映画『ドライブ・マイ・カー』  映画関係

[映画紹介]

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村上春樹の短編「ドライブ・マイ・カー」を映画化、
しかも3時間近い長尺
と聞いて、あの原作をどうやったら、
そんな長い映画に出来るのか、不思議に思った。
更に、同作が収録されている
短編集「女のいない男たち」から、
他の2つの短編「シェエラザード」と「木野」も
織り込んでいる、と聞いて、
異質な3つの短編をどうやってつなげるのか、という関心も抱いた。

ちなみに、「女のいない男たち」(2014)は、
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」(2013)と
「騎士団長殺し」(2017)の間の作品で、
「長編小説もさすがに書き疲れたし、
そろそろまとめて短編小説を書いてみようかな」

との志で、2013年から2014年にかけて、
文藝春秋他に掲載された作品5作と書き下ろし1作で構成されている。
「色彩を〜」の前には、
あの長大な「1Q84」三部作を書いており、
「長編小説を書き疲れた」というのは、なるほど、と思わせる。

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舞台俳優であり演出家でもある家福(かふく)は、
脚本家の妻・音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。
しかし、妻が浮気をしていることを知っており、
ある時は、予定変更して帰宅した際、
その浮気現場に遭遇してしまったことさえある。
それでも二人は愛し合い、
娘を4歳で肺炎でなくした他は、
円満で豊かな夫婦生活を送っていた。

ある時、家福が出掛ける間際に、
妻に「今夜話したいことがある」と言われ、
夜、帰宅した時、妻はクモ膜下出血で死んでいた。
実は、妻から何かの告白を受けるのではないかという予感から、
わざわざ時間を潰して帰宅し、
もっと早く帰宅していたら、
と家福の心の中に後悔が残った。

ここまでで40分
突然、クレジットタイトルが表示され、
ああ、これから話が始まる前振りであったか、と認識する次第。
それにしも、長い前振りだ。

それから2年後、家福は広島の演劇祭で上演される
チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の演出を依頼され、
広島に愛車のサーブ・コンバーティブルを運転して出掛ける。
全責任を任され、
オーディションから立ち会う、長期滞在だ。
そこで主催者から、車の運転はしないでくれと言われ、
(過去に出演者が人身事故を起こしたという)
若い女性運転手をあてがわれる。
亡くなった娘が生きていたら、その年齢だ。
自分の車を他人に運転されるのはいやだったが、
みさきというその女性の運転の腕は確かだった。

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オーディション応募者の中に
高槻という若い俳優がいて、
その男は妻の浮気相手の一人だと家福はみなしていた。
稽古は進み、出演者たちの化学反応が起こり始めるが・・・

原作では、妻の音も俳優だが、脚本家に変えられている。
愛車のサーブは原作では黄色だが、
映画では見た目がいいのか、赤色になっている。
他の二つの短編、「木野」からは、
妻の浮気現場を見てしまう、とうい挿話のみが使われている。
「シェエラザード」は、高校の同級生の家に忍び込む少女の話だが、
それは、妻がベッドサイドで話す物語となっており、
高槻もその話を知っていることから、
妻との関係を証拠づけるだけでなく、
家福が聞いていた先の話を高槻が知っていたことで、
家福は衝撃を受ける。
(この結末は映画のオリジナル)

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原作は、妻の死後、
浮気相手と飲む時の家福の複雑な心理を描く話だが、
映画は、「ワーニャ伯父さん」の読み合わせ、
立ち稽古の進行状態に添って進められる。
車の中で、妻の録音したセリフを聴きながら、
ワーニャのセリフを演ずる、という形で、
妻のことを常に意識していなければならない。
巧みな脚色で、
3時間の長さを感じさせない。
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したのもなるほどと思わせる。

その「ワーニャ伯父さん」だが、
韓国・台湾・フィリピンなどから
オーディションで選ばれた
複数の国の俳優を使っての、他言語上演
その上、手話まで加わる。
前に蜷川幸雄演出で他言語劇「オイディプス王」を観たことがあるが、
演出家の自己満足的な実験で、
観客には迷惑な上演方法だと思った。
「ワーニャ伯父さん」は、4カ国語の字幕が出るが、
「オイディプス王」は字幕さえなかった。

運転主のみさきは、
北海道出身で、身寄りがなく、
秘密を抱えている。
その秘密は二人で北海道に行った際、明かされる。
広島から北海道。
飛行機で行けばいいのに、
と思うが、やはり、家福の愛車で行かせたかったのだろう。
これも原作にはない設定。
もっと近く、仙台あたりにしたら、その点は克服できるのだが。

最愛の妻を失った男が
妻の最後の告白を聞かなかったことでの
責め葛藤喪失感に責め苛まれる。
「ワーニャ伯父さん」は家福の持ち役で、
妻の死後、演ずることが出来なくなっていたが、
最後に家福は・・・

家福を演じるのは西島秀俊

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ドライバーのみさきには、歌手でもある三浦透子

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妻・音を霧島れいか

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高槻を岡田将生が演ずる。

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岡田はこの役には適役ではなく、
もっと他の中堅役者は起用できなかったのか。

監督は濱口竜介
小説と演劇の二重構造で
原作を見事にふくらませて映像化し、
人間の心のありようを描いた、
その力量は評価されるべきだ。

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題名は、ビートルズの楽曲にちなむ。

映画を締めくくる、
「ワーニュ伯父さん」の最後のセリフ
失意のワーニャを姪のソーニャが慰めるセリフは、
以下のとおり。

「仕方ないわ。生きていかなくちゃ・・・。
長い長い昼と夜をどこまでも生きていきましょう。
そしていつかその時が来たら、おとなしく死んでいきましょう。
あちらの世界に行ったら、
苦しかったこと、泣いたこと、
辛かったことを神様に申し上げましょう。
そうしたら神様はわたしたちを憐れんで下さって、
その時こそ明るく、美しい暮らしができるんだわ。
そしてわたしたち、ほっと一息つけるのよ。
わたし、信じてるの。
おじさん、泣いてるのね。
でももう少しよ。
わたしたち一息つけるんだわ・・・」


5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/rpjzaZn4_V0

なお、私はチェーホフは苦手で、
どの舞台を観ても、良いと思ったことがなく、
なぜこんなにもてはやされるのか、不思議だった。

タグ: 映画



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