『月下上海』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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松本清張賞受賞作。
筆者が協同組合の食堂のおばちゃんであることが話題になった。

昭和17年(1942年)10月12日、
主人公の矢島多江子が
戦時下の上海に船で降り立つところから物語は始まる。
中日文化協会の招聘で、
絵の個展と文化講演をするためだ。
多江子は文藝春秋社の後援を得た画家で、
財閥のご令嬢。
しかし、結婚に失敗し、
その時のスキャンダルを逆手に取って人気画家の地位を得ていた。

受け入れの中日文化協会で
案内役として付いた槙庸平は、
上海に詳しく、多江子を案内する。
しかし、ある時点で槙の態度は豹変し、
過去の多江子のスキャンダルの真相を持ち出し、
民族資本家夏方震の動向を探るように強制する。
実は、槙の正体は、憲兵大尉だったのだ。

というわけで、
魔都と言われる上海を舞台に
戦時下の日中情勢を背景としたスパイ作戦が展開する・・・

と思いきゃ、
話はそうはならない。
今度は夏と繰り返すデイトが描かれる。
夏はアメリカ留学時ボクシングをしていて
鼻がつぶれた容貌にもかかわらず、
魅力的な男で、多江子は次第に夏に惹かれていく。

多江子の幼少からのことも挿入される。
矢島財閥の令嬢として生まれた多江子の少女時代、
知り合った奥宮瑠偉(ルイ)は
伯爵家の次男坊奥宮頼光がパリ留学中、
踊り子との間に生まれた子供で、
奥宮家に引き取られて疎んじられて育っていた。
その瑠偉と親しくなった多江子は、
父親に瑠偉の音楽留学の金を出させ、
帰国後、結婚する。
しかし、恋多き瑠偉の浮気を知った多江子は、
相手の女と瑠偉を破滅させるために大きな賭けに出る・・・

まるで絵に描いたような
上流階級の女が
上海という絵に描いたような魅惑の町で
絵に描いたような恋愛劇を演ずる。
相手は夏だけで終わらず、
抗日運動の医学生黄士海、
最後は槙大尉にまで及ぶ。

日本の敗色が濃くなった時代を選び、
複雑な情勢下の上海を舞台にしながら、
それに深く立ち入るわけではなく、
単なる話の彩りでしかない。
大変な戦時下にあっても、
多江子は夏と豪華な食事と芸術と旅行を楽しみ、
嫉妬した槙の陰謀に巻き込まれる。 
登場人物は夏を除いてことごとく美形で、
多江子を巡って恋愛遊戯を繰り広げる。

財閥の令嬢、しかも美人。
贅沢な少女時代、
美しいハーフで不実な夫、その浮気、
画家としての成功、
上海での交遊、
雑誌から抜け出たような衣裳、
秘密の任務に付く憲兵大尉、
大人物の資本家、
憲兵に追われる中国人の青年・・・。
女性の読者が喜びそうな要素
あるいは作者の願望を満載させ、
こちょこちょと話を転がしただけの空疎な内容

これが松本清張賞とは。





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