映画『スターリンの葬送狂騒曲』  映画関係

[映画紹介]

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スターリンと言えば、
ロシア革命の後、レーニンの後を継いで、
共産国家ソ連に20年以上君臨した独裁者である。
恐怖政治を敷き、秘密警察を組織、
政敵を次々と粛清し、
何千万の人を死に至らしめた、
歴史上の独裁者の上位3位に入るほどの人物だ。

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その最高権力者が突然死んだ時、
その取り巻きたちが右往左往し、
その後釜を巡って
権力争いをする騒動を描いたのが本作である。

2014年にフランスで
ファビアン・ニュリ作、ティエリ・ロビン画の
グラフィックノベルが出版され、
その映画化権をフランス人プロデューサーが獲得、
英国で辛口政治ドラマの作り手として実績のある
アーマンド・イアヌッチに監督を依頼した。
その関係で、フランス・イギリス合作ではあるものの、
主要な登場人物は英米の俳優でほぼ占められ、
全編英語の台詞が使われている。

冒頭、放送局の音楽会のスタジオに電話がかかってきて、
スターリンから「録音盤が欲しい」との所望。
生放送だから録音していなかったスタッフが
終了後、オーケストラに残ってもらい、
帰ってしまった観客を臨時のメンバーで補充して、
再録音するという興味津々の場面から始まる。
権力者の要望に汲々として応じる姿が悲しい。
ピアニストは反抗し、
金を積まれて演奏するが、
その録音盤に手紙を忍び込ませる。

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側近たちと深夜、宴会をしていたスターリンは、
自室に引き上げ、録音盤をかけ、
ピアニストからの暴君を批判する手紙を読んでいる時に
脳卒中の発作で倒れる。

この時、ドアの前にいた警護員が
中の異変に気付きながら、
粛清を恐れて知らんぷりをしたことで発見が遅れる。
しかも、優秀な医者は全部粛清されていて、
対応出来る医者がいなかった、というのも皮肉だ。

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実は、暗殺を恐れていたスターリンは、
同じ形の寝室を複数作り、
どの部屋を使うかを就寝直前に決めていた。
寝室は鋼鉄の箱のような構造になっており、
扉は内側から施錠すると、
外から開けるには
警備責任者が持つただ1本の鍵を用いるしかなかった。
翌朝、予定時間を過ぎてもスターリンが起きて来ないことに
警備責任者は不審を覚えたが、
眠りを妨げられたスターリンの怒りを買うことを恐れて、
午後になるまで何もしなかった。
このために発見が遅れ、容態を重篤にしたと言われている。

映画では、すぐ死んだようになっているが、
実際は昏睡状態が続き、
ほんの数分間だけ意識を取り戻すが、
4日後の1953年3月5日
スターリンは危篤に陥り死亡した。
74歳だった。

その後、
フルシチョフ中央委員会・第一書記、
ベリヤ秘密警察警備隊長、
マレンコフ補佐役、 
モロトフ外務大臣、
ミコヤン貿易大臣、
カガノーヴィッチ労働大臣、
ブルガーデン国防大臣、
ジューコフ・ソビエト軍最高司令官
らが主導権を巡って滑稽な人間ドラマを演ずる。
会議の場で互いの顔色を伺いながら、
挙手したりやめたりする姿が哀れだ。

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マレンコフは代理を務めるが、
優柔不断で頼りない。
フルシチョフは台頭するベリヤを快く思わず、
失脚させようと画策する。
そこにスターリンの娘のスヴェトラーナや息子のワシーリーが
関わって・・・

どこまでが本当でどこからが創作か不明だが、
そんなこともあるだろうな、という滑稽な人間模様だ。
ただ、言えるのは国民不在
雲の上の権力者同士の争いで、
誰も国を良くしようとか、国民に幸せをもたらそう、
などとは考えていない。

しかし、葬儀の際は、
市民たちが悲しみの表情で弔問に現れるのが
皮肉と言えば皮肉。
北朝鮮の金日成、金正日の葬儀と重なって見える。

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ロシアでは上映禁止となったが、
まだこのような作品を受け入れる度量はないのだろう。

実は、スターリンというのは、
「鋼鉄の人」を意味する筆名であり、
本名はヨシフ・ヴィッサリオノヴィッチ・ジュガシヴィリという。
グルジア(今のジョージア)出身で、
そのことをコンプレックスに持っていたという。
身長は163pしかなく、
スターリンに会ったことがある国連大使が言うには、
「スターリンの顔は醜い痘痕顔であり、
片手(左手)に麻痺がある風采のあがらない小男」
であったという。
肖像画は相当美化されており、
コンプレックスを持つ独裁者が
苛烈になる、というのは、よくある話である。

政権はマレンコフからフルシチョフに移り、
1956年、ソ連共産党第20回大会で
フルシチョフは有名なスターリン批判を行い、
スターリンは偉大な国家指導者という評価から、
恐るべき独裁者という評価へ変化した。
遺体は1961年10月31日までレーニン廟で保存されていたが、
やがて撤去、燃やされた後クレムリンの壁に埋葬された。
そのフルシチョフも1964年、
東京オリンピックのさ中に失脚し、
ブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコを経て、
ゴルバチョフの登場となる。
そしてソ連崩壊。
エリツィン、プーチン、メドヴェージェフ、
第2次プーチンと政権は移動する。
それでもロシアの体質は変わっていない。

独裁者の最後ほど哀れなものはない。
やがて北朝鮮が開放された時、
金日成、金正日も批判され、
習近平らも批判される時が来るかもしれない。
そういえば、ディズニーの映画「プーと大人になった僕」は、
中国での上映を禁止されたという。
習近平が、かげで「プーさん」と呼ばれているからだという。
まだ、中国も度量がないらしい。

日大の問題、レスリング連盟など、
「小さな独裁者たち」の問題も発覚している。
いずれも、下の者たちの幸福を考えない人たちだ。

この映画は今まで隠されていた事実を明らかにされた発見はあるが、
もう少しうまく展開できなかったものか、
という不満は残る。

5段階評価の「3.5」。

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/NxV-2far2rs

TOHOシネマズシャンテ他で上映中。

タグ: 映画



2018/9/21  22:38

投稿者:さすらい日乗

スターリンは、非合法時代はロシア共産党員2,500人分の本名、組織名、連絡方法を全部暗記していたそうです。
また、彼には言語論や文化に関する著作もあり、現在ではほとんど批判されていますが、当時はスターリン理論として崇められていたように、多彩な才能のある人だったようです。
グルジア人は性格の悪い人間が多いと言われていましたが、それもスターリンの性でしょうかね。

http://sasurai.biz/

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