黒豚  

昨日、食肉公正取引協議会の専門委員会についての反する二つの情報
について書きましたが、
今日聞いた話では、意見錯綜、の方が正しかったようです。
必ずしも農林水産省の思惑通りになっていたわけではないらしく、
委員の中から運営方法についての疑問が出たようだし、
最後には来賓であった公正取引委員会が釘を刺したそうです。

「釘」の内容は、
こういう会議をして決めて
農水省が食肉小売品質に定めても
食肉公正競争規約に取り入れるかどうかは
消費者や外国の意見を聞く等、別な作業になる。

法的には中国産でもコシヒカリはコシヒカリであり、
国産を守るのは理解できるが、
慎重な議論が必要

というもの。

ここには食肉公正競争規約及び食肉公正取引協議会は
公正取引委員会の管轄なのに、
どうして農水省がリードして強引に議事を進めるんだ、
という公正取引委員会の苛立ちがありあり。
なにしろ公正取引委員会管轄の団体なのに
来賓の序列は農水省の方が上で、
食肉鶏卵課の課長じきじきにおでましになって説明する、
というのは、
かなり圧力のかかった会議というべきでしょう。

公正取引委員会の心の中はともかく、
公正取引委員会が言っていることは正論
今回の「和牛及び黒豚の表示は国産品に限定」という提起が
公取協内部や消費者から出て来た
「下からの検討」でなく
「上からの検討」であることは明白。
いわば食肉公正取引協議会が農水省の方針を実現するための
道具に使われていることに不快感を感じているのでしょう。


「昔はこうだった」という話は嫌いですが、
あえて言わせてもらうと、
7年ほど前、「黒豚と表示できるのはバークシャー純粋種に限る」という定義が決められました。
この時の経過は、
当時、黒豚の表示が混乱していた現状について
全国食肉公正取引協議会が農水省に
「黒豚の定義を決めてほしい」と「要望書」を出したのが発端。

なにしろ当時は「黒豚」表示に決まりがなく、
バークシャー純粋種も
バークシャーと他の品種をかけあわせた交雑種も
バークシャーと関係のないものも
勝手に「黒豚」と表示していたのが現状でした。

消費者からの要請で公取協内部で検討もしましたが、
業界内部では利害が対立して決めることはできません。
そこで、農水省に「定義を決めて」ほしいとお願いしたわけです。
これはその「要望書」を起案した本人が言っているのですから、確かです。
(つまり、このブログを書いている事務局長が要望書を書きました。当時、事務局長は全国食肉公正取引協議会の専務をしていましたので)

農水省はすぐに動きだし、
(財)日本食肉消費総合センターに助成事業として委嘱、
そこで各方面関係者が委員となって審議、
(事務局長も委員の一人)
その検討結果に基づいて、数案を起案し、
これをパブリック・コメントにかけて意見を公募、
その結果、
「黒豚と表示できるのはバークシャー純粋種に限る」という定義が決まり、
「食肉小売品質基準」(農水省の局長通達)に取り入れられ、
間をおかずして「食肉公正競争規約」にも採用された、という経過をたどっています。
この間、農水省と公正取引委員会は連携して作業し、
実にスムーズに行われました。

違いがわかりますか?
まず表示の混乱が現実にあり、
消費者が戸惑っているから、
一度公的に定義を定めてくれ、と
「下から上に」要望が出たのであり、
今回のように、農水省が「上から下に」検討を依頼する、
というのとは明らかに違います。

農水省はその根拠に
「アンケートを取ったら、
消費者の大部分が、黒豚は国産品だと思っていた」
というのをあげていますが、
JAS法で、原産地表示が義務付けられていて、
「黒豚 (アメリカ産) 」と必ず表示しているのですから、
それは消費者の認識の方が間違っているのであって、
それを周知徹底させるのが農水省の仕事というものでしょう。

「消費者がそう思っているから」を錦の御旗にするのなら、
米国産の輸入再開など永遠にできません。
ましてBSEに関する消費者の誤解など生涯解けないでしょう。
消費者がどう認識していようと、
間違いは間違いとして正していく
気概がなくてどうするのでしょうか。

まして、今回のそれは、
消費者の商品選択に誤認を与えているわけではありません。
店頭で「黒豚 (アメリカ産) 」と書いてあるものを
国産品だと誤認して買う人などいないでしょう。
現場レベルでは全く問題はないのです。

今回の農水省のアプローチは、
黒豚表示を国産品だけに限定して、
輸入ものについて「黒豚」の表示をさせない、
つまり生産者を保護する意図がありあり
公正取引委員会があのように指摘するのは無理がないと言えます。

そんなことを画策せずに、
国産品であろうと輸入品であろうと自由に競争させればいいのであって、
表示に制限を加えて生産者を守ろうなどと、その発想の古さに愕然とします。
過保護な子供はひ弱に育ってしまいます

いずれにせよ、
表示に制限を加えるのですから、
それだけの正当性のある根拠が必要
で、
「消費者が大部分そう思っているから」という根拠は薄弱すぎます。

「和牛」については、もともと日本古来のもので、
精液が外国に流出した結果
外国産の「和牛」が逆輸入、
これに制限を加えようというのは、
知的財産権を守るために必要、というのは一定の正当性があります。
また、実際に外国産和牛が流通量としては極めて少ない今決めるのは影響が少ないでしょう。

しかし、黒豚については
もともと外国起源のものが日本に入って来た
のであり、
知的財産権とは無縁。
侵しているとすれば日本側です。
「黒豚」とニックネームを付けてきたのがブランド化したわけですが、
登録商標になっているわけでもなく、
実際は外国が本家、
まして相当な量が外国産であっても黒豚表示で流通している今となっては、
それに制限を加えるのは、
影響も大きく、
新たな非関税障壁として問題になるでしょう。
消費者にしても、同じ品種なのに国産は黒豚、
外国産はバークシャーと表示するなど、新たな混乱を産むだけです。

更に、仮に今回それが決まったとしても、
「黒豚 (アメリカ産) 」とした表示を
景品表示法上で定める「優良誤認」とするには相当無理があります

景品表示法を管轄する公正取引委員会としては
妙な決定を黙認するわけにはいかないでしょう。


こういうことをちゃんとふまえて専門委員会では議論してほしいのですが、
実際はかなり混乱があったと聞いています。
なにしろ議長自ら議論に参加して、カッカしていたとか。

昔、あの方がある会議の議長をしていたのを見ましたが、
出席者の発言に「私はそうは思わない」と議長が真っ先に反論したのにびっくりした経験があります。

議長というのは公正中立をもととし、
議事運営のみ口をはさみ、
平等に意見を抽出して冷静にまとめあげるのだと思っていましたが、
議長みずから感情丸出しの意見を口にするとは。
議長というのは、自分の意見を言いたくても抑制し、
採決にも加われない、
賛否同数の時だけ決する権利がある、
というのは小学校の学級会の運営で習いましたが。はて。

昨日も書きましたが、
全国公取協は本来各県公取協の連合体のはず。
各県公取協の意見はどうやって吸い上げるでしょうか







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