映画『沈黙』  映画関係

[映画紹介]

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遠藤周作の小説「沈黙」を、
マーティン・スコセッシ監督が映画化。
キリシタン禁令の日本を舞台に
密入国したポルトガル人司祭の目を通して
西洋と東洋の衝突、
日本の思想的風土とキリスト教の相剋
を描く文学作品を
この巨匠がどんな風に映画化するか、大いに興味をそそられる。

17世紀の江戸時代。
島原の乱が収束して間もない頃、
イエズス会の高名な神学者であるクリストヴァン・フェレイラが、
布教に赴いた日本での苛酷な弾圧に屈して、
棄教したという報せがローマにもたらされた。

フェレイラの弟子セバスチャン・ロドリゴとフランシス・ガルペは
日本に潜入すべくマカオに立寄り、
そこで日本人キチジローと出会う。
キチジローの案内で五島列島に潜入したロドリゴとガルペは、            
隠れキリシタンたちに歓迎されるが、
やがて長崎奉行所に追われる身となる。

殉教する信者たちに寄り添ったガルペは命を落とす。
ロドリゴは過酷な迫害を見て、ひたすら神の救いを祈るが、
神は「沈黙」していた。

やがてロドリゴはキチジローの裏切りで密告されて捕らえられ、
長崎奉行の井上筑後守との対話を通じて、
日本人にとって果たしてキリスト教は意味を持つのかという
命題を突きつけられる。
更に、長崎の寺でロドリゴは棄教した師のフェレイラと出会い、
深い失望を味わう。
逆さ吊りにされた信徒たちを救うには、
お前が棄教すればよいと言われたロドリゴの前に
イエスの像を描いた板が置かれ、踏むことを迫られる。
その時、ロドリゴの心に、ある声が語りかけて来る・・・

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既に篠田正浩監督によって1971年に映画化。

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それを米国人監督による再映画化である。
作品の意図がねじ曲げられているのではないか、
そもそも西洋人に日本の思想的風土など理解できるのか、
という心配をしたが、杞憂に終わった。
原作の意図とテイストが、
見事に映画化されている。

実は篠田作品、日本人監督による作品だが、私は買っていない。
ロドリゴの棄教に至る経緯に大幅な改変が加えられているし、
ロドリゴとガルペは外国人俳優を起用したものの、
肝心のフェレイラを日本人俳優(丹波哲郎)に演じさせるなど、
根本的姿勢に問題があったからだ。

しかし、このスコセッシ版は、
日本人が作った以上に原作の本質を損なっていない。
超一流監督と凡庸監督との力の差が歴然としている。
原作でも展開する、作品の肝である
井上筑後守との長い論争、
フェレイラとの濃密な対話で展開される
日本人とキリスト教を巡る論議も
俳優の力で押し切った。
見事と言うしかない。

ロドリゴを演ずるのは、アンドリュー・ガーフィールド

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フェレイラは、リーアム・ニーソン

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キチジローに窪塚洋介
通辞に浅野忠信

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隠れキリシタンの農民に塚本晋也笈田ヨシら。
みんな役どころを的確に捉えて好演だ。
また、井上筑後守のイッセー尾形が、
独特な奉行像を作り上げる。

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特に、小説には描いていない後日談として、
オランダ商人の目を通じての
ロドリゴとフェレイラのその後が描写されるが、
瞠目した。
二人の苦悩が手に取るように分かる。
また、江戸の切支丹屋敷でのロドリゴの死の経緯も納得できるものだ。
最後を曖昧にせず、
映画をしっかり終わらせたのもいい。

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スコセッシが原作に出会ったのは1988年。
それから28年を経て、
完成までこぎつけ、
かつて日本人が成し遂げられなかった
完璧な作品に仕上がったことに敬意を評したい。

ただ、ロドリゴに聞こえるキリストの声は、
まるでマイクの前で語っているような印象で、
あそこは、「ささやき声」にしてほしかった。
また、司祭たちがポルトガル語ではなく、
英語で話すのは仕方ないとしても、
日本人の神理解の間違いが                            
英語でしか成り立たない語呂合わせで説明されるのは、
ちょっと困る。

5段階評価の「4. 5」。                

なお、スコセッシは、
問題作「最後の誘惑」(1988)で、

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キリストの生涯を、
かつてない視点で描いており、
宗教には昔から関心があった。

遠藤周作の「沈黙」は、
演劇やオペラにもなった。

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イングマル・ベルイマン監督のスウェーデン映画「沈黙」は、別な作品。

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なお、原作の「沈黙」は、
私が自分の小遣いで初めて買った本。

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そして、後日、演劇をしていた頃、
「沈黙の果て」という
キリシタン迫害を題材にした芝居を上演、
あろうことか、その原稿を
遠藤氏と曽野綾子氏に送りつけた。
怖いもの知らずというより、
恥知らずの
若気の至りの冷や汗ものの思い出である。

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