小説『キネマの神様』  映画関係

[書籍紹介]

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原田マハによる、
映画を愛する人々の物語。

再開発企業に勤めていた39歳の円山歩は、
巨大再開発プロジェクトに関わり、
シネマコンプレックスの担当をしていたが、
イギリスの大手シネコン業者との提携が職権乱用との誹りを受け、
会社を退職する。
再就職の当てがないまま、
父母の従事するマンションの管理人室を手伝う毎日。
80歳の父はギャンブル依存症の上、借金漬けで、
最近心臓病の手術を受け、入院している。
歩は、父と母に、会社をやめたことを告げることができない。

退院した父からギゃンブルをやめさせるため、
預金通帳も取り上げてしまった。
そんな時、
無類の映画好きの父親の書いた昔の映画日記を見つけ、
その一ページに自分の感想を書いた紙をはさんでおく。
ネットカフェで父に映画館検索の方法を教えると共に、
書き込みの仕方も教えてやる。

数日後、歩は一人の女性から電話を受ける。
映画雑誌「映友」の編集長・高峰好子からで、
歩に、「うちの雑誌で、書いてみませんか」と持ちかける。
実は、父が映友のホームページのブログに、
歩が映画日記にはさんだ文章を投稿してしまっていたのだ。
特に、次の文章が高峰編集長の気に入ったのだという。

もちろん、名画はどこで観たって名画だ。
けれど夏の夜空に咲く花火を、
家の狭いベランダからではなく、
川の匂いと夜風を感じる川辺で見上げれば
ひときわ美しいように、
映画館で観れば、
それはいっそう胸に沁みる。


こうして、歩はあこがれの映友社に就職する。
と共に、思わぬ経緯で、
父が書く映画感想文が
「キネマの神様」という表題で、
映友社のホームページに掲載されることになる。
ギャンブルから隔絶された父にとって、
映画感想文は生き甲斐のようになり、
その英語版が掲載されると、
「ローズバッド」という人物から
英語でコメントが寄せられ、
父とのやり取りが評判を呼び、アクセス数が増える。
やがて、ローズバッドの意外な正体が分かると共に、
父とローズバッドの間に友情が芽生え・・・

これに名画座「テアトル銀幕」の支配人の寺林や
歩の元部下で、結婚してアメリカ在住の清音や、
高峰編集長のひきこもりの長男などがからむ。

篇中、描かれるのは、映画愛である。

ラストシーンを見ながら、
「ああ、おれはほんとに映画が好きだ。
映画が好きで、映画を見続ける人生でよかった」
と涙が止まらなかった。

客席を立ち上がった人たちの顔は、
どれもが幸福感に満ち溢れていた。
内側から輝いているような、
まぶしさがあった。
観る人を幸福にする映画。
そんな映画に、本日、出会った。
劇場を出ると、
銀座の冷たい夜風が
濡れていた頬に気持ちよかった。
感謝しなくちゃ、と小生思った。
こんな映画が観られる世の中で、
万事平和な世の中で、ほんとうによかった。
借金取りに追いかけられようと、
女房娘に疎まれようと、
映画を好きな人生で、
つくづく小生、幸福者である。


といった描写が頻繁に出る。

作者が映画を愛しているのは分かるが、
こうも真っ正面から映画愛を語られると、
くすぐったく感じるのは、私がひねくれているせいか。

その上、話はあまりに都合良く進む。
登場人物も善人ばかりで、
「映画を好きな人は全員良い人ばかり」
といわんばかりで、少々鼻白む。
映画好きな人の中にも、悪人はいるだろうに。
また、映画も全てが名作ではなく、
クソ映画、悪映画も沢山あるだろうに。
そもそも、歩の父がそんなに映画好きなら、
ギャンブルにはまる時間はなかったのではないか。

ローズバッドと父の友情はなかなかいいし、
終盤、ちょっと涙腺がゆるむが、
それもあまりに予定調和。

原田マハには、こんな直球ではなく、
変化球を期待するのは、
望み過ぎだろうか。

「映友」はおそらく「映画の友」、
高峰好子は、岩波ホールの高野悦子、
「テアトル銀幕」は、飯田橋ギンレイホールがモデルと考えられる。

本の中には、以下のような多数の映画が登場する。

ニュー・シネマ・パラダイス
フィールド・オブ・ドリームス
硫黄島からの手紙
眺めのいい部屋
アメリカン・ビューティー
シンドラーのリスト
I am Sam アイ・アム・サム
フォレスト・ガンプ 一期一会
プライベート・ライアン
タイタニック
アメリ
戦場のピアニスト
イングリッシュ・ペイシェント
Shall Weダンス?
七人の侍
インディ・ジョーンズ最後の聖戦
ターミナル
ビッグ・フィッシュ
ゴーストニューヨークの幻
天国から来たチャンピオン
チャップリンの殺人狂時代
ワーキング・ガール
カッコーの巣の上で
セックス・アンド・ザ・シティ
テルマ&ルイーズ
自転車泥棒
或る夜の出来事
カサブランカ
シャイニング
グッドナイト&グッドラック
ブロークバック・マウンテン
ローマの休日
あなたがいたら少女リンダ
モーリス
予告された殺人の記録
花嫁のパパ
アバウト・シュミット
サスペリア
時をかける少女
真昼の決闘
キング・コング
ゴジラ
大怪獣ガメラ
ミクロの決死圏
第三の男
ALWAYS 三丁目の夕日
シェーン
荒野の七人
オール・アバウト・マイ・マザー
トーク・トゥ・ハー
捜索者
黄泉がえり
リトル・ミス・サンシャイン
アダムス・ファミリー
ロビンフッドの冒険


なお、昔は洋画は
ロードショウ → 2本立てのチェーン(一般公開)→ 名画座、
邦画は
東宝、松竹、東映、日活、大映などの系列館の2本立て → 名画座
という順番があった。
今は、旧作はDVDやBD、WOWOWやネット配信で観るものとなり、
名画座は次々と姿を消している。
今都内で残っている名画座は、

早稲田松竹(1951年開館 153席)

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飯田橋ギンレイホール(1974年開館 206席)

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目黒シネマ(1975年開館 100席)

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キネカ大森(1984年 134席、68席、39席)

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新文芸座(2000年開館 前身の人生座は1948年開館 266席)

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くらいであろうか。

新文芸座のホームページを見たら、
「2本立て」とは?
という項目があり、
「1枚のチケットで2本の映画をご覧いただけます
入れ替えがありませんので、同じお席で続けてご覧いただけます
最終回1本のみご覧の場合は「ラスト1本」料金でご覧いただけます」
という説明があり、おかしかった。
今の若い人は1本立興行に慣れて、
2本立てというのはなじみがないようだ。


タグ: 映画



2019/5/10  9:10

投稿者:さすらい日乗

東京の名画座としては、神保町シアター、渋谷のシネマヴェーラ、阿佐ヶ谷のラピュタなど結構あります。
横浜の横浜シネマリンも名画群を上映することがあります。
有楽町と新宿の角川も、旧大映作品等を特集上映しています。
新文芸坐は、客質に少々問題があり、私はなるべく行かないようにしています。

http://sasurai.biz/

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