小説『チームU』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示します
                                    
堂場瞬一による「チーム」「ヒート」の続編
「チーム」の学連選抜チームの箱根マラソンからは7年後、
「ヒート」の東海道マラソンからは4年の歳月がたっている。

冒頭、前作「ヒート」の
東海道マラソンの結果が出て来る。
勝敗はともかく、えっと思った。
あれだけのハイペースでありながら、
世界最高記録が更新されなかったとは。
甲本の努力は何だったのか。

ベルリンマラソンを制覇し、
日本最高記録保持者として、
ケガなしでやってきた山城悟も、
ついに左膝半月板損傷と、
それを庇っての筋断裂を起こしていた。
2年もレースから離れ、治療に専念する日々だった。
アメリカで外人医師の治療を受け、
日本に帰って、体を作り直す日々がやってくる。
どんな選手でも退く時は来る。
山城の中でもその時は迫って来ており、
来年3月の五輪記念マラソンを最後にすることを考えていた。
1964年の東京オリンピックのコースを走るレースで、
もちろん優勝して引退を表明するつもりだった。

しかし、所属する実業団チーム、タキタが
親会社の業績悪化で廃部となり、
山城は練習の拠点さえ失うことになった。

その時、昔の学連選抜のチーム仲間が手を差し伸べる。
浦は、もう30歳。
大学卒業後、実業団に所属し、
怪我に何度も悩まされ,引退を決意するが、
引退を決めたのとほぼ同時期に
母校の城南大学の陸上競技部の監督就任を要請され、
引き受ける。
その上、学生連合の監督を引き受けていた。
予選会上位の選手の寄せ集めチームで、
名前も学生連合と変わり、
オープン参加で、順位は記録されない。
不慣れな監督を、試行錯誤しながら、
浦はチームをまとめようとする。
あの7年前と同じように。

浦の呼びかけで、学連選抜だった門脇や朝倉,
城南大陸上部の主務だった青木,
東海道マラソンでペースメーカーだった甲本らが
山城を支援するために、集結して来る。
究極の個人主義者の山城は、当初、助力を断るが、
ついにそれを受け入れる。
こうして、学連選抜チーム監督の吉池の提案で、
「チーム山城」が発足する。

タキタの運動部をまるごと引き受けてくれる企業が現れ、
タキタの監督は、最後に実業団駅伝に出場することにし、
山城に出場してくれることを要請する。
五輪記念マラソンを前に断り続けた山城だが、
ついに出場を受け入れ、
アンカーを走ることになる。
襷を引き継いだ時、7位だった山城は、
快調に飛ばし、トップを走る広瀬を捕らえるが・・・

孤高の人、山城にも次第に人間味が出て来るところが
本作の大きな収穫。
山城にも迷いが生じ、壁が前にふさぐ。
記録だけを追う山城の姿が
次第に血の通った姿に見えて来る。
誰も必要としない山城だったが、
学連選抜の人間関係だけは、
いつまでも心の中に継続している。
そして、そんな我が儘な男を応援しようとする
浦たちの心理も描かれる。

最後の113ページは、
実業団駅伝の描写が進む。
デッドヒートを演ずるのは、
7年前の箱根駅伝で浦とトップを競った広瀬だ。
ここにも因縁を感ずる。
しかし、読み進むにつれて、
どんどんページ数が少なくなってくるのに気づく。
あれ、最後は五輪記念マラソンになるはずだが、
紙数が足りない。
もしかして、五輪記念マラソンに
山城は出ないのではないか、と懸念する。

山城は五輪記念マラソンに出るのか。
そして引退するのか。
その結末は、今回も描かれず、
続編「チームV」に引き継がれるようだ。
やれやれ。

それにしても、徹頭徹尾、男しか出て来ない。
つまらない恋愛話などは、
堂場瞬一は全く関心がないようだ。
そういう意味で、
男の物語
男の熱いプライドが炸裂するので、気持ちがいい。




コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ