小説『優しい死神の飼い方』  書籍関係

[書籍紹介]

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本作の主人公は、「死神」。
ただ、通常のように、
人の寿命を司り、死に誘うものではなく、
死んだ人間から抜け出た「魂」を
わが主(あるじ)様』に導く役割をしている。

その死神、最近、ある問題を抱えていた。
「未練」を持って死に、
「地縛霊」になる人間が増えて来たのだ。
地縛霊は、そのまま放っておくと、
風化して「無」に帰する。
『わが主様』の所有物である魂を消滅させてしまうのは、
死神にとって恥辱だった。

その成績の悪さをとがめられた主人公の死神は
「上司」に「この時代の、この国に問題がある」と主張し、
「彼らが生きているうちから接触でもしない限り、
成績を上げることは困難」と言ってしまう。
そこで、上司は『わが主様』と相談し、
死神を地上に降臨させてしまう。
ゴールデンレトリーバーとして。

その派遣先は、
丘の上に建つホスピス。
そこの末期ガン患者の「未練」を絶つため、
犬になった死神が奮闘する・・・

というわけで、着想はなかなかのものだ。
「死神」とうたっている関係上、
伊坂幸太郎の先行作品と比較されるのは仕方ないところ。
ただ、「犬」の体を借りているがゆえに、
犬の習性に振り回される死神(「レオ」と命名される)の姿が
ユーモラスに描かれる。
たとえば普通の犬と同じように、
食べ物に敏感に反応し、
一心不乱に食事をし、
特に「しゅうくりーむ」を食べる幸福感に浸り、
惰眠をむさぼり、
ボールを投げられれば、
体が反応して夢中で追ってしまう。
嬉しい時、自分の意志と関係なく
尻尾が反応してしまうのもおかしい。

レオは病院の監護師の菜穂に可愛がられ、
病院の入院患者で
「未練」の腐臭を放つ3人の患者の過去を探り、
夢の中に入り込み、
その未練を解き放ち、地縛霊化を防ぐ。

一人は戦前、この屋敷の娘と駆け落ちしようとして
果たせなかった未練を持つ南。
一人は、町の宝石商で、
この屋敷にダイヤが隠されていることを知って、
侵入し、ダイヤを持って逃走し、
香港で名前を変えて帰国した金村。
一人は画家で、
この屋敷の住人の息子との関わりの中で、
色彩を失い、絵を描くことができなくなってしまった内海。
そしてもう一人・・・

これに病院を買い取ろうとする怪しい男たちがからみ、
事件は7年前の一家惨殺事件がらみで展開する。

犬という立場上、
患者たちのからみがまとろっこしく、
始めの方はやや幼稚に感じられたが、
後半、様々な事件が一つにつながり、
怒濤の展開を見せると、面白くなる。

時々現れる「同僚」の死神や「上司」が面白い。
最後の展開もなかなかで、
「死神」は新たな名称を獲得する。
後味は悪くない。

作者は現役の医者だという。




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