映画『BLUE/ブルー』  映画関係

[映画紹介]

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ボクシングジムに所属するボクサーたちを描く人間ドラマ。

といっても、栄光の道を行く天才的ボクサーを描くわけではない。
ボクシング界のピラミッドの底辺に属する、
まさに末端のボクシング愛好家たちだ。
だが、一度ボクシングの道を志した以上、
プロにはなりたい。
試合に出たい、
出来れば勝ちたい、
チャンピオンになりたい。
その夢と希望を抱いて日夜精進する若者たちだが、
その前に立ちはだかるものは過酷だ。

原則としては群像ドラマだが、
主に3人に焦点を当てる。

楢崎剛(柄本時生) は、
勤務先のゲームセンターの同僚の女の子の気を引くために、
「ボクシングをしている風」になりたい男。
瓜田信人(松山ケンイチ) は、
人一倍の努力家だが、
現在12連敗中。
理論家で基本に忠実で、
ジムでは訓練役になり、コーチ役にもなれるのだが、
「負けてばかりの人の指導は受けたくない」
と後輩に言われる。
それでも瓜田は静かに笑っている。

長くチャンピオンを出していない大牧ジムの中では
小川一樹(東出昌大) がただ一人、期待を担っている。

その小川と瓜田をはさんで天野千佳(木村文乃) の存在が微妙。
元々瓜田にボクシングを勧めたのが千佳で、
後で瓜田が誘った小川と千佳が恋仲になった。
瓜田が実は千佳のことを想っていることは、
千佳も小川も知っている。

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そうした中、楢崎が意外な才能を発揮してプロテストに合格、
デビュー戦ではさんざんな目に遭う。
瓜田も元キックボクサーと対戦し、連敗を重ねる。
小川だけがタイトルマッチに勝ち、チャンピオンになる。
チャンピオンといっても、
17階級もある中の17分の1の存在でしかない。
それで食べていけるわけはなく、
トラック運転手の仕事は続けている。
パンチドランカーで脳に損傷が出ており、
選手生命は短いと思われる。

やがて瓜田は引退し、
小川と千佳は結婚し、
楢崎は同僚に女の子を奪われ・・・

スポーツや芸能や文学など、
どんな世界でもそうだが、
脚光を浴びるのは、ほんのわずかな人だけで、
後はそのピラミッドの底辺を支える役割でしかない。
それでも自分の選んだ好きな道のために努力を惜しまない。
それが報われないことだとしても。
この映画は、そうした陽の当たらない、
成功とは程遠い人々を描いて
胸を打つものがある。
しばしば泣きそうになった。

吉田恵輔監督は、中学生の頃から現在に至るまで、
30年近くもボクシングを続けているそうで、
本作では殺陣指導も兼任している。
それだけに、細部にリアリティがあふれる。
特に、ジムでの練習の部分は、
よく知っている者でないと描けない内容だ。
3人の所属する大牧ジムは経営が難しく、
ダイエット気分でやってきている主婦たちを
会費目当てで所属を認めている有様などもリアルだ。
チャンピオンになった小川が
勝利者インタビューで繰り返し人の名前を間違えるなど、
脳の損傷への不安がさりげなく描かれる。
この場面での東出昌大の演技がなかなかいい。
楢崎の試合を眺める聴衆が
「青の方が強いな」
「いや、赤の方が弱いんだよ」
と言う会話もなかなか。
自信満々でありながら、
基本をおろそかにしたため、
プロテストに落ち、
スパーリングでめためたにされる若者なども出て来る。

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普通ボクシング映画だと、
「再起」や「勝利」や「奇跡」が描かれるのが普通だが、
この映画は「挫折」と「失望」を描いている。
強い者は勝ち、弱い者は負ける。
全員が勝てるわけではなく、
勝者の陰には、敗者がある。
その厳然たる現実を突きつける。

「ロッキー」とは対極にある映画だが、
これもまた見事なボクシング映画だ。

題名の「ブルー」とは、
タイトルマッチで挑戦者側のコーナーの色。

吉田監督は、本作について、
「何箇所もジムを渡り歩き、
沢山のボクサーと出会い、見送っていきました。
そんな自分だからこそ描ける、
名もなきボクサー達に花束を渡すような作品」

とコメントしている。
瓜田のモデルと思われる
2勝13敗で突然姿を消したボクサーに着想を得たという。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/PLDDeaBuVqg

丸の内TOEI他で上映中。

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