
何人もの医療従事者が力を尽くしている。
機材や、知識や、経験を、
たった一つの判断のために
惜しみなく注ぎ込んでいく。
患者さんには見えないかもしれないけれど、
何気なく流れていく一つ一つの所作は、
研鑽と研究と膨大な経験によってようやく得たものが多い。
その高度に洗練された流れを、
僕は、仕事として感じ取っていた。
その流れの最後の場所に、
医師の診断があり、
患者さんの治療と人生がある。
それは病院の遥か外にも繋がっていて、
誰かの笑顔や、瞳の輝きになる。
北見先生は
僕らがチームで行う仕事の最後の一手を決断してくれる人なのだ。
先生を誇らしく思い、頼もしく思うことは、
不思議とチームを信じること
そのものであるような気がした。


盲導犬と暮らす書評家の女性を描く感動的な小説、
平岡陽明の「ぼくもだよ。」の紹介は、↓をクリック。

「ぼくもだよ。」

先にあげた
そもそも目は五億年ほど前に奇跡のように誕生した器官だという。
という言葉は、この本の中に出てきたもの。

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