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小説『空白の家族』  書籍関係

[書籍紹介]

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堂場瞬一による
警視庁犯罪被害者支援課シリーズの「7」。

犯罪被害者支援課とは、
文字通り、犯罪の被害者の精神的ケアをする部署。

その課員、村野は、
新任の課長のことなかれ主義と、
これも新任の若い川西の数字統計至上主義に
鬱憤が貯まっていた。

そんな時、誘拐事件が発生する。
さらわれたのは、人気子役の橘愛花。
まだ小学生だが、ドラマと映画で人気沸騰中だ。
その家族の精神的ケアのために支援課は働くことになるのだが、
村野には冷静に対処できない事情があった。
というのは、愛花の父親の仲岡が、
10年前、被害額10億に及ぶ未公開株詐欺事件の犯人の一人で、
当時、村野は仲岡と接触している。
仲岡は、進んで仲間を売り、
その結果、執行猶予判決を得たという「クズ男」だ。
執行猶予期間を過ぎ、
今は更生して、飲食店のチェーンを経営しているが、
犯罪の直後に離婚され、愛娘の愛花とは、
テレビの画面でしか会えない状態だ。

その仲岡が誘拐事件発生により、関わってこようとする。
家族は拒否するが、
5千万円の身代金を調達し、
その受け渡し役も買って出る・・・

一方、村野は、別な案件に関わっていた。
漏電による出火で、一人住まいの老女が焼死した。
しかし、夫に連絡しても「関係ない」の一言で、接触さえしない。
息子と連絡を取って、父親を説得し、
遺体を引き取らせ、葬儀を出すが、
その家族は「壊れた家族」だった。
次男が自殺したのを契機に、
母親が新興宗教に入り、
一家は断絶してしまったのだ。

愛花の家庭も、事件によって「壊れた家族」だった。

やがて、村野は、
二つの事件の共通項を見出し、
二つの線が一つに絡まってくる

面白い。
話の構成も巧み。
二つの事件の真相が見えて来るあたりはスリリング。
そして、誘拐犯逮捕の物的証拠の仕掛けがなかなかいい。

おそらく映画化されたら、
なかなかの作品になるだろう。

村野が被害者の家族から叱責されて反省を述べるセリフ。

「私は今まで、多くの被害者家族と向き合ってきました。
結果的に言えるのは、
やはり人の悲しみは理解できない、ということです。
自分が被害者にならない限り、分からないでしょう」



映画『蘇る三大テノール』  映画関係

[映画紹介]

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ルチアーノ・パヴァロッティプラシド・ドミンゴホセ・カレーラス
いわゆる「三大テノール」のコンサートを巡るドキュメンタリー。
英語の「The Three Tenors」には、
日本語の「三大」に相当する意味はなく、
直訳すれば、「三人のテノール」だが、
「三大美術館」「三大瀑布」など、
何でも「三大」とつけたがる日本の習慣で、
「三大テノール」と呼ばれる。
なお、正確には「イタリア・オペラの三大テノール」で、
曲目がそれに反映し、
ワーグナーやモーツァルトは一曲も出て来ない。
イタリア・オペラの方がポピュラーだからなのと、
イタリア民謡も耳になじんでいるからだろう。

1990年当時、3人は実力人気共に脂の乗り切った状態で、
ライバルとも目されていたが、
その3人が一緒にコンサートをすることになったのは、
サッカー・ワールドカップ・ローマ大会の際、
ホセ・カレーラスに公演の依頼が入り、
「ローマでは何度もコンサートをしている。
この際、何か、いつもと違うことをしたい」
というカレーラスの要望を受けた
プロデューサーのマリオ・ドラディが、
「パヴァロッティとドミンゴとの共演はどうか」
ともちかけたのが始まり。
つまり、ドラディが「産みの親」だ。

1987年、カレーラスが白血病を患った後、完治、
その励ましを兼ねるということで、
二人が共演を承諾。
初めての会合の時、とげとげしさがあったものの、
伴奏者と共に歌ったところ、打ち解けた、
というドラディの証言など、
貴重なインタビューが頻発する。

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映画は主に、最初のコンサート、
1990年7月7日土曜日の
ローマのカラカラ浴場でのコンサートを中心に描く。
3人が順に歌う間奏部分にインタビューが被さる。
歌を聴かせてくれよ、という気もするが、
それほど邪魔にはならない。

当初、パヴァロッティが観客は集まらないと思って、
2千人分のチケットを引き受けると申し出たり、
CDの契約で、印税方式を申し出たレコード会社(デッカ)に対して、
ドミンゴが強硬に契約金方式を主張し、
後で、印税にしとけばよかったと後悔した話など、
当初、3人はこれほどの成功を想定していなかった風が伺える。
(放送は世界8億人が視聴、
コンサートのレコードは、
3日間で50万枚、1 か月後には300万枚、
最終的には、クラシック音楽最大の1600万枚のベストセラーとなった。)


また、ローマの放送局はワールドカップ中継でカメラが出払っており、
カメラの調達に苦労した、という話も興味深い。
なんだかカメラワークが窮屈だったのは、そのせいか。

当初は成果を当人たちでさえ期待していなかったのに、
これほどの成功をしたのは、
3人の歌唱が素晴らしかったからに他ならない。
このとき、パヴァロッティ54歳、ドミンゴ49歳、カレーラス43歳
テノール歌手として頂点の年齢だ。
どの歌も心がこもっており、
オペラファンならずとも、「すごい」と思わせるものを持っていた。
特にパヴァロッティの「誰も寝てはならぬ」は、
映画館の中で鼓膜がビリビリ来るほどの強烈さ。
歌い終えた後のパヴァロッティのドヤ顔がすごい。
ドミンゴの「星は光りぬ」もいいし、
カレーラスは見直した。

この日は、西ドイツとアルゼンチンの決勝戦の前日。
当日は、3位決定戦でイタリアがイングランドに勝利という
絶好の環境が整っていた。
ワールドカップと三大テノールが強烈な絆を持った日だった。
その結果、
三大テノールのコンサートはサッカー・ワールドカップに付き物のイベントとなり、
1994年ロサンゼルス、1998年パリ、2002年横浜と続いた。
それ以外にワールドカップと関係なく世界中でコンサートが開かれた。

しかし、ローマが3人の友情とサッカーへの愛に満ちていたのに対し、
ロサンゼルスのドジャース・スタジアム以降は、
「金儲け」が前面に出て、魂が失われた格好、
と関係者が証言する。
5000人のカラカラ浴場から
5万人の野球場と大規模になり、
それだけ観客は遠くから3人を見ることとなった。
ロサンゼルスでは、3人はあまり熱心にリハーサルをしなかったという。
耳で覚えさせるために、
三人の「影武者」が登場するのも興味深い。
それでも、「マイ・ウェイ」を歌った後、
客席でフランク・シナトラが立って観客に感謝するなどの
貴重な映像も見られる。

「クラシック音楽の俗化」などという批判もあったようだが、
音楽の楽しみ方にはいろいろある。
自分と違う楽しみ方をするからといって非難するのは間違いだ。

インタビューを受けたのは、
デッカ・レコード販促責任者のディディエ・ド・コッティニー、
カレーラスの担当医ライナー・ストーブ腫瘍専門医、
バス・バリトン歌手ブリン・ターフェル、
ルチアーノ・パヴァロティの再婚相手ニコレッタ・マントヴァーニ、
タレント発掘番組に出場して、
「誰も寝てはならぬ」を歌って優勝したポール・ポッツ、
ロサンゼルス以降の三大テノール・プロデューサーのティボール・ルーダス、
ロサンゼルス・ドジャースの元オーナーのピーター・オマリー、
3人の「影武者」ら。

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最初のコンサートから30周年を迎えるにあたり、
今更ながら、3人のすごさを感じさせてくれる、
貴重なドキュメンタリーで、
涙を禁じ得なかった。
このような花も実もある3人は
2度と現れないだろう。

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/JlyOy_ZVk-c

ル・シネマで上映中。

関連映画は↓をクリック。

「パヴァロッティ 太陽のテノール」


なお、ちょっと自慢話を。
カラカラ浴場で私は「アイーダ」を最高の席で観たことがある。
この時、主役のソプラノが不調で、
最終幕が割愛されるという、貴重な体験をした。

1996年6月9日の
国立霞ヶ丘陸上競技場の三大テノールコンサートも行ったが、
残念ながら、あまり記憶にない。
なにしろ、遠かったもので。

ホセ・カレーラスの武道館コンサートも行ったが、
これも、2箇所以外、記憶が薄い。

タグ: 映画

慰安婦裁判の影響  政治関係

慰安婦問題で日本に賠償を命じた8日の裁判は、
韓国新聞各紙が一面トップで報じ、
革新系メディアが「歴史的な判決」と意義を強調するなど、
韓国世論は歓迎しているようだ。

一方、保守系メディアは、
「韓日関係の突発変数」と、
日韓関係の更なる悪化の懸念も報じている。

その中で、異様に見える反応があった。
元慰安婦とその遺族ら20人が
日本を相手に1人当たり2億ウォン(約1900万円)を求めて提訴していた裁判の
13日に予定されていた1審判決が、
2日前になって、突然延期されたのだ。
ソウル中央地裁は「事件の判断のために追加の審理が必要だと判断した」
と説明するが、
既に結審されたはずの裁判で、
「追加の審理」とは何のことか。

一つの推測では、
「8日の判決とは異なる判決内容
(たとえば、日本が主張していた「主権免除」が適用される)
だったため、
審理を重ねる必要があると判断したのではないか」という見方がある。
もう一つの推測では、
「判決内容は同じだったが、
8日の判決を見て、その影響や実効性について
見極める必要がある判断したのではないか」という見方だ。

いずれにせよ、
8日の判決が13日の判決に影響を及ぼしたことは間違いない。
                                        
韓国の司法は、世論の動向や政治の方向性によって影響を受ける癖がある。
司法が成熟していないからだが、
世論や政府の動きで判決が変わるのでは、
「司法の独立」などあったものではない。

ただ、言えるのは、
8日の判決の結果、
韓国が新たな問題に直面して戸惑っているという点だ。
その証拠に、文さんの年頭演説では、慰安婦裁判については、
一言も触れていない。
判断を示さず、時間稼ぎをしているのだろう。

元々反日が社会を支配している国だ。
日本政府を相手取って、賠償を命ずる判決が出たのだ、
嬉しかったはずだ。
しかし、一時的に溜飲を下げたものの、
現実を見て、はたと戸惑いを感じたはずだ。

「賠償を命じたが、その実行は可能なのだろうか」

日本政府はこの裁判そのものを認めていない。
従って、賠償命令に易々と応じるはずはない。
ならば差押えだが、
韓国国内の日本政府の資産とは、
大使館や領事館の敷地・建物・自動車・備品など。
大使館資産の差押え、強制執行は出来るのか。

そこで立ちはだかるのが「ウイーン条約」だ。
正式には「領事関係に関するウィーン条約」
その第31条で、
「領事機関の公館の不可侵」が規定されている。
その4には、こうある。
「領事機関の公館及びその用具類並びに領事機関の財産及び輸送手段は、
国防又は公益事業の目的のためのいかなる形式の徴発からも免除される」


このウイーン条約に、日本は1983年に、
韓国は1977年に加入している。

つまり、韓国にある大使館、領事館の資産に、
韓国司法は手を付けられないのだ。

2018年の強制徴用賠償判決は、
日本企業が相手だったため、
差押えが可能だった。
しかし、今度は国と国の関係だ。
日本政府が当事者だ。
もし大使館の資産を差し押さえることなどがあれば、
国際問題に発展し、韓国の信用は下落するだろう。

かつて韓国内の米軍基地で働いていた韓国人被雇用者が、
不当解雇を不服として提訴した裁判で勝訴し、
執行されたことがある。
米国政府が韓国の銀行にプールしていたビザの手数料が執行対象となった。
最終的に米国政府がこれを認めたため、賠償金が支払われたが、
不当解雇の裁判と今回とは性質が違う。
歴史問題と解釈の問題である。

(国連の国家免除条約は例外を認め、
日本も同条約に加盟している。
例外について、
日本の「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」は
国家の商業的取引や労働契約、不動産取引、知的財産取引などを挙げている。
今回の裁判が、これに該当しないことは明らかである。)

2015年の「慰安婦合意」は、
当時のオバマ政権の副大統領だったバイデン氏が
後ろ楯になった。
そのバイデン氏は、次の米国大統領だ。
バイデン氏が尽力した慰安婦合意を、
事実上破棄した韓国政府に対して批判する可能性もある。

類似した裁判では、
戦時中にドイツに捕らえられて強制労働させられたとするイタリア人が、
1998年、イタリアの裁判所に
ドイツを相手に損害賠償を求め提訴した裁判で、
ドイツは「主権免除」の立場を取り裁判却下を求めた。
しかしイタリアの最高裁は
「重大犯罪は主権免除の例外」として賠償判決を下した。
ドイツは2008年、
「この判決は国際法上の義務に違反している」として
国際司法裁判所に提訴し、
2012年、国際司法裁判所は
「ナチスの行為は国際法上の犯罪だが、
主権免除は剥奪されない」
として、ドイツ政府が主張した「主権免除の原則」を認めている。

しかし、その2年後の2014年、
イタリアの憲法裁判所は、
イタリアの憲法による補償されている裁判の権利を侵害しているとして、
国際司法裁判所の判決を違憲としてしまった。

仮に日本が国際司法裁判所に提訴して、
韓国が応じて敗訴した場合、
同様なことが起こるだろう。

つまり、果てしがないのだ。
戦争という異常事態の中起こった出来事を
国と国が見解の相違をぶつけ合えば、
不毛な争いになる。

戦争の問題は、平和条約が締結された時、
過去のことは不問に付す、というのが国際的に常識。
日本と韓国の場合は何か。
1965年の日韓基本条約を締結して、
国交正常化がなし遂げられた時にそれに当たる。
なにしろ、あの時、日本は韓国に残して来た資産の請求権を放棄している。
それだけの犠牲を払って国交を回復したのだ。
その上、当時の韓国の国家予算を越える経済援助をしている。
それも「過去の清算」のためだ。

過去は清算されたのだ。
55年も前に。
なのに、
半世紀前に締結した条約が反故にされ、
また蒸し返されようとしている。

日本と米国は戦争の傷跡を許した。
安倍首相は真珠湾で演説をし、
オバマ大統領は広島を訪問して慰霊した。

争いあった者同士が許し合う
それが人類の知恵だ。

過去にとらわれ引きずる韓国と、
その巻き添えをくらう日本。
もういい加減に韓国も
過去に囚われるのはやめたらどうか。


映画『ミッション・マンガル』  映画関係

[映画紹介]

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インドの宇宙開発事業で、
アジア初の火星探査ミッションを成功させた奇跡の実話を映画化。

ベンガルールにあるインド宇宙研究機構で、
2010年、ロケットの打上げが失敗に終わり、
プロジェクト責任者のラケーシュとタラは
「閑職」に異動させられる。
その部署は、火星探査プロジェクトで、
予算が足りないばかりか、
スタッフも貧弱で、
実現は不可能とされていた。

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ところが、主婦でもあるタラは
家事から閃いたアイデアで、
小さなロケットでも探査機を火星に送る方法を思いつき、
少ない予算でプロジェクトが始動する。
活躍したのは、女性スタッフで、
航行・通信専門のクリティカ、
ジェット推進専門のエカ、
船体設計専門のヴァルシャー、
自律システム専門のネハら。
節約アイデアを使って、わずかな費用で
火星探査機打上げを成功に導くため、
チームは結束し奮闘する。

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そして、2013年、
チームのアイデアと努力が詰まった火星探査機
「マンガルヤーン」が火星へと打上げられた。
(「マンガル」とは火星のことで、
 「ヤーン」は運搬手段、乗り物、宇宙船のこと。)

地球周回軌道から火星に向かい、
火星周回軌道に乗せることが出来るかが、
成功の鍵だったが・・・

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最初の打ち上げで、ロケットに不具合を起こし、
責任者ラケーシュは自爆指示を出してロケットを海に墜落させる。
部下でチーム長のタラは、
事前チェックで小さな不調が報告されながら、
それを無視した自分のミスだと申し出るが、
ラケーシュは自らの責任だとして会見に臨み、
聴聞会での叱責も甘んじて受ける。
この男らしいラケーシュの姿勢が
後に部下の女性たちの力を引き出したのだろう。
上司とは、そういうものだ。

主に5人の女性メンバーが活躍するのは、
アメリカ初の有人宇宙飛行計画を陰で支えた
NASAの女性スタッフを描く
「ドリーム」(2016)を想起させる。
なにしろ美人ばかりなのが、目に優しい。
そればかりでなく、
次々と持ち上がる難題を
生活に密着したアイデアで乗り切っていく。
女性目線の功績だ。
逆境を理論で乗り越える科学者の立場が
子供時代の夢の実現として描かれ、共感を呼ぶ。
結果として、
NASAの火星探査機開発費の約10分の1、
映画「ゼロ・グラビティ」(2013)の製作費1億ドルより少ない予算(約7400万ドル)で
火星探査プロジェクトを成功させたのが痛快。

「パッドマン5億人の女性を救った男」(2018)の監督、R・バールキが脚本を担当し、
助監督だったジャガン・シャクティが初監督を務めている。
また、同作で主役を演じたアクシャイ・クマールが、
火星探査プロジェクトのチーム・リーダーを演じている。

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女性陣は、「女神は二度微笑む」(2012)のヴァディヤ・バランなど。

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ロケット発射や宇宙区間での探査機など、
CGもなかなかの出来。

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途中「休憩」の文字が出るが、そのまま続行。
2時間10分の映画で休憩が入るのは変なので、
もしかしたら、本国では、もっと長い作品だったのかもしれない。
歌と踊りがわずかに出るが、
そのあたりがカットされたのか。
知っている人がいたら、教えてください。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/DYpDsMac4k0

新宿ピカデリー他で上映中。
                                                                                
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