映画『魂のゆくえ』  映画関係

[映画紹介]

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ニューヨーク州北部にあるルター派教会で牧師をしているトラー。
教会は歴史はあるものの、
信徒は少なく、礼拝も活気がない。
トラーは従軍牧師に従事していたことがあり、
息子のジョセフの戦死をきっかけに活動から退いていた。
ジョセフに入隊を勧めたのはトラー自身であり、
トラーの苦悶と自責の念は極めて強かった。

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そのトラーが信徒の女性メアリーから相談を受ける。
メアリーの夫のマイケルが
妊娠中のメアリーの出産を止めようとしているという。
会ってみると、マイケルは極端な環境保護論者であり、
「この世界は気候変動によって過酷なものになってしまい、
もう元には戻れない。
そんな世界に子供を産み落としたくない」というのだ。
トラーは、心の中では彼の考えに賛同しつつも、
出産を受け入れるように説得する。
短いマイケルとの話し合いで、
影響を受けたトラーは
気候変動こそキリスト教徒が直視すべき問題ではないかと
思うようになっていた。

メアリーは着用タイプの自爆用爆弾を車庫で発見し、
その話を聞いたトラーはマイケルに子細を尋ねることにした。
が、待ち合わせ場所の公園に向かったトラーは
そこでマイケルの自殺遺体を発見した。
マイケルの遺書に従い、彼の遺骨は
ゴミの処分場に散骨されることとなった。

その頃、教会では設立250周年を祝う式典の準備が進んでおり、
式典には市長と知事や地元の名士たちが多数参列する予定だった。
その中には教会の大口支援者であるエドワード・バルクの名前もあったが、
バルクは環境汚染の元凶である大企業を経営しており、
マイケルが自爆テロで狙っていたのがその企業だったのだ。
胃がんであると診断されたトラーは、
マイケルが果たせなかったある行動を取ろうとするが・・・

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「タクシードライバー」(1976)の脚本を担当し、
「レイジング・ブル」(1980)の脚本も書いて
高い評価を得たポール・シュレイダーの脚本・監督の作品。
シュレイダーは本作が自分の人生の集大成的な作品であり、
50年もの長きにわたって構想し続けてきた企画だと言っている。
先のアカデミー賞のオリジナル脚本賞にノミネートされた。

極めて厳格なカルヴィン主義者の家庭に生まれ育ったシュレイダーは、
生まれてからの長い間、映画を観ることを禁止されていたという。
その成長環境から、教会対社会の問題設定は理解できる。
なにしろ、キリストの十字架と背信を扱った「最後の誘惑」 (1988) の脚本家なのだ。

キリスト教福音派の裏の現実、
元従軍牧師の自責の念と葛藤、
無意味な戦争での息子の死、
環境破壊と人類の未来、
信仰と揺らぎ、
などを提起する。

随所に出世作「タクシー・ドライバー」を想起させる。
助けたい女性(「タクシードライバー」ではジョディ・フォスター)がおり、
主人公は病気であり、(「タクシードライバー」では不眠症、本作では胃癌)
国家への貢献と蹉跌があり、(「タクシードライバー」ではベトナム戦争後遺症、本作では息子の戦死と離婚)
巨悪がある。(「タクシードライバー」では政治家、本作では大企業)

ただ、国家と個人の良心ならいいものの、
対象を教会に設定するのはいかがなものか。
環境汚染に教会は責任はないし、
その救済を教会に求めるのは、そもそも筋違いだ。
宗教と政治を混同するのは間違っている。
そもそも守備範囲が違う。
まして、最後の行動は、
キリスト教の根本原理から外れており、
イスラムの行動原理との混同も見られる。
記念式典にメアリーが出席することで
思い止まるトラーの行動も、
ではメアリー以外の無垢の人々を被害者にするのは構わないのか、
と問えば、牧師以前に人間としての存在を問われるだろう。
最後の展開も底が浅く、
観客が突然放り出される感はぬぐえない。
元々正解のないテーマに取り組んだとしても、
これはないだろう。

演出は古くさい
テンポもおそろしく悪い。
おそらく、今の映画テクニックの進歩には関心がないのだろう。
そもそも、日記という形式で物語を始めながら、
何の効果も生んでいないのは、
物語を暗く、陰鬱にしているだけだ。

ただ、トラーを演ずるイーサン・ホークと、

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メアリーを演ずるアマンダ・サイフリッド

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の演技は良かった。

5段階評価の「3」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/FJyF9iTQ3jI

新宿シネマート他で上映中。

タグ: 映画



2019/5/7  8:34

投稿者:さすらい日乗

ポール・シュレイダーは,高倉健主演の『ザ・ヤクザ』の脚本も書いています。これは、高倉と姉の岸恵子が実はできていたという欧米人のアジア人への近親相姦的視点が嫌です。彼は、京都にいてヤクザ映画のファンだったそうです
彼は三島由紀夫の『MISHIMA』も監督していますが、日本では公開されず、私はビデオで見ましたが、そう悪い映画ではありませんでした。

http://sasurai.biz/

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