それでは、アニメ『ユーリ!!!on ICE』の登場人物たちについて勝手に解釈して書いていきます(笑)
このアニメーションの主役である日本代表、勝生勇利(かつき・ゆうり)くん。
第1話で提供された基本情報は以下の通り
○大学を卒業したばかりの23歳(留年していた)
○11月29日生まれのA型
○日本スケート連盟のフィギュアスケート強化選手で、スケート練習の拠点をデトロイトに置いていた
○太りやすい体質だが特技はダイエット(アニメにちらりと登場する日本スケート連盟の公式プロフィール画面とおぼしきものより)
○身長は173センチ
○目が悪いので運動していないときはダサイめがねをかけている。
○好きな食べ物はかつ丼
○人づきあいはどちらかというと苦手で、恋愛経験はほとんどなし
○ネガティブ思考の持ち主
○自他ともに認めるヴィクトル・ニキフォロフマニア。ヴィクトルがジュニアの時代からそのスケートにあこがれ続け、ヴィクトルと同じ舞台に立つためにがんばってきた。
○しかし、せっかく同じ舞台(グランプリファイナル)に立てたのに、あこがれのヴィクトルの前で惨敗した姿を披露してしまった。
そんな状況におかれていたということです。大学の留年に関しては、成績の問題ではなくデトロイトでスケートをやっていたので、もしかしたら休学等で卒業が伸びていたのではないかと。その証拠にグランプリファイナル後に帰国して、ちゃんとすんなり卒業していますからなんらかの方法で必要な単位は修得できていたものと思われます。そういう面でも彼はすっごく努力家ですね。
それから、惨敗したとはいえグランプリファイナルに出場できたということは、日本国内でも実績があり、世界のトップ6に入る実力があるということ。第1話ではダメダメっぷりを発揮していますが、その前にグランプリシリーズで好成績を残すことができる実はすばらしいスケーターなのです。しかもアニメでチラっと映る日本スケート連盟のフィギュアスケート強化選手は、男子は彼一人だけしかいません。つまり国内では敵なしなのです。ではなぜ実力がありながら肝心なところで失敗していたかというと、大いなるネガティブ思考と自己否定によるところが大きかったようです。
12歳の時にその当時から大きな大会で活躍しまくっていた4歳年上のヴィクトルのスケートを見て以来、ずっとずっとその背中を追い続け、いろんなことを犠牲にしながら努力を積み重ねてきているのですが、目標がすばらしすぎると、その反面自分と比較して現実に幻滅してしまい「僕なんて・・・」という気持ちになってしまう。加えて国際大会に行けばみんなが自分よりすごく見えてしまうとか、自分を客観的に見ることも下手だったのかもしれませんね。そんなカンジなのでストレスを抱えると過食に走り体重がコントロールできなくなり(でも特技はダイエット;笑)、そのうえ可愛がっていたペット(ヴィクトルがマッカチンという名前のプードルを飼っていることを知って、自分も真似してヴィクトルと名付けて飼っていた。)がグランプリファイナル直前に死んでしまったことも重なって精神的に大きなダメージを受けたことが失敗につながった、ということのようです。
そんな彼が「神様」と崇めるヴィクトル・ニキフォロフに指導を受け、「子豚ちゃんから王子様に変身」(ニキフォロフ談)していくわけですが、その因果関係を私なりにひもといてみようと思います。
「恵まれた身体能力と惜しみない鍛錬」
アニメではデフォルメされているところもあるので、衣裳を着てリンクに上っている場面以外はちょっとぽちゃっとした感じで描かれていることが多い勇利ですが、世界のスケーターたちがうらやむほどの体力を持ち、第10話のエピソードのようにユーリ・プリセツキー、クリストフ・ジャコメッティそしてヴィクトルとのダンスバトルに勝てるほどの身体能力に恵まれているのです。細かいことはアニメのストーリーに語られていませんが、概ね大きなけがもしていないようなのでいい骨格と筋肉なのでしょうね。特に、第10話のエンディングでクリストフとポールダンス対決をしている画像がちらっと映りますが(笑)、クリストフを乗せたままポールに垂直の姿勢をキープできるほど強い体幹を持っています。また、バレエと同様上半身と下半身で別々の動きを行うためには、体幹が強くないとどちらかに振られてしまいます。そういった点でもスピンやステップで高得点がゲットできる勇利はよほど強い体幹を持っていることが裏付けれられます。実際に勇利の実家のある長谷津にロシアからユーリ・プリセツキーがやってきて、ヴィクトルの指導を受けるために基礎トレーニングとして腹筋をしている場面でも、体重の軽いユーリよりも速いタイミングで余裕で腹筋をしています。
また、身体能力に恵まれていたとしてもそれを磨かなければ宝の持ち腐れですが、勇利は練習が大好き。とくに黙々とコンパルソリー(エッジで氷の表面に図形を書く。以前はフィギュアスケートの種目の一つだった。)をしているシーンが何度も出てきますが、地味なこともコツコツとやれる努力を惜しまない点もすばらしいと思います。
「音楽を体で表現できる感性」
この感性が表現されているのは、温泉onICEでエロスを割り当てられた勇利がスケートリンクの中で西郡と話している場面の、「音楽を聴いたら場面が浮かんできたんだ。町一番の美女が・・・」と語る勇利ではないでしょうか。音楽を「音」として耳で聞いているか、それともその中に含まれている情報を「脳」でとらえてきいているのか。その差が大きいと思います。とくに「愛について」の2曲のうち勇利に割り当てられたエロスの方には歌詞がありません。クラシックバレエはほとんどが歌詞のない曲を踊りで説明する(背景や装置の力は借りますけど)のですが、踊り手がそのストーリーを理解していなければ感情や状況が見ている人に伝わりません。というわけで勇利は音楽の解釈にすぐれているからこそ、その表現にも独特の感性が発揮できるのではないかと思います。この部分は勇利が小さい時にミナコ先生のところでバレエを学んだことが大きく影響しているのかな。
「ガラスのハートと鋼鉄のプライドをあわせ持つ」
ヴィクトルが来てくれるまでの勇利はメンタルの弱さが大勝負での敗因と言われています。しかし、ヴィクトルがコーチになってからは逆境でも強さを発揮するようになります。それだけヴィクトルの存在が有利を強くしたと言えると思いますが、ユーリとヴィクトルが笑いながら話をしている様子を見て、家族に黙って家を飛び出した勇利を探して、スケートリンクにやってきたヴィクトルに「けっこうプライドは高いんだよね」と西郡夫妻が語っていた通り、自分のスケートには鋼鉄並みの誇りを持っている人だと思います。それから、ヴィクトルがそばに来てくれるまでは「僕は一人で滑っていく」と思っていたので、ものすごく孤独を感じていたのでしょう。彼の心の支えは自分の目標であるヴィクトル、そしてヴィっちゃん、家族、数少ない友達。心の支えに何かがあるとたちまちガラスのハートは砕け散ってしまいます。スケートに集中するあまり自分にファンがいるなんて思ってもいないし、向かい合っていたのは氷だけだったのかも。そんな視野が狭くなっていた勇利に、自分がロシアから勇利のそばに来て「一人で戦っているのではない」と気づかせてくれたヴィクトル。ヴィクトルはスケートの技術だけではなく、勇利のメンタルも磨いてくれて、周りを見ることを教えてくれた素晴らしいコーチだった、と解釈しています。前コーチのチャオチャオは勇利のことを「メンタルが弱い子」を前提にコーチしてきたのかな。たくさんの教え子がいると一人一人のメンタルにまでケアが行き届かないかもしれません。(音楽選びのくだりでそんな気がしました)
(9/27加筆)「客観性の欠如が致命的」
最初に記事を上げた時に書き忘れていたのですが、勇利自身は非常に視野が狭くて自分を客観的に見ることができない人でした。「どこにでもいる
フィギュアスケート特別強化選手」なんてありえないですし、自分が世界で戦っているということがその実力のあかしなのですが、ぜんぜんそんなふうに自分を見ることができていません。そこにヴィクトルの目線という「客観性」が加わり、視野が広くなりました。自分がヴィクトルを追いかけていたように自分を追いかけている南くんたちがいること、世界の選手たちも自分をライバルとして見てくれていること、デトロイトでは一人ぼっちだったけど長谷津に戻ったら子供のころから変わらずに見守ってくれている人がたくさんいることに。そして、何よりも神様のような存在だったヴィクトルが自分のスケートを認め、そして心身ともに支えてくれている。そんなたくさんのことが新しい力になりました。
身体能力も磨かれ、精神面も豊かになり、もとから持っていた音楽的感性が活かされ、それをフルに使える環境が与えられた勇利は、前年の不振がウソのようにスケートで才能を発揮し、そして自分を磨いてくれたヴィクトルやライバルたちと共にさらに選手を続けていくことを決めるのですね。
いやいや〜よくできたお話です!

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