『人類滅亡小説』  書籍関係

[書籍紹介]

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山田宗樹による、
人類滅亡の危機を描く近未来モノ。

何が原因で人類が滅亡するか。
それは、「雲」

空に浮かぶ雲の塊が赤く染まる現象が全世界で発生する。
その正体は、雲の中の微生物で、「コロニー雲」と呼ばれる。
赤い雲は空を覆うようになり、
雲の中で変異・大量発生した微生物は、
周囲の酸素を吸収してしまう。
雲が自重で落下すると、
その場所は急激な酸欠状態になり、生物は死んでしまう。
やがて、赤道に集まった雲は
ベルト状になって「赤道バンド」と呼ばれ、
そこから派生した雲が北上し、
まるで台風のように日本を襲う。

色素を含む雲塊が上空を塞ぐため、
太陽光は地上に届かなくなり、
気候は激変し、寒冷化が進む。
太陽光が弱まることで植物の光合成が阻害され、
酸素濃度低下に拍車がかかる。
作物の収穫量も激減し、
地球規模で食糧不足が起こる。

地表の酸素濃度はどんどん減少し、
21パーセントから20、19、18パーセントと下落する。
もはや酸素生成プラントでは間に合わない規模だ。

生き残りの道を模索する各国政府は、
外気と完全に遮断した巨大シェルター、
10万人規模の密閉型巨大居住施設シールドポリスを建設する。
理論上は500年以上人類は存続出来るという。

日本でも、最初の雲落下の被災地である
見和希市(みかずき市)にちなみ、
「みかずきU」というシールドポリスが建設される。
しかし、全員を収容するわけにはいかない。
定員の12万人の人選はAIに任される。
親子や兄弟一緒の入居は許されない。
選ばれても、家族とは別れられないと、
死を選ぶ人も出て来る。

AIから「落選」させられた人々は
「グレートエンディング」を叫ぶ。
つまり、人類を選別せずに、
一緒に滅亡の時を迎えようというのだ。
そして、暴徒となり、
シールドポリスへの入居を妨害しようというだけでなく、
シールドポリスを破壊するテロ行為さえめざすようになる・・・

更にシールドポリスへの入居を、
計画より早めなければならない事態が生ずる。
コロニー雲の中に硫黄代謝型の細菌が繁殖し、
その代謝産物である硫化水素を蓄積。
雲が崩壊して地上に落ちてくれば、
生物は即死をまぬがれない。

という、誰も考えなかった、人類滅亡のプログラム

この物語に並行して、
見和希市出身の
ある一家の三代に渡る去就が描かれる。
また、宗教に走る者、破滅を選ぶ者、
あきらめる者、テロに走る者等の動向も描かれる。
ただ、こうした人間ドラマは、
意外と希薄だ。
これは、山田宗樹の一連の近未来モノに共通の欠点のようだ。

最後の方で、シールドポリスにテロリストが(かなりの多数)潜入し、
人間爆弾と化す、などというのは、
著しくリアリティを欠く。
もう少し違う展開はなかったのか。

酸素に関する、次のような記述が目を引く。

地球が誕生したのは46億年ほど前だが、
大気に酸素が蓄積しはじめたのは22億年前とされている。
それが5億3千万年前のカンブリア紀には、
濃度が初めて21パーセント、
つまり現代の水準に達した。


生命の発生と維持、
人類の存在も、
地球環境の整備という、
奇跡の産物だったのだ。
その均衡が破れれば、
ひとたまりもないことを教えてくれる。

人類の滅亡が微生物によってもたらされる、
という着想は、
今の新型コロナウィルスにも通ずる。
その着想は驚かされるし、見事である。





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