小説『チームV』  書籍関係

[書籍紹介]

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「チーム」「ヒート」「チームU」と続く、
堂場瞬一の駅伝・マラソン小説第4作。
「チームU」の最後に参加したはずの
五輪記念マラソンの結果は全く出てこない。
どうも、なかったことにしてしまったらしい。

「チーム」の学連選抜チームの時から、
既に17年が経過。
35歳の山城悟はとうの昔に引退し、
故郷の瀬戸内海の大崎上島で、
レモン農家を営む実家の手伝いをし、
世捨て人のような生活をしている。

しかし、走るのをやめたわけではなく、
毎日20キロ走って、体型は変わっていない。

そんな山城に、個人コーチの話が舞い込む。
東京オリッピックのマラソンでメダルを狙えるランナー、
日向誠が極度のスランプに陥っているのだ。
初マラソン歴代2位の成績を残し、
(初マラソン1位の最高記録は山城)
次の北海道マラソンでも歴代2位の成績で優勝した後、
次の福岡マラソンでは16位、
続く東京マラソンでは途中棄権。
フォームは安定しており、
技術的には何の問題もないのに、自信を失っている。

所属チームの監督広瀬(箱根駅伝で浦とトップ争いを演じた男)は、
自分の指導に限界を感じ、
「特S選手の能力をさらに高めるためには、
特Sのコーチが必要なんだ。
だからお前に頼んでる」
と、山城に個人コーチを依頼する。

徹底的な個人主義者の山城が受けるはずがなく、
コーチの経験も手法もないと断り続けるが、
今は城南大の監督として、駅伝3連勝中の策士・浦が
様々な手を使って、引き受けるように仕向ける。
決定打は学連選抜チームの監督だった吉池で、
その遺言ともいえる手紙には、
ただひと言「やれ」と書いてあった。

山城は日向のコーチを引き受け、
自分の島に引き取り、指導するが、
コーチ経験のない山城も手さぐりだ。
反発する日向。
ついに島を脱出するが、
臨んだMGCでは惨敗する。
再び山城のコーチに従うが、
山城は、日向の不振に、ある過去の出来事があると感じていた。
その原因とは・・・。
そして、東京オリンピックの選手になる最後の関門、
福岡マラソンに出場した日向は、
ある事態に驚く・・・

と、主役は一貫して山城で、
それを浦が助演する。
福岡マラソン当日、
浦や門脇、朝倉といった学連選抜チームが集結するのも懐かしい。

浦が山城の義弟に言う言葉が意味深い。

「もしかしたら山城は、
とんでもない人格者なんじゃないかな」
「あいつを見ると、面倒を見てやりたくなる・・・」
「性格も悪い、人づきあいも悪い、
でも周りの人はどうしても放っておけない──
そいう人もいるんじゃないかな」


山城の中にも次第に変化が見られるようになる。
コーチをしていた山城が、
日向がある時点に到達した時の述懐。

こういうことなのか──
山城は初めての感情に戸惑っていた。
浦が監督を続けている気持ちが少しだけ理解できた。
人に教えること、強くすること。
自分には一生関係ないだろうと思っていたのだが、
一人の若い選手が日に日に強くなっていく姿を目の当たりにするのは・・・
感動したと言っていい。
自分には、コーチなど絶対にできないだろうと思っていたからかもしれないが。
俺にもまだ、可能性があるということか。
一生走ることから離れられないなら、
自分が走る以外にも、
やれることがあるのかもしれない。
教わったのは俺の方だぞ、日向。


そして、ついに山城は、
福岡国際マラソンの当日、次の言葉を吐く。

「俺たちはチームだからな」

そして、次の記述もある。

山城は初めて、人のために走る意味を見出していた。

そして、最後は、こう言うのだ。

「襷はあいつに渡した。
いずれあいつも、誰かに襷を渡す。
それが、俺たちが生きている世界なんだ」


男を描く駅伝・マラソン小説。
自分には関係のない世界だが、
感動は深い。

なお、シリーズの紹介ブログは、それぞれ、↓をクリック。

「チーム」

「ヒート」

「チームU」




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