『帰ってきたヒトラー』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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2011年8月、
ベルリンの一角で
突然ヒトラーが眠りから目覚める
軍服で、ガソリンの臭いをぷんぷんさせて。
敗色濃厚になった時、
ヒトラーは自殺し、
その死体はガソリンをかけて焼かれたから、
ガソリンをかけられたのと焼かれるとの間で
タイムスリップが行われたことになる。
しかし、ヒトラーは自分が自殺したことを覚えていない。

周囲の人々はヒトラーそっくりの人物が
軍服を着て現れたことに驚愕するが、
ヒトラーそっくりのモノマネ芸人だと思い込む。
彼はテレビのバラエティ番組に出演し、
その演説で周囲をびっくりさせる。
あまりにヒトラーそっくりであること
(本人だから当たり前だ)
ヒトラーにありそうな言動
(本人だから、これも当たり前)
に、
全てが強烈なブラックユーモアだと解釈され、
勘違いが勘違いを呼び、
その放送番組はYoutubeに掲載、
そのアクセス数は記録的になり、
人気者になっていく。

2012年9月の発売以来、
1年2カ月で
ドイツ国内で130万部を売り上げたベストセラー。
原題の『Er ist wieder da』は、
「彼が帰ってきた」という意味で、
1966年にドイツで大ヒットした歌のタイトルから取られている。

現代にスリップしてしまったヒトラーの言動が面白い。
他の人はまさか本物のヒトラーとは夢にも思わないから、
本名を教えてくれだの
ポスポートや身分証明書を見せてくれだの言う。
それをことごとくはねつけ、
「自分はアドルフ・ヒトラーだ」と貫くところなど、
爽快感さえ感ずる。

テレビやコンピューターや
マウスやインターネットに驚き、
自分の時代にこれがあったら、
と妄想するところなど笑える。
そして、ドラッグストアの省力化を見て、
人材の効率化の行く末に
兵隊数の増強にしか頭が行かないところも皮肉だ。

しかし、何と言ってもすごいのは、
ヒトラー自身は、
ナチ時代にしたことに対する反省は全くないところだ。
ユダヤ人やトルコ人や他国人に対する偏見を含め、
ことごとく判断基準は当時のまま。
だから、対話は常にかみ合わない。
かみ合わないまま、
周囲が勝手に誤解し、曲解し、受け入れる。

やがてドイツ内の各政党がヒトラーの人気にすり寄って来る。
以下、ヒトラーの述懐。

これだけたくさんの政党が
私に入党を打診してくるのは、
私という人間にそれだけの価値があるということだ。
ならばその価値を、
よそのだれかの目的のためにさしだすよりも、
自分自身のためにこそ使うべきではないか──。
1919年当時、
もしも私が別の党に入党していたら、
おそらくその先の未来はなかった。
けれども私は、
とある弱小政党に入り、
党の指揮権を握り、
自分の望むまま采配をふるい、
非常に効率的に結果を出した。
そして今の私には、
本の出版や、
同じころスタートする新番組という勢いがある。
その勢いに乗れば、
積極的をプロパガンダを開始し、
新たな運動を立ち上げることもおそらく可能なはずだ。

こうして、ヒトラーは新しい運動に乗り出す。
側近が作ったスローガンは、
「悪いことばかりじゃなかった」
最後の一行はこうだ。

歩きだすのだ。このスローガンとともに。

「我が闘争」は発禁、
ナチスの礼賛は法律で禁止、
そしてヒトラーは究極のタブーに等しいドイツで
このような小説がベストセラーになるとは興味深い。
懐が深いのか、
それとも何かが緩んでいるのか。
しかし、卓抜なアイデアによるこの小説、
映画化が期待されている。




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