「ユーリ!!! on ICE」では、勇利のフィギュアスケートにバレエが欠かせないものとして描かれています。また、ユーリもロシアで元バレリーナのリリア先生の熱血指導と振り付けによる「プリマ」をフリースケートのテーマにしています。バレエとフィギュアの関係性ってどうなんだろう?ということについて、あくまで個人の意見と考えとしてまとめてみます。
過去に浅田真央さんも「フィギュアの演技のためにバレエのレッスンを受けた」という話があったり、最近では羽生結弦選手もバレエを習いたいと言っていると聞きます。それでは、バレエのレッスンがフィギュアの上達に直接的につながるかといえば、個人的にはそうでもないように思っています。私の身近に子供のころからバレエを一生懸命やってきて、宝塚音楽学校を受験を目指してがんばったけどうまくいかなくて、大学に進学してフィギュアスケート部に入ったという人がいまして、その人にきいた話と自分のつたないバレエの体験をベースに考えていきます。
フィギュア部の彼女の話では「バレエとフィギュアでは重心の取り方が正反対」なのだそうです。バレエでは「骨盤を宙に浮かせる」というくらいに身体を引き上げて動いていくのですが、そういう重心だとフィギュアスケートでは氷を滑るための推進力が無くなるそうで、重心を下に置いて蹴りだすことでスピードと距離を得なければならないので、身体にしみこんだくせを直すのにずいぶんと苦労したそうです。そんなわけで彼女は1年間バレエ禁止令を受けていました。これは大きな違いだと思います。それ以外にも、バレエは足はつま先を伸ばすため足首を拘束しませんが、スケートシューズは足首の保護のこともあるのかがっちりとホールドしているので軽い捻挫くらいなら問題ない(笑)とか。それとジャンプの軸の作り方も違うって話していました。バレエでは女性はあんまり空中で回転するっていうのをやらないせいもありますが、ジャンプの時は空中で回転し始めるところに身体の回転軸を持って行く(飛ばす)のだそうです。だからその軸がうまく作れていないとうまく着地できなかったり、力を上手く使えずに回転が足りなくなったりするようですね。それと、回転するときの手のポジションもバレエの場合はフィギュアほど高速ではないため二の腕のハリを保ったまま回ります。フィギュアは胸の前で組んでいたりしますよね。
じゃあバレエやっててもフィギュアの役に立たないんじゃね?というふうに思えますが、バレエの腕や上半身の使い方はフィギュアスケートの「見た目」にも影響するのではないかと考えます。足を上げてすーっと滑って行く時に腕や上半身がガチガチだと優雅さが出ませんが、バレエダンサーのように腕がどこまでも伸びていくような形になっていたり、胸から上の曲線が出ていたり、下半身でも後のアラベスクやエカルテに上げた足がまっすぐに伸びているとか、ちょっとしたポーズがバレエによって美しくなることは間違いないと思います。それから特にクラシックの曲を使うときの音の取り方なんかも、バレエのレッスンで養えるかなと。音によって顔の角度とかも変えたりしますからね。
バレエの基礎中の基礎であるバーレッスンは、他のダンスのトレーニングにも取り入れられていますし、ユーリがバーレッスンをしている場面もアニメに何回か出てきます。私もバーレッスンが一番好きなんですけど、身体を細部まで正しく動かして関節と筋肉を起こしていく意識ができるのがいいんですね。(実際には難しくて到底正しくできないけれど)小さいころからたたきこまれていれば、美しく動くために「関節や筋肉を正しく使うことが当たり前」になれるのかな。例えば「膝を曲げずに足を前に上げて」といわれてその動作をしようとすると、何も考えなければ膝の上の太ももの前側の筋肉(大腿二頭筋、大腿四頭筋)を使って膝のお皿が上を向いた状態で持ち上げるのが一般的かと思いますが、それだと筋肉の疲労が早いし、膝も曲がってきます。バレエではそういう動きをする場合足の内側から後ろにかけての筋肉を使って土踏まずから膝のお皿を外に向けながらねじるようにして(ターンアウト)上げます。軸足になっているほうも同様にターンアウトして両方でねじるんですが、こうすると前腿が楽だし高さも高く上がります。世界中の名門バレエ団のダンサーも日本全国でバレエを習い始めたばかりの小さな子供さんも私のようななんちゃってバレエ好きおばさんも毎回プリエ、タンジュ、デガジェ・・・と決められた順序でバーレッスンをしてから、センターで踊り始めるという流れは同じなのです。
バレエとフィギュアスケートには全く正反対のこともありますが、音楽と人間の身体で美しさを追求する表現であるということが絶対的な共通点であると思います。そしてその追及には近道はなくて、ただただ気の遠くなるような基礎練習が必要であることも共通しています。どちらの世界も一流になっても華々しく活躍できる期間は限られているということも。そして世界中の多くの人の心を惹きつけてやまない点も同じですね。
いちおううまくまとまったかな(笑)

0