「『ユーリ!!! on ICE』の登場人物を勝手に解釈〜ヴィクトル編〜」
アニメーション・コミックス・本
主人公にぴたっとくっついている彼にとってコーチであり神でありアイドルでもある憧れのヴィクトル・ニキフォロフについて考えてみます。
基本情報は以下の通り。
○ロシア人。身長180センチ。緑がかったブルーの目に銀髪。おでこはちょい広め(笑)
○12月25日生まれの27才。独身。
○ジュニア時代から世界中に注目され続け、昨シーズンには世界選手権5連覇達成。
○身長は180センチで、大食漢で酒豪だけど勇利と違ってぜんぜん太らない(笑)
○言葉のチョイスは「フィーリング重視」
○自分のスケーティングでみんなをあっと言わせることによってスケートに対するモチベーションを保ってきた
○ペットのスタンダードプードルの「マッカチン」をこよなく愛す
○基本的に裸族だけどとってもおしゃれさん
○自身のコーチはヤコフ・フェルツマン 言うことはきかないけど絶大な信頼を置いている
○うれしいときは口がハート型になる
アニメを観た時の第一印象は「天才肌」でした。ヴィクトルのスケートに対する感覚面は、バレエで言うと熊川哲也さん、歌舞伎界では坂東玉三郎さんみたいなイメージを持っています。そしてルックスにも恵まれた「神様に選ばれた人」なんだろうなと。こういう人は他の人に距離を置かれるので孤独になったり、いろんな人が利用しようとして近づいてくるから人間不信に陥りやすい傾向にあるようですが、一見ヴィクトルはそれを表面に出していない感じがします。だけどそういう経験をしてきたからこそ、あらゆる手を尽くして勇利からの信頼を手に入れることができたとも思います。
彼が世界ジュニアでトップに立って後シニアに転向してから22才くらいまでは、世界選手権で金メダルはとれなかったわけで、その間金メダルを獲得していたのはどんな人だったのかというところも私としては気になります(笑)いずれにしても国内外からずっと注目され、それを理解した上で行動している、勇利とは正反対の存在です。自分がどう見られているか、どうやったらどんなふうに見てもらえるのか、客観的自己評価が的確なのでしょうね。
そして、勇利が「陰」だとすれば、ヴィクトルは「陽」ですね。「陰」が「陽」に導かれて次第に中和されていくというか、さらに中和から「陽」に変わっていく、というすごい「陽」の力を持った人だなと。
想像するに「みんなをあっと言わせることでスケートに対するモチベーションを保ってきた」ということは、裏での努力はものすごいものがあるはずで、「スケート以外のことはどうでもいい」くらいの精神でなきゃそれを20年近く続けてこれなかったから、「2つのLを放置した」(一般常識的な部分も?)という状況になってたのかな。それが第1話のソチのグランプリファイナルの試合後に自分を見つめている黒髪の青年(勇利)に記念写真を無視された流れからの、第10話で語られるコンベンションの場でのダンスバトルの勇利の変化が、まさにヴィクトルにとって「アメージング!」だったわけで。ソチのグランプリファイナルの滑走順はわかりませんが、おそらく勇利は最初の方でヴィクトルは最後の方だったはずだから、勇利の演技を見ていたかどうかは不明ですが、演技中と普段の勇利はあまりにも違っているしさんざんな出来だったから、その後の「滑ってみた」動画を観た時の驚きはよりいっそう大きかったはず。「人を驚かせてきた自分をこんなに驚かせてくれるこの青年にもっと驚かされたい!!」という衝動は止められなかったでしょう。
第2話から第6話くらいの日本にいた期間は驚かされてばかりの日々。そして、グランプリシリーズ中国大会・ロシア大会を経て自分のスケートに対する気持ちの変化にも気付き始め、そして最後のバルセロナグランプリファイナルでは勇利にいろいろと驚かされ続け(笑)、最後には自分が選手に復帰して勇利と世界中のスケートファンを驚かせるしか「仕返し」の方法が見つからなかったのではないかと思います。
小さいころからスケートをやっていて、すばらしい成績をあげるとなると相当な練習量になり、筋肉量が増えて骨が伸びにくくなるので身長が低くなりそうなものですが、180センチまで身長が伸びたということは、ヤコフコーチが上手にそのあたりを管理してくれたからかもしれません。同じリンクで練習しているユーリ、ミラ、ギオルギーといいなかなか個性が強い選手が多いですが、ヤコフコーチの指導方針として「個性は尊重する」というポリシーがあるのかも(笑)グランプリシリーズに男子だけでもユーリとギオルギー、そして前年まではヴィクトルと同時期にこんなに優秀な選手を出場させているなんて、あのコーチはすごいと思います。だからこそヴィクトルもずっと信用してこられたのかな。
一見自由人のようで、実際は観察力と判断力にすぐれた人物。そして神様にスケートの才能を与えられた逸材。それゆえに多くの人をひきつけてやまない魅力にあふれ、さまざまな影響を与え続けていく人なのだと思います。まさに太陽のような人、それがヴィクトル・ニキフォロフではないでしょうか。
余談ですが、これは一般論じゃないですけれどうちのバレエの先生の表現もとっても感覚的です(笑)それは、体得した感覚を他人に伝えることがものすごく難しいからだと思います。ヴィクトルがユーリに「寺」だの「滝」だのという評価をしますが、うちの先生も「回るときの二の腕は水面を”スー”だから」とか「パッセで脚を上げる時は外腿を”ざーっ”と流して」とか「本を収納するように足をスッと5番ポジションに入れる」とか・・・挙げるとホントにきりがないですが、習い始めのころには「どないしたらええねん」となるような表現が多用されます(笑)でもいつかその「スー」とか「ざー」の感覚がなんとなくわかるようになるんですね。ヴィクトルに憧れてそのスケーティングを見つめ続けてきた勇利には共有できる感覚が多かったのかもしれませんし、何年か後にはユーリにもその言葉の感覚がピンとくるときが来るのだと思います。

0