小説『沈黙の町で』  書籍関係

[書籍紹介]

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2011年5月から2012年7月まで朝日新聞に掲載された、
奥田英朗による新聞小説。
2013年2月に朝日新聞出版から刊行された。

北関東のある地方都市で、
中学二年生の生徒が校内で転落死した。
事故か、自殺か、それとも殺人か
目撃者は誰もいない。
ただ、直前までテニス部の仲間4人と
部室棟の屋根の上にいたことまでは分かっている。

遺体の背中には、つねられた痕が二十数箇所もあった。
警察は、祐一と一緒にいた男子生徒4人を傷害容疑で逮捕
ただし、逮捕は14歳に達していた2人で、
後の2人は13歳だったため、
補導され、児童相談所に送られた。
警察がこうした強硬な手段を取ったのは、
4人の口裏合わせを封じるためだった。

この事件を巡り、様々な方向からアプローチする。

教師をはじめ、校長や教頭や主任ら。
警察署の刑事たち。
新任の検察官。
被害者家族。
4人の中学生の家族。
同級生。
新聞記者。
弁護士。

4人は取り調べで、
いじめについては認めたものの、
死亡したことについては知らない、と言う。
警察は中学生は嘘をつく、
という前提で、拘留期間が過ぎた後も、
しつこく聴取を続ける。
逮捕という手段を取ったためにメンツもかかっている。

被害者は町の老舗呉服店の跡取り息子。
その叔父が仕切り屋で、介入して、混乱させる。
加害者の4人に弔問を強制したり、
月命日ごとに来訪することを強要したり、
学校に全生徒の作文を求めたり、
それを全部見せてくれと言い、
保護者からの反発もあり、
校長たちは翻弄される。
母親は、「真実が知りたい」と言い、
しかし、4人の少年たちの話は始めから信じていない。
と同時に、
「加害者がのうのうとしているのが許せない」
ため、
4人の少年がテニスの大会に出るのを
学校に言って阻止しようとする。

加害者とされた4人の中学生の親は悲痛で、
自分の子どもに殺人の嫌疑がかけられているのを
そんなはずがない、と否定する。
「うちの子に限って」という心理だ。
特に母子家庭の母親は、立場もあって強硬。
逮捕された中学生の祖父が県会議員のため、
弁護士に依頼するが、
こういう案件に慣れすぎているため、
頭ごなしに自分の方針を押しつけようとする。
要は被害者家族の怒りを買わないための措置で、
言いなりだ。
4人の家族は混乱する。

そういう人間模様を
奥田英朗は、実にていねいに粘り強く描写する。

途中から時系列が重なり、
中学生たちの2年生になった頃から事件までの生活が
捜査の状況と並行して進むようになる。
そこで被害者がどんな少年だったのか、
なぜいじめに合ったのかが
次第に明らかになってくる。

中学生は発展途上の人間で、
周囲に流され、
何より残酷であることが描写され、
なんだか切ない。

だから、はじめ口をつぐんでいた生徒たちの中から、
次第に真相が明らかになってくる経過は、ちょっとこわい。

最後に判明したかのように見える真実も、
少々怪しい。
だったら、もっと早めに告白していただろうと思わせる内容。
そういう意味で、
読後感はややモヤモヤする。

だが、奥田英朗の筆力で、
一気に読ませる。




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