小説『盗まれた顔』  書籍関係

[書籍紹介]

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羽田圭介の警察小説。
2012年の作品だから、
「スクラップ・アンド・ビルド」(2015)で芥川賞を取るより前の作品。

「見当たり捜査」という
警察の中でも特殊な捜査を扱っている。

見当たり捜査とは、
手配犯の顔を覚え、
繁華街に立って目の前を通りすぎる人々の顔の中から
記憶の中の犯人を見つけて逮捕する、
という気の遠くなるような捜査方法だ。

作者の創作かと思ったら、
実際にそういう部署があり、
報道番組でも紹介されていた。
羽田は、2010年に「見当たり捜査員」の特集を、
偶然点けたテレビのニュース番組で見たことが
本作執筆のきっかけになったという。

NHKでも2017年6月、
ドキュメンタリーが放送されていた。

大阪府警が昭和53年に全国で初めて導入し、
これまでに全国最多の4000人以上を検挙

本庁の見当たり捜査員の所属は、
警視庁刑事部捜査共助課
4班に分かれ、1班3人体制で
捜査を行う場所は指示されることはなく、
都内全域のどこで捜査しても構わない。
ある時は渋谷、ある時は新宿、ある時は池袋、
秋葉原、上野、東京ドーム前・・・と町に立ち、
通行人の顔と頭の中の写真帳と照合する。

一人が手配班を見つけると連絡を取り合い、
手元の「顔手帳」という写真集と照らし合わせて人物を特定し、
他の二人が「当たり」を確認すると、
声かけ係、拘束係、逃走経路の遮断と役割分担して捕獲、
交番またはパトカーに引き渡す。

決まりはないが1カ月に1人の逮捕が目安で、
連続無逮捕期間が1カ月を過ぎるとプレッシャーがかかり、
2カ月、3カ月と無逮捕期間が続くと、
過酷な精神状態になり、
誤認逮捕の恐れが出て来る。

手配犯の顔を見つけられない見当たり捜査員は、
血税でまかなわれる組織の運営資金を食いつぶす
無能な散歩者でしかない。


手配犯との遭遇率は0.00006%以下
誠に大変な仕事だが、
実際にこの捜査で手配犯が逮捕されている実績があるのだからすごい。

特定の一人を街中で探すのと、
どこにいるかもわからぬ500人を
あてもなく探すのは、
似ているようでいてまったく異なる。
見当たりは、絶望的なほど低い可能性、
自らの行為の不毛性を見ないようにすることで、
なんとか続けられる捜査だ。
ハズレ券の海の中で泳いでいるようなものである。


手配犯は整形手術を受けることが多いが、
顔全体のパーツの配置、目玉、耳だけは、
加齢による経年変化が少なく、
人工的に変えようにも変えられないという。

小説の主人公は班長の一人、
白戸崇正(しらとたかまさ)。39歳。警部補。
常時500人分の顔手帳を持ち歩いているが
3000人分を超える顔を記憶している。
捜査共助課は普通3年といわれるが、
もう5年目になっている。
部下は谷遼平(たにりょうへい)と安藤香苗(あんどうかなえ)26歳。
安藤は優秀で素晴らしい相貌識別能力を持ち、
研修期間中の2週間で、
70人の顔を覚え手配犯2人を発見して名を上げた。
一方、谷は無逮捕期間が長く、
あやうく誤認逮捕をしてしまいそうなほど追い詰められている。

白戸は安藤と谷と共に、
群衆の中から中国人の手配犯人、王龍李を見つけ逮捕する。
白戸は谷とともに王を大阪府警に搬送するが、
大阪駅で王が殺害されてしまう。
そんな中、白戸は、決して見るはずのない人物を
目撃したような気がする。
4年前に死んだはずの先輩捜査員・須波通(すなみとおる)だ。
須波は優秀な見当たり捜査員で、
白戸が慕っていた人物だった。
須波には在日中国人二世の恋人がおり、
彼女が中国マフィアに殺されたことで、
復讐のために中国マフィアの構成員を次々に仕留めていき、
最後は中国マフィアの報復により命を落とした男だった。
白戸は見間違いだと思おうとしたが、
須波にまつわる噂を耳にする。
白戸は同期の組織犯罪対策第一課所属の小池に頼んで
須波に関する情報を集めるが、
中国マフィアや公安警察が動き出し、
白戸は命を狙われることになる・・・

これと並行して、
白戸の私生活、出会い系サイトで知り合った千春33歳との
4年にわたる同棲の中、
千春が最近何か隠し事をしていると感じている、
という話がからむが、
生煮えで、本筋には関わらない余計なエピソード。
出会い系サイトで「顔で選んだ」という要素が
何かに関わると面白かったのだが。

冒頭、新宿で逮捕した塚本という
外資系精密機器メーカー社員が関わって来て、
白戸がある人物を追尾しつつ、
追跡を順に振り切って、
ある場所に到達するあたりは、
サスペンス感一杯。
白戸がある組織から追跡を受ける立場で、
「見る側」である自分が
「見られる側」になっていたという皮肉。

また、白戸が「あの顔には見覚えがある」と追跡した挙げ句、
声をかけてみると、
数年前に見当たり捜査で逮捕した犯人で、
既に刑期を終えて出て来た男だったりする。
白戸には、「一度覚えた顔を忘れない」という欠点があったのだ。

面白い題材だが、
顔の記憶というアナログ手法と、
顔認証システムというデジタルなものとの確執、
町じゅうに張りめぐらされた監視カメラなど、
もう一つ踏み込んだ世界が描けなかったか、の不満は残る。


WOWOWで連続ドラマ化され、
1月5日から毎週土曜放送。

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連続5回で2月2日が最終回。
白戸を演ずるのは、玉木宏

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/6buKjHWSbKk




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