小説『ホーム』  書籍関係

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堂場瞬一のデビュー作「8年」の続編
(このブログでは4日前に紹介↓)

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20200916/archive

前作から19年後の2019年。
それぞれ登場人物の環境が変化している。
藤原雄大(ゆうだい)は、既に50歳を越え、
マイナーリーグの巡回投手コーチ。
結構、この生活に満足している。
ヘルナンデスは大リーグ機構上級副社長。
常盤は日本に戻り、神奈川県の強豪チームの監督をしている。

そのヘルナンデスが藤原に会いに来て、
東京オリンピックのアメリカ野球チームの監督を依頼する。
予定していた監督の急死で、
後任として藤原に白羽の矢が立ったのだ。
東京オリンピック開幕の二カ月前。
監督経験のない藤原は躊躇するが、結局引き受ける。
しかし、チームはバラバラ。
そこで、藤原は、日本の大学リーグにいる十九歳の
天才スラッガー、芦田大介に目をつける。
というのは、芦田はアメリカ赴任中の両親のもと
アメリカで生まれの日米二重国籍の持ち主。
父親の帰国と共に日本に住み、
高校野球で大活躍。
その後、父親のアメリカ帰国について帰らず、
日本に留まって、大学に通っていた。

オリンピックの選抜チームに入らなかったのは、
日本のオリンピックチームは、
プロ野球の選手で編成されているからだ。
逆にアメリカチームは、大リーグ選手は入っておらず、
マイナーリーグの3Aメンバーで編成されている。

来日した藤原の説得を聞いて、芦田は悩む。
ここで芦田が断ると、
話は終ってしまうので、
当然、芦田は受け入れ、
アメリカチームに合流する。
しかし、チームには、
芦田にポジションを奪われまいとする選手たちの抵抗が待っていた。
そもそも敵チームの日本人ということが反発を買う。
のみならず、日本側からは「裏切り者」呼ばわりされる。
二つの祖国の間で、芦田は板挟みで苦悩するが、
「オリンピックで優勝する」ことだけを目的に専念する。

そうした中、ヘルナンデスをヘッドコーチに加えて
東京に乗り込んだチームは、
バラバラなまま、予選リーグ最下位となる。
あとは、複雑なルールの中、
敗者復活にかけるのみだったが・・・

というわけで、
日本人でありながら、
日本のライバルのアメリカチームに所属する若者と、
日本人でありながら、
アメリカチームの監督を務め、反発の中で苦労する藤原との
東京オリンピックでの奮闘を描く。

「小説すばる」に昨年2月号から11月号に連載。
この時点では、東京オリンピックの延期は決まっておらず、
予言的な物語になるはずだったが、
東京オリンピックが延期されて、
不思議な立場の小説になった。

ただ、設定が面白いから、
国籍の問題、DNAの問題、
二つの祖国の問題など、
重層的な問題を内包して物語が進展する。
ページをめくる手が止まらない。

題名の「ホーム」は、
ホームベースであり、祖国であり、
故郷であり、家であり、居場所であり、と
様々な複合的な意味に取れる。

堂場瞬一は、
「チームV」(実業之日本社)ではマラソン、
「ダブル・トライ」(講談社)ではラグビーと円盤投げ、
「空の声」(文藝春秋)ではスポーツ中継、
そして本作では野球と、
今年になって、
出版社の垣根を越えて
オリンピックを題材にした小説を刊行する
「堂場2020プロジェクト」に挑戦。
その守備範囲の広さを誇る。

藤原が日本に来て、コーヒーを飲む時の描写が興味深い。

コーヒーは圧倒的に日本の方が美味いと実感した。
実際、飲み物や食べ物に関しては、
アメリカは砂漠のような国だ。
味があるかないかぐらいの違いしかなく、
長く暮らしているうちに舌の繊細さは失われる。
自分でもそれは自覚していた。






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