映画『判決、ふたつの希望』  映画関係

[映画紹介]

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珍しいレバノンの映画

レバノンは、ここ↓。

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西に地中海、南はイスラエルと接し、
その他はシリアに囲まれている。
面積1万400平方キロ、
人口426万人の小さな国。
国民の約40%がキリスト教徒で、
約55%がイスラム教の信者。

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レバノンの国旗のデザインに用いられているレバノン杉は、
この国の象徴とも言える存在で、
旧約聖書にもその名が出て来る。

レバノンの首都ベイルートが舞台。
貧民窟の改装にやって来た
パレスチナ難民のヤーセル・サラーメは、
ベランダからの水漏れを巡って、
キリスト教徒のレバノン人トニー・ハンナと口論し、
「クズ野郎」とののしってしまう。
謝罪を求められて、一旦はトニーの自動車修理工場を訪れたが、
トニーがパレスチナ難民排斥の演説を
テレビで垂れ流しているのを見て躊躇してしまう。
そして、トニーが
「シャロンに抹殺されていれば」と罵倒したために、
トニーを殴り倒してしまう。

パレスチナ難民・・・
今のイスラエルがある土地は、
ペリシテ人の土地で、
パレスチナという言葉はペリシテという言葉がなまったもの。
第2次世界大戦後、
帰還運動でユダヤ人が入植して来、
やがてイスラエルを建国し、
大量虐殺も起こったことから、
そこに住んでいた人々は周辺国に脱出せざるをえなくなった。
これがパレスチナ難民で、
受けれた国々では、土地や雇用を奪われ、
経済的バランスが崩れた。
しかし、国際世論はパレスチナ難民の味方であったので、
先住市民は割り切れない思いを持っていた。
トニーは、難民排斥を主張するレバノン軍団の党員であり、
ヤーセルに対する異常な敵愾心には、その背景がある。
なお、ヤーセルの暴力の原因となった
「シャロンに抹殺されていればな」
のシャロンとは、
イスラエルの国防相(後に首相)のアリエル・シャロンのことで、
パレスチナ難民キャンプで大虐殺をしたことで知られる。
つまり、この発言は、
日本人に対して
「日本人なんて、みんな原爆で死んだらよかった」
と言うのと同じで、
ヤーセルはこの発言を法廷で口にするのもはばかわれたのである。

ヤーセルは逮捕され、裁判になるが、
無罪になり、トニーは控訴。
ここから弁護士が絡んで法廷戦術となり、
ヤーセルやトニーの過去が暴かれたりする。
レバノンの歴史上の汚点である内戦にまで話が言及する。

レバノン内戦・・・
PLO(パレスチナ解放機構)の流入によって
微妙な宗教宗派間のバランスが崩れ、
1975〜76年にかけて内戦が発生、
足かけ17年に及んだ。
隣国シリアの軍が平和維持軍として進駐したが、
後にイスラエル軍が侵攻して混乱に拍車をかけ、
各宗教宗派の武装勢力が群雄割拠する乱世となり、
国土は荒廃した。

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いずれにせよ、
個人の口喧嘩が
マスコミの注目を浴び、
大きな政治問題に発展し、
国中を揺るがす騒動となり、
ついには大統領が仲介役に登場したりするのは、
このようなレバノンの歴史的問題が大きく絡んでいるからだ。

映画はその過程をじっくりと両者の側から描いていく。
結論を急がず、見事な人間ドラマとして見せる。
緊迫感がずっと続き、素晴らしい脚本と演出、
それに役者の演技で惹きつけられる。
特に控訴審になってから、
弁護士の法廷戦術で、
当事者の二人が取り残されていく過程が
政治や裁判の現実離れを描写して秀逸。

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映画は判決をもって終るが、
それ以前に二人の間では心の交流が始まっており、
どんな国家的問題も
法律や政治ではなく、
結局は個人レベルの和解でしか解決しようがないことを知らされる。
判決の後の二人の表情がそれを物語っている。

あるささいな争いごとを契機に、
国家的問題、歴史的問題にまで拡大して、
その解決方法を示唆する、
なかなかの手練の技である。

監督・脚本はジアド・ドゥエイリ

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自身が配管工の男性と口論になった実際の体験に着想を得たという。
共同脚本はジョエル・トゥーマ。
音楽(エリック・ヌヴー)もなかなかいい。
レバノン史上初めてアカデミー賞外国語映画賞にノミネート
第74回ベネチア国際映画祭で、
ヤーセルを演じたカメル・エル=バシャ最優秀男優賞を受賞。
トニーを演ずるアデル・カラムも好演。

原題は「侮辱」。

5段階評価の「5」

アカデミー賞外国語映画候補に外れなし。

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/saWlWVp_1vI

TOHOシネマズ日比谷シャンテで上映中。

タグ: 映画



2018/9/21  20:25

投稿者:さすらい日乗

面白そうな映画ですね。私は、アラブのポピュラー音楽が好きで、特にレバノンの女性歌手フェイルーツが大好きです。

ところで、なぜパレスチナの地は、昔から争いの場になってきたのでしょうか。
その理由は、あそこだけが砂漠ではなく、水が豊富にあるからだそうです。
大学の「英文聖書」の授業で唯一憶えていることです。
今でも日本に輸入されるレモンの多くがイスラエル産ですから。

http://sasurai.biz/

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