小説『罪と祈り』  書籍関係

[書籍紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

貫井徳郎による、
西浅草を舞台とした
犯罪と友情の物語。

元警察官の濱仲辰司(はまなかたつじ)の死体が隅田川で発見される。
死体は辰司の息子の濱仲亮輔(りょうすけ)が確認した。
頭に殴打の跡が見受けられ、
殺人事件として捜査本部が立てられる。
捜査員の一人、芦原堅剛(けんごう)は亮輔の幼馴染で、
幼いころに父親を自殺で亡くしたため、
辰司が第二の父のような存在である。
それどころか、
町のお巡りさんとして慕われた辰司に憧れて
警察官になったという前歴を持ち、
亮輔とは義兄弟のような間柄だった。

亮輔は父親のことを何も知らなかったことに気づき、
父親の過去について聞いてまわる。
亮輔は父親の心の中に閉ざされた部分があり、
それが何なのかを知りたかったのだ。
調べていく中、
堅剛の父であり、
辰司の親友でもあった智史(さとし)の謎の自殺が
父親の人生に影を落としていたのではないかと推察する。

亮輔は父親の遺品の中から二つのスクラップを発見する。
一つはバブル時代に
土地を売って移転した夫婦の育児放棄と自殺事件。
もう一つは、当時起こった児童誘拐事件。
この誘拐事件は、
身代金が奪われ、犯人も逮捕されなかったという
日本犯罪史上に残る事件だった。

物語は亮輔と堅剛の現代の話と
辰司と智史の28年前の話が交互に展開する。
堅剛の捜査と亮輔の独自捜査が進む中、
ある事実が判明してくるのだが・・・

特色としては、
バブルの時代、
古き良き町であった西浅草が地上げ屋によって
金と力により変えられていった背景。
もうひとつは、
誘拐事件が昭和天皇の崩御にあわせて計画され、
大葬の儀の当日に身代金の受け渡しが行われていたこと。
全国から警官が警備に駆り出された結果、
誘拐事件に関わっていられないという
間隙を縫って犯罪が行われたことだ。

昭和が終わり、平成に変わる狭間での凶悪事件が
最後に暴かれる。

ただ、いくつかの穴がある。
辰司の司法解剖の結果、
溺死と判明していたのなら、
捜査の方針が変わっていたはず、という点。
また、そうであるなら、
犯人の罪状は傷害致死ではなく、
単なる傷害罪になるはずだということ。

作者は途中で気づきながら、
あえて触れなかった形跡がある。

二代にわたる物語で、
構成も凝っていながら、
最後は、過去の罪が
白日のもとにさらされたのかどうか不明など、
もやもや感は読者に残る。

誘拐事件の犯人たちの動機も短絡的で共感できない。
辰司の事件の方も、
真相には納得できない。
登場人物の心の中も十分描かれているとは言えず、
作られた構造によって
作られた人間関係がいかにも不自然で、
文章も乱暴だ。

ただ、大葬の儀と誘拐事件をからませた着想は瞠目した。




コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ