『カラマーゾフの妹』  書籍関係

〔書籍紹介〕

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第58回江戸川乱歩賞受賞作。

かの有名なドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」の続編
という体裁を取る。

元々「カラマーゾフの兄弟」そのものが、
2部作で、
父親のフヨードル・カラマーゾフの殺害事件以来
13年目が第2作となるはずが、
書かれずじまいだった。

本作ではドストエフスキーを「前任者」と呼び、
作者が「後任者」として、
13年前のフヨードル殺しの真相を解明する、
ということになっている。

本作の主人公は次男のイワン・カラマーゾフ。
内務省未解決事件課特別捜査官のイワンが
故郷スコトプリゴニエフスクに帰って来る。
目的はフヨードル殺しの真相を探るためだ。
事件そのものは
長男ドミトリーの犯行とされており、
ドミトリーはシベリア送りとなり、
現地の事故で死亡している。
しかし、「カラマーゾフの兄弟」の読者は、
犯人はカラマーゾフの妾腹の弟スメルジャコフが犯人であり、
それをそそのかしたのがイワンであることを知っている。

その大枠の中で、
作者は「前任者」の張りめぐらした伏線をときほぐしていく。

いやはや面白い
私が「カラマーゾフの兄弟」を読んだのは、
既に40年も前のことだが、
親切にも粗筋で事件の顛末を語ってくれている。

イワンは多重人格者として描かれ、
重大な人格が「カラマーゾフの兄弟」の中で登場したことになっている。
『悪魔』や『大審問官』まで登場するに至って、うなった。
なるほど、そういうことだったのか。

後半、視点はアリョーシャに移り、
意外な展開になる。
コンピューター理論やロケット理論まで飛び出し、
その後のソ連の人工衛星まで彷彿とさせるところは、
この作者が既存のSF作家である面目躍如というところだ。

そして、最後の30ページで明かされる事件の真相。
まさに「一番犯人らしくない人物が犯人」という
推理小説の王道を行く展開。
フヨードル殺しだけでなく、
ある人物の死にまつわる真実まで出て来て、
「カラマーゾフの兄弟」を読んだ人にとっては驚愕の連続だ。

「もし神がなければ全ては許される」
というイワンの主張が逆転される部分も見事。

遊び心も満載で、
「カラマーゾフの兄弟」の読者も満足させる「続編」。
江戸川乱歩賞にふさわしい作品だ。

応募段階では「カラマーゾフの兄妹」という題名だったのを
出版段階で「カラマーゾフの」としたのも適切。

文豪の作品に新たな光を当てて
新装作品に仕立てたこの小説、
類似作品が出そうだが、
選評で二人の選考委員が注意をううながしている。
「この手はよほどの腕がある人しか実現不能なので、
応募者は安易に真似をしてはいけません」
(石田衣良)
「同じような手はそうそう適用しない、
と今後の応募者たちに警告しておく」
(東野圭吾)




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