みをつくし料理帖1「八朔の雪」  書籍関係

[書籍紹介]

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高田郁(かおる)による
連作短編集「みをつくし料理帖」の第1作。

「みをつくし料理帖」シリーズは、
ハルキ文庫(角川春樹事務所)より
2009年5月に第1作「八朔の雪」が刊行され、
2014年8月刊行の第10作「天の梯」で完結した。

2012年5月に
レシピ本「みをつくし献立帖」を刊行、
2018年9月には、
登場人物のその後を描いた特別巻「花だより」が刊行され、
全部で12冊のセットになっている。
全巻合わせて300万部売れたというから、
文庫本といえども、あなどれない。

2012年及び2014年にテレビ朝日で
北川景子主演でスペシャルドラマ化、

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2017年及び2019年にNHKで
黒木華主演で連続ドラマ化され、

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更に、角川春樹の最後の監督作品として
松本穂香主演で映画化され、

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今年秋に公開予定。

実に幸福な小説である。

主人公の(みを)は、18歳。
大阪の漆塗りの職人の娘だが、
8歳の時、享和2年(1802年)の淀川の水害で両親を亡くし
天涯孤独の身となってしまう。
大坂随一の名店と謳われる料理屋「天満一兆庵」の女将、
芳に助けられ奉公人として勤め始める。
やがて天性の味覚を主人の嘉兵衛に見込まれた澪は、
厳しい修業に耐え、着実に腕を磨いていくが、
天満一兆庵は、隣家からの延焼で焼失してしまう。

江戸店を任せていた息子の佐兵衛を頼って江戸へ出た
嘉兵衛と芳、澪の3人を待ち受けていたのは、
佐兵衛が吉原通いで散財して店を潰し、
行方をくらませているという報せだった。

度重なる心労により、
嘉兵衛は「天満一兆庵」の再興を
二人に託して亡くなってしまう。
澪は芳と一緒に長屋に暮らし、
店の再興と佐兵衛の行方探しを胸に、
慣れぬ土地で芳と暮らしながら働き始めたが、
荒れ果てた小さな稲荷を一人で整えた姿を見込まれ、
蕎麦屋「つる家」の主人・種市に店で働かないかと誘われる。

上方との味の違いから、
当初は澪の作る料理は評判が良くなかったが、
様々な人の助けを得て新しい料理を考案し、
「つる家」を江戸で評判の店へと成長させていく。

という物語全体の発端を語るのが、
この第1作「八朔の雪」。
物事の経緯と人物関係を分かりやすく描く。

重要な点は、大阪時代の
大店の娘の野江との友情で、
野江は貧乏な職人の娘で粗末ななりの澪を差別せず接してくれる。
野江は、澪と同様、水害で天涯孤独の身になるが、
その後、吉原で幻の花魁と呼ばれるあさひ太夫になる。
澪はあさひ太夫が水害で行方不明になった幼なじみ、
野江であることを知り、
自分の料理で評判を取り、
その売り上げであさひ太夫を身請けするという、
とてつもない夢を抱くようになる。

というのは、第2作以降の展開。

澪を巡る人物として、芳の他に
「つる家」の主人種市
適切な助言をくれる正体不明の浪人小松原
澪に恋心を寄せ、見守ってくれる医師の源斉
あさひ太夫の店の板前の又次
同じ長屋の大工の伊三次
その妻のおりょうなどが関わり、
どの人物も人情味豊かで、
その内面と共に、生き生きと物語を彩る。

8歳の時、高名な易者水原東西に、
「苦労の多い人生だが、その苦労に耐えて精進すれば、
必ず青空が拝める“雲外蒼天(うんがいそうてん)”の運命にある」と予言される。
野江は天下取りの“旭日昇天”の相と言われるが、
野江は、私は“雲外蒼天”の方がいい、と言う。

澪の容貌は、丸顔で、眉は下がり気味、
鈴のような眼、小さな丸い鼻は上向き。
緊迫感のない顔をしており、
芳からはよく「叱り甲斐がない」と言われるが、
料理のこととなると感情を抑えられず、表情に出てしまう。
そういう意味では、きれい過ぎる北川景子や
勝気そうな松本穂香よりも、
黒木華が一番適役と言えよう。

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4篇の短編が収録されているが、
いずれも澪が作る創作料理が要となっている。
ぴりから鰹田麩(でんぶ)、
ひんやり心太(ところてん)、
とろとろ茶碗蒸し、
ほっこり酒粕汁などの他に
鰹飯などが紹介される。

↓は別冊の「みをつくし献立帖」

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小説の中に出て来る料理のレシピと
「つる家」の間取り、著者のエッセイ、
澪と野江の子供時代の短編「貝寄風」などが収録されている。

なお、主人公の名前の澪は「澪標(みおつくし)」から来ており、
澪標とは、澪(船の通行に適する水路)に杭を並べて立て、
船が往来するときの目印にするもの。

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河口では、土砂の堆積により浅くて船の航行が不可能な場所が多く
座礁の危険性があるため、
澪標は、比較的水深が深く航行可能な場所である
澪との境界に並べて設置され、航路を示した。

和歌では「身を尽くし」にかけて用いることが多い。




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