小説『マジカルグランマ』  書籍関係

[書籍紹介]

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75歳になろうとする浜田正子は元女優。
映画監督の浜田壮太郎と結婚して引退し、専業主婦に。
ゴシック様式の広い洋館に住んでいるが、
夫の壮太郎は離れで暮らしており、
約4年間、口を利いていない。
夫の収入をあてにせずに生きていけるように、
シニア俳優の派遣事務所に登録したが、
仕事はほとんどない。
古くから縁のある80代の先輩女優・北条紀子に、
「白髪にしたら」という助言を得て実行し、
携帯電話のコーマシャルのオーディションを受けると、合格。
若い俳優と共演したCMで大ブレイクし、
「日本のおばあちゃん」と呼ばれるようになる。
事務所の待遇も良くなり、ドラマへの出演も舞い込む。

しかし、夫が突然孤独死し、
別居していたことがばれ、
夫の死に気づかなかったことを追究されると、
カメラの前でした発言が世間の顰蹙を買う。
CMのイメージを壊すものとなり、
CMも打ち切られ、違約金を取られ、
事務所も解雇される。

夫の死後、2千万円もの借金があることが分かり、
自分のものとなった洋館を売って凌ごうとするが、
1千万円の解体費用がかかるという。
壮太郎のファンで転がり込んで来た田村杏奈の助けを借りて、
「メルカリ」で家の不用品を販売。
更に、「ホーンテッドマンション」から触発されて、
自宅の洋館を
お化け屋敷のテーマパークにするというアイデアを考えつき・・・

この本筋に、
正子と壮太郎のひとり息子・浜田孝宏とそのパートナー、
浜田家の近所に住む間島明美と真美の母子、
壮太郎の幼馴染みで近所のごみ屋敷に住む野口、
正子の親友で行方知れずの渡辺陽子らがからむ。

柚木麻子が旭新聞に連載したものを単行本化。

「マジカルグランマ」というのは、
ステレオタイプのおばあちゃん像で、
実態はかけ離れた都合のいい老婆像のこと。
「マジカルニグロ」という言葉があり、
白人がつくるフィクションの中で、
黒人が白人にとって都合の良い存在として
描かれることを指す言葉だという。
「マジカルジャパニーズ」という言葉もあるらしい。

正子もCMでマジカルグランマ、
つまり周囲が想像する
理想のおばあちゃん像を演じていたわけだが、
夫の死で仮面夫婦がばれて世間の非難を受けたことで、
その理想のおばあちゃん像を演じていたことに気づき、
自分らしい自由な生き方を選ぶようになる。

まあ、面白く読めるが、
ところどころ現実離れしてしまうのが難。
あの程度の仕掛けのお化け屋敷では、
目の肥えた若者たちをつかむことはできないと思うが・・・。

柚木麻子の他の本の感想は、↓のとおり。
やはり、あまり相性は良くないようだ。

「伊藤くんAtoE」

「本屋さんのダイアナ」

「ナイルパーチの女子会」



先の直木賞候補で、落選。
選考委員の評は、↓のとおり。

高村薫
この作者の持ち味である過激な物語が、
ハリウッド風コメディのノリの良さにうまく変換され、
読者を十分楽しませるが、
残念ながら読後感は薄い。
肩の力を抜きすぎである。

桐野夏生
マジカルキャラクターとしての「老婆」を
否定してみせる「マジカルグランマ」は、
いかにも柚木麻子さんらしい切り口であると、好意的に読んだ。
借金返済のために、自宅をホーンテッドマンションにしようという
思い付きは愉快だが、
明るく現実的なだけでは、
まだまだマジカル度からは抜け切れていないように思われる。

宮城谷昌光
小説全体が明るい色調を保っているので、
深刻な場面でも陰翳がとぼしい。
それが作者自身の人生観の反映であろうし、
それをよしとする読者もすくなくあるまいが、
私としては不満であった。

林真理子
(「平場の月」と共に)二作を推そうと選考会にのぞんだ。
この作者のいいところが全開となった。
ストーリィーテラーとしての才能、
ことにハリウッドを巻き込んでの「大風呂敷」には感嘆した。

浅田次郎
実に面白く読んだ。
たとえ文学賞の候補にならなくても、
書店で買い求めて読む作家のひとりである。
このすばらしい才能を、
どのように制御し、かたちにするか。


北方謙三
悲惨なものもプラスに展開していくという、
小説的快感とも呼ぶべきものがあった。
ただ、これが痛快なものにまで高まることはなく、
どこかで細部にこだわり、無駄なてらいが出たような気がした。

宮部みゆき
柚木さんは本当にサービス精神に富んでいて、
次から次へと面白いアイデアを繰り出してくる作家です。
この作品では、作中に個性的な人物や新鮮なアイデアを盛り込みすぎていて、
結果的に主人公の正子さん=マジカルグランマが
あんまり目立たなくなってしまいました。

東野圭吾
柚木さんのこれまでの候補作と比べても、
格段に面白く、出来がよかった。
推せなかったのは、社会現象や
群集心理のシミュレーションに同意できなかったからだ。
リアリティ云々を吹っ飛ばす馬力がもう少しあればと思う。





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