小説『おまえの罪を自白しろ』  書籍関係

[書籍紹介] 

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衆議院議員・宇田清治郎の3歳の孫娘、
柚葉が誘拐された。
孫の写真と脅迫内容が送られて来たのは、
清治郎のウェブサイト。
匿名化ソフトを使い、
いろいろな国を経由しての発信で、
発信元を確定することは不可能だという。
しかも、要求は金銭ではなく、
記者会見を開いて、
国民の前に、自分の罪を全て告白せよ
というのだ。

宇田家は政治家一族で、
清治郎は建設省官僚を経て衆議院議員の6期目。
長男は県議の3期目。
娘婿は市会議員の2期目。
次男は清治郎の秘書を務めている。

しかも、清治郎は時の人で、
上荒川大橋の場所を
総理の意向を受けて変更させ、
総理の友人の土地が高く売れるように工作したのではないかとの疑惑で
連日マスコミに叩かれ、
野党からは証人喚問を要求されていた。

その立場の人間に、
記者会見を通じて自分の罪を告白せよ、
との要求だ。

誘拐事件だから、当然報道協定の対象となり、
また、犯人の記者会見の要求も伏せられた。

そして、政権内部での暗闘が始まる。

清治郎の告白内容次第では、
総理の首が飛ぶかもしれない。
そればかりではなく、
告白に際して、免責を与える
法務大臣の指揮権発動が宇田から要求された。

記者会見は翌日の午後5時。
刻々とその時間は迫ってくる。

というわけで、宇田家の内部での葛藤、
政権内部での確執と共に、
埼玉県警の捜査も描かれるが、
重点は政権内部の権謀術数だ。

その根底には、
公共事業を巡る政治家の暗躍がある。
政治家は地元に恩恵をもたらすための行動をとる。
そして、公共事業の受注を受けたい各企業は、
そこに群がってくる。
日本の政治の暗部といえるものだが、
それに対しても克明に描写する。

要求を飲まなければ、孫娘の命はない。
その状況の中で、
命の大切さと保身と政治的生命が交錯する。

真の主人公が次男で秘書の晄司だということが、
最後に明らかになる。
晄司の推理で、犯人は逮捕されるのだが、
全然本題と別な話だったので、
意外な気がする。

家業としての議員についての晄司の見解。

そこまで代議士の議席を守っていくことに
意味があるのだろうか。
父は国交族として多くの種を、
今日まで地元に蒔いてきた。
せっかくの実りを、
縁もゆかりもない者に奪われたのでは、
祖父の代からの苦労が水の泡となる。
その気持ちはわかるが、
地元にもたらされる利益に違いは、
そう出ないだろう。
父が動かずとも、
別の与党議員が公共事業の推進に奔走するはずだから。
一族で議席を死守する、
その先に何が待っているのか。
身内から大臣が出れば、
多少は誇らしく感じるだろう。
地元も喜び、宇田の名声はさらに高まる。
だが、それだけのことではないか。
新たな大臣は組閣のたびに次々と誕生する。
わずかな期間のみ、栄誉を感じ、
プライドが少し満たされるにすぎなかった。


全くそのとおり。

目新しいのは、
政治家の孫の誘拐、という対象と、
匿名化ソフトを使い、
IPアドレスを分からなくしての
ネットでの脅迫状の送付と、
要求が金銭ではなく、
記者会見での罪の告白ということ。

誘拐ビジネスが、わりに合わないと言われるのは、
金銭授受の際、犯人が身をさらさなければならない点だが、
金銭の要望がなければ、その危険もないわけだ。
メールで脅迫文を送れば、
あとは高見の見物という、
新しい犯罪だ。

さすがベテラン真保裕一のもので、
緊迫感もあり、なかなか面白かった。




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