■桜色BUMP シンメトリーの獣/著:在原竹広/絵:GUNPOM/電撃文庫
まず、表紙がいい。
あの、なんか変な恰好が非常によいです。
登場人物少なー。
主人公の桜子の性格がおもしろいですね。
まあ、おもしろくはないんだけど、物語の主人公としては異色だなーと思います。
どっちかというと、主人公側のメインのグループに1人いそうな感じです。
無口で、無愛想で、しゃべり方が男っぽい。
すべてが中くらい。
なのに、惹かれるのは、表紙の印象が大きいのではないかな、と思います。
まあ、逆にそういう性格なので、先が読めずにおもしろいんですけど。
ただの学園生活なんですけど、ある日ふと見えてしまった不思議屋というお店。
すべての元凶の元といいますか。
ついつい入ってしまった変なものばかり売ってる店。
またそこの店長が変な人だったりして。
なんというか、ミステリーものだったのですかね。
ジャンルがむつかししい物語です。
不思議屋でなにかを買った人がいて、その後で、恐ろしい事件が起きて。
不思議屋でなにかを買った人が微妙に変化して。
なにかすっきりしない。
たまたま、そこに居合わせただけの桜子だったのですが、たまたま買った人がクラスメートで、たまたま自分の席の1つ前に座っている人で。
という偶然があって、その人の微妙な変化に気がついてしまった。
別に被害にあったわけでもないし、探偵気取りでもないんだけど、「なにかすっきりしない」ので、考えてみたら・・・
という感じでしょうか。
主人公の性格がさばっとしているのが利いてますねえ。
なにか、わざとらしくないんですよね。
たまたま感がとてもよい。
また、いろいろと気にしてくれてるゴローくんという男子なんですが、利用するだけして、あとはほっとく・・・っていうのが素敵ですね。
女子に対しても同じような接し方をしていると、恐ろしいことになりそうですが。
まあ、男子みんなにではなく、幼馴染?かなんかで仲が良いゴローくんだからでしょうけどね。
ゴローくんは、桜子に気があるようですが、桜子はまったくなにもない感じもいいです。
実は最後のほう、ちょっとくらい気を持たせるかなーとか思ってたんですが、全くなかったですね。
徹底していて素敵です。
この物語は、冒頭から終盤にかけての、事件がなぞーな間がとてもおもしろいです。
なので、終盤の転結にリアリティとかすごいしかけとか、謎解きを楽しみたい方にとっては???かもしれません。
事件がなぞーな間、と書きましたが、正確にはそうでなくて、なぞーな間の文章の書き方、読ませ方がとてもおもしろいんです。
状況や行動の説明と、その人の気持ちを表す文章が入り混じってて、一連の流れを締めくくるところにはその人の2番目の気持ちが書いてあることが多いです。
まあ、感想ではうまく書けませんけどね、実際に普段自分たちもよく思うような、すごいリアルな流れの文章なんでよね。
終盤、あることをきっかけにして、打って変ったように桜子が行動派になっちゃいます。
たまたま居合わせた不思議屋での出来事とか思い出しながら、ゴロー利用するだけ利用して情報収集するところとか、事件の関係者に躊躇せずに会いに行くところとか。
ものおじしないというか、思いついたら周り関係なく行っちゃうところが、また前半の桜子とは違っておもしろいですね。
ということで、あらかた桜子が解き明かしたところで、すべての元凶となった不思議屋さんが再登場。
まあ、死んでないよなーとは思ってましたが。
彼は、人を刺したら危ないから包丁を売るのが悪いのか?的なことを言っていました。
うーん、それとこれをいっしょにするかーというところもありますが。
でも本質的にはいっしょなのかもしれません。
最後の最後で痛いところをついてきました。
どんなものでも使う人次第っていうのは当然で、やはり大事なことでしょう。
ただねえ、、、相手から話しかけてくるっていうのは、ちょっと。
包丁や自動車と決定的に違うところでもあります。
まあ、あの不思議屋さんは神様とかではなくて(自称仙人ですが)、ただおもしろがっているだけみたいですね。
そして人ありき、あるいは関係性ありきではなくって、ものはもの、のような。
なのでそういう発想になるんでしょう。
終盤まで、ずーっと文章がおもしろいなあと思って。
じわじわーっと事件を見せるだけ見せておいて、どうなるんだろう?っていう気持ちをためておいて。
一気に解決してあれっ?と思わせて。
最後に違った面で考えさせる、とは。
なかなかおもしろい物語でしたね。
(H20.7.14)

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