『マンション管理員オロオロ日記』  書籍関係

[書籍紹介]

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三五館シンシャの「○○員○○日記」シリーズの第4弾
今回はマンションの管理人。
(普通の感覚では「管理人」だが、
シリーズの統合性から「管理員」と言っている?
これが正式名称?)

似た題名の本に
東海林さだおの「ガン入院オロオロ日記」
藤子不二雄(A)の「妻たおれ夫オロオロ日記」
がある。

表紙の折り返しに、
「マンション管理員といえば、
エントランス横にある小さな事務所に
ちょこんと坐っている年配男性というイメージ
をお持ちの人が多いのではないだろうか。
たしかに管理員は高齢者と相場が決まっている。
若くてもせいぜい60歳くらいだろう。
ところで、なぜ老人ばかりなのだろう。
ずばり言おう。
賃金が安いからである」

と書かれている。

著者の南野苑生(みなみの・そのお)氏は、72歳、現職の管理員。
広告代理店に勤務後、
広告プランニング会社を設立、
13年で潰し、
59歳の時、妻と共に
住み込み管理員に。
はじめの2つのマンションの勤務は短かったが、
3つ目の「泉州レジデンス」(仮名)は、
理事長、理事、管理会社との相性がよかったのか、
11年も継続している。

その管理人としての苦労話を披露するのが本書。
主に住民からの要望に応えるべく悪戦苦闘する姿が描かれている。

たとえば、勤務時間
9時から5時までなのだが、
それ以外の時間にも住民の要求はやって来る。
住民にとっては、9時から5時まで、
というのは考慮の外。
住み込みなのだから、
24時間対応だろう、と思ってしまうのだ。
(勤め人や夫婦共働きの人にとっては、
 9時から5時まで以外は時間外、
 と言われても困ることだろう)
早朝巡回、夜間巡回などもあり、住民への対応を含め、
それは全てサービス残業。

その上、住民の要求は
ちゃんとしたものから、
ちゃんとしないものまで多岐に渡る。
完全に私用のものもある。
(たとえば、「病院に行くから、タクシーを呼んでくれ」とか。
マンションの使用細則(たいていは国交省のひな型を踏襲)には、
「組合員たるべき区分所有者は
管理員に私用を依頼しないこと」

と書いてあるのだが。
(そんな規則があるとは知らなかった)

また、管理員には、「判断」をしてはならない、と
研修で強調される。
たとえば、水漏れが起こり、
「これは保険が利きますから」
などと「判断」を口にしてはいけない。
保険が利かない場合、問題になるからだ。

中には、管理員を「使用人」とみなして、
無理難題を言ってくるやからがいる。
上から目線で、命令する。
これについては、次のように書いている。

私たち管理員は、住民と対等に話せる立場にはない。
“暗黙のヒエラルキー”ともいうべき位階があって、
まずは、クライアントである管理組合が頂点。
ナンバー2は、その構成員である住民さん。
続いて管理会社のフロントマン(管理会社のマンション担当者)。
そして最後に管理員なのだ。


管理員は、管理会社によって雇用されているのだが、
住民は「私たちが雇っている」と思っている。
それなら、まさに「使用人」だ。
しかし、雇用関係があるなら、
管理員といえども「労働者」で、対等なのだが、
そんな風に思ってくれる住民は少ない。

管理員をコンシェルジェかなにかのように
使いまわす住民さんは、けっこう多い。


それでも、良い理事長や良いフロントマンに当たると、
それは幸運といえるものだ。

最初に勤めたマンションの理事長もフロントマンもひどかった。
理事長は、マンションの備品を私的に流用、
自分で購入したものもマンションの経費で落とす。
フロントマンは馴れ合いで、迎合する。
管理員が指摘しても聞きはしない。
他のマンションの雇用形態を言うと、
「だったら、その会社に移れば」
と言う始末。

そのやめたマンションは、
管理員が定着せずに、
次々と変わったという。

住民同士の争いも辛い。
管理規約では、
住民トラブルは住民同士で解決し、
管理組合は関知しないことになっているからだ。

管理組合が関知しないことは、
管理会社も、その従業員である管理員は関知しない。


住民も様々で、

住民の中には、
こんなことまで文句をつけるのかと
あきれ返ってしまうほど
わがままな人間もいる。


弱い立場の管理員に居丈高に物言いする人は後を絶たない。
筆者の奥さんがなかなかの人で、
あまりにひどい住民の要求に応じず、
怒り狂った住民が管理会社に連絡、
会社からは謝るように要請が来たが、
断固、奥さんは「私、絶対に謝らないからね」と主張。
管理会社の部長、人事課長が説得に来訪。
人事課長は奥さんの話を聞いて
「奥さんは謝らなくていいと」の言葉を残してくれた。
常務からも電話が来て、あらためて謝罪を要求されたが、
奥さんは「その求めには応じられません」と答えた。
最後は社長まで登場。
管理員室の中がきれいに整頓されているのを見て、
仕事もちゃんとしているのでしょう、理解を示し、
「おおよそのことは常務から聞いています。
ですが、こうやって奥さんのお顔を拝見していると、
謝ってほしいとはいえなくなってしまいました。
こんなときは、なにもかも忘れて旅行でもするのが一番です」

と「2泊3日の旅行ができるほどの金員」を置いていった。
社長も管理員の立場を理解していたのだろう。

「マンションの3大トラブル」というのがあり、
一に無断駐車、二にペット、三に生活騒音、だという。
ゴミの問題も大きい。
特に、収集日が市で決まっている場合は、
それを守らない住民とのトラブルは絶えない。
私の住んでいるマンションは、
各棟ごとにかなり大きいスペースのごみ出し部屋があり、
中は燃えるゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、缶、ビン、
新聞紙、ダンボール、衣服と細かく分類されている。
カミさんは、
「曜日を気にせずゴミが出せるのは、本当に助かる」
と言っている。

マンションにも人格があり、
構成員がその人格を形成している。
「類は友を呼ぶ」というが、
良い住人のところには、よい住人が集まるし、
悪い住人のところには、同類が集まる。

私のマンションは6棟、1千戸もある大きな団地だが、
特にトラブルは聞かない。
むしろ役員間の問題の方が多いようだ。
一時期、理事になって、短期間やってみたが、
「現場主義」の理事長のもとに、
問題を分担して対応する姿は好感が持てた。

大きな管理会社に業務委託しており、
管理員は常駐、夜間も宿直がいる。
委託費はかなり高額だが、
庭木の整備や掃除もしっかりしてくれている。

初期の頃、管理費を惜しんで、
役員が管理員をしたことがあったが、
管理員室で昼間から飲み会が始まり、
仕事をしなかったので、
管理会社への委託に切り換えたと聞いている。

夜中に中庭で話をしている若者たちがいて、
管理員に注意してくれるよう依頼したことがあるが、
あれは時間外だったのだろうか、
いや、宿直制度があるのだから、
24時間対応、
従って業務のうちだろう、などと心配している。

ところで、冒頭に紹介した、
管理員は高齢者ばかり、
その原因は給料が安いから、
ということだが、
南野さんは、自分の収入を公開している。
それによると、給料は手当てを含めて月17万、
いろいろ引かれて、手取りは15万程度。
「副管理員」という立場の奥さんは平均して月6万。
手取りで夫婦併せて21万円。
ただし、家賃はかからない。
その上、光熱費も会社持ち。(ガス代だけは本人負担)
まあ、老夫婦で暮らすには十分だと思うが、
南野さんの場合は、
年金が夫婦で22万入る。
月にすると11万円。
全部合わせると、32万円。
結構な暮らしだと思うが。




2020/11/10  8:56

投稿者:一読者より

管理員と職員の立場が良く似ています。
どの仕事も大変ですよね。

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