連作短編集『芥川症』  書籍関係

[書籍紹介]

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「芥川」ではなく、「芥川」。

芥川龍之介の作品、というより、
題名をもじった医療関係短編集
作者の久坂部羊(くさかべ・よう)氏は、
現職の医師。
それだけに、リアルな医療現場の描写がある。

「病院の中」

題名の出典:「藪の中」
62歳で早死にした父親の治療を巡って、
内科部長、若い医師、看護師、麻酔科医長、
主任看護師、宿直事務員、病理医と
話を聞いていくと、
それぞれが違った見解を述べる。
まさに「藪の中」。
それまで、最善の治療をしてもらってたと感謝していたのが、
疑惑に転ずる。
そして・・・
関係者が一同に会して告げられる真実は、
ひねりが効いている。

「他生門」

題名の出典:「羅生門」
市民からの寄付で、アメリカで心臓移植を受けた下村人志は、
仕事が続かず、自堕落な生活をしている。
パチンコをしていたところを
寄付金を集めてくれた「救う会」のメンバーに見つかり、
生活改善の監視を受けるが・・・
臓器移植をめぐり、
政治的な力に翻弄される主人公の姿を描く。

「耳」

題名の出典:「鼻」
シュールホラー賞を受賞し、
作家になった神尾。
デビュー作がベストセラーになったのはいいが、
次の作品が続かない。
小説のヒントになるかもしれないと
編集担当者が連れていってくれたラボで、
ネズミの背中に生えている人間の耳を見た神尾は、
実は耳フェチ。
その神尾の前に、素晴らしい耳の形をした
ファンの女性の整形美人が現れる・・・

「クモの意図」

題名の出典:「蜘蛛の糸」
看護師の神田多恵は、落語が大好きで、
その日も「クモの糸」という新作落語を聞いて笑っていた。
出勤後、小さな虫を助ける行為で救われる、
という想念に取りつかれた多恵が、
病院で繰り広げる騒動を描く。

「極楽変」

題名の出典:「地獄変」
夜更けのクリニックに駆け込んで来た造形作家ジュローと開業医。
芸術家を気取るジュローに開業医が罠をかける。
開業医の密かな愉しみとは・・・。

「バナナ粥」

題名の出典:「芋粥」
ケアマネージャーの阪本直子は
新しく担当した玉井吾一郎に悩まされていた。
家族は独身の息子一人で、
親の介護のせいで結婚も出来なかったと恨みを抱いている。
しょっちゅう諍いをしているこの父子に
うんざりした直子は・・・
7篇のうち、唯一のハッピーエンド。

「或利口の一生」

題名の出典:「或阿呆の一生」
ある医師の一生を描く。
堅実で理性的で現実がよく分かっている医師なのだが、
その末期は・・・

どの作品もブラックでユーモラスで、哀しくて、おかしい
しかし、それだけの読後感。

                                        



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