『放送作家の時間』  書籍関係

[書籍紹介]

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著者の大倉徹也氏は、
放送作家という言葉がなかった頃からの放送作家で、
1956年、永六輔の誘いを受けて活動を始め、
「夢であいましょう」「8時だョ!全員集合」
「小沢昭一の小沢昭一的こころ」など、
数多くの芸能関係のテレビ・ ラジオ番組を手がけた。

なにしろ、テレビが白黒だった時代、
かつては劇作家や小説家たちの
片手間仕事ぐらいにしか思われていなかった
放送作家の仕事に精神を吹き込んだ人。
中でも、NHKの「ビッグショー」は、大倉氏の功績で、
大倉氏は台本を書く前に、
有名無名に関係なく必ず出演者と会い、
綿密な取材を行い、出演者から本音を引き出した。

NHK「この人…(ゲストの名前)ショー」の第1回では
作家の松本清張を出演させた。
ベストセラー作家が出演したという実績から、
その後何人もの小説家が出演するようになって、
テレビ番組の可能性を広げた。

目次は↓のとおり。

○オープニング
○六・八・九の話
   永六輔さんと私
   中村八大さんと私
   坂本九と私
○グループの人たちの話
  「見上げてごらん夜の星を」と私
  「8時だヨ!全員集合」と私
  「ステージ101」と私
○テレビと女優の話
   黒柳徹子と私
   杉村春子と私
   二人の高峰さんと私
○アイドルたちの話
  「歌え!ヤンヤン!!」と私
   キャンディーズと私
   中三トリオと私
○歌う映画俳優の話
   加山雄三と私
   石原裕次郎と私
   小林旭・鶴田浩二と私
   勝新太郎と私
○ドキュメンタリーの話
   夫婦船と私
   ナガサキと私
   入江侍従長と私
○無念残念な話
  「サザエさん」と私
   歌川広重と私
  「スーパースター8★逃げろ!」と私
○視聴率・聴取率と関係ない話
  「民放ラジオ30周年記念特別番組」と私
  「NHKニューイヤーオペラコンサート」と私
   初代・林家三平と私
○「芸能人」ではない人たちの話
   松本清張氏と私
   阿久悠氏と私
   船村徹氏と私
○特に記しておきたい三人の女性歌手の話
   雪村いづみと私
   美空ひばりと私
   都はるみと私
○影響を受けた俳優の話
   小沢昭一と私
   森光子と私
   森繁久彌と私
○「放送の休日」の話
  「わが心の愛唱歌大全集」と私
○エンディング            

                     
出来る限り当時の印刷台本にあたり、
正確さを期する。
しかし、散逸したものも多く、
その場合は、記憶を辿って書く。
興味深い話も沢山ある。

たとえば、昭和32年(1957)年、
大阪のデパート、そごうが東京に進出して来て、
番組スポンサーになり、
タイトルを「有楽町で逢いましょう」とし、
永六輔作詞で主題歌も作った。
翌年になって、フランク永井の同名の別の歌がヒット。
その頃には番組は消えていた、という話。

永六輔の名を世間に広めたのは、「黒い花びら」のヒット。
夏木陽介主演の映画「青春を賭けろ」の挿入歌。
10曲ほどあるうちの一つだった。
歌手を演じた夏木の吹き替えを水原弘が歌った。
映画はヒットしなかったが、
主題歌だけがヒットして、
日本レコード大賞第1回の受賞作となった。

当時、朝のラジオ番組は5分刻みで、
出勤前のサラリーマンやOLが聴いていた。
(これは、私も記憶がある。)
その中の一つに「八大朝の歌」があり、
(八大とは作曲者の中村八大のこと)
今も残してある印刷台本によれば、
次のような歌手がゲストとして名を連ねている。
克美しげる、坂本九、和泉雅子、雪村いずみ、いしだあゆみ、
梓みちよ、九重佑美子、ダークダックス、芦野宏、竹越ひろ子、
園まり、古賀さと子、尾藤イサオ、朝丘雪路、日野てる子、
いずみたく、水原弘、デュークエイセス
今は忘れられている名前も多いが、
私と同世代の人は、懐かしさを感じるだろう。

ミュージカル「見上げてごらん夜の星を」は、
坂本九初演ではなく、
伊藤素道(もとみち)とリリオ・リズム・エアーズという
グループによって初演された。
坂本九が「上を向いて歩こう」をヒットさせた2年後、
九主演で再演。
「見上げてごらん夜の星を」のサビである
「手をつなごう ボクと 追いかけよう 夢を
 二人なら 苦しくなんかないさ」
という部分は、リリオ時代にはなく、
再演時に九と九重佑美子がデュエットするために
書き加えられたもの。

中三トリオの出演を前に取材した時のことも興味深い。

共通しているのは、
私の聞こうとしている狙いがわかると、
こちらが余計なことを言わなくても、
自ら自分を語ってくれたことだ。
その感受性のよさも彼女たちを
芸能界で成功させた要因の一つだろう。
百恵チャンは、実に冷静に、
自分から見た自分の歴史を語ってくれた。
淳子チャンは、意外にもリクツ屋サンだった。
だからのちに彼女が
ある宗教の信者になったという噂を聞いた時も、
私なりに納得したものだ。


石原裕次郎が泣いた話、というのも初めて聞く話。
石原プロを設立しようとはした時のこと。
その資金を銀行から借りようとして断られた。
その日帰ってきてから
夫人の北原三枝の前で話しながら、泣いたという。
裕次郎の初めて見た、演技でない夫の涙。
その話を番組の中で北原三枝の録音音声で流した。
しかし、裕次郎は期待したほどの反応は見せてくれなかった。
そりゃそうだ。
泣いた話など、裕次郎が認めるわけがない。

特に記しておきたい歌手三人として、
雪村いずみ、美空ひばり、都はるみ
影響を受けた俳優三人として、
小沢昭一、森光子、森繁久彌を挙げている。

筆者の大倉氏は、
この本を執筆中の2019年2月4日に永眠。86歳。
遺族と編集部が協議の上、編集作業にあたったという。
(発刊は2019年9月25日)
テレビと日本の芸能を知る上で、
貴重な書籍である。




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