「25 Years of Nitipong Hornark : The Celebration Album " Left & Right "」

遅くなりました。
この国の代表的なヒット・ポップスを数々、書き上げて来ている、グラミーの最重要作曲家、“ディー”ニティポーン・ホナーク氏の業績を称える、セレブレーション・アルバム『Left & Right・The Celebration Album 25 ปี นิติพงษ์ ห่อนาค 』がリリースされています。CDは2枚セット。VCDは2枚(Left・Right)として。。このアルバム・リリースの前に、過去のヒット曲集と言えるモノがやはり2枚組2セット出ていますが、こちら『Left & Right』は全曲、新録音カヴァー曲集という形になっています。呼ばれた歌手は。。
Left・Sideにオーフ・ポンサック、ロース、ベル・スポン、アイス・サランユー、パナッダー、オーク・サニットの6人。
Right・Sideにボー・スニター、エム・アンタポン、パン(チ)、ヌン・カラ、パラポンの5人です。
まぁ、豪華というか素晴らしい出来栄えを魅せていますので、興味がある方は是非とも聞いて頂きたいようなモノとなっています。
ここでは全ての曲を拾い出して行くのもナンなので思いついたことを書いて行こうかと思います。丁度、『Simply Emotions』なる英語曲カヴァー集が並ぶようにリリースされていますので、それと比較したりして見ようかなと。。。『Simply Emotions』と重なる歌手はオーフとロースの2人だけですが
ホナーク氏のペンになる有名曲はバード・トンチャイを筆頭としてマイ・チャルンプラ、アッサニー&ワッサン、ミクロー、マーシャー、ナンティダー、エーム・サオラワック等々、数々ある訳ですが、いわゆるタイ・ポップスの模範となった様な曲ばかりですね。で、勿論全曲タイ語で書かれています。まぁ、なんと言いましょうか、タイ語と英語では随分その作り出す、歌の世界が違ってくるよなと思うわけです。もう、いかにもタイ・ポップスで御座いますと言う様な歌を聞かせる筆頭は。。ボー・スニターでしょう。チョッとしつこいんじゃと思う位の彼女一流の歌い廻しを魅せます。Right・Sideに入っている名曲『ルーム・パイ・マイ・ラック・ガン』と『コープ・ジャイ・ヂンヂン』。勿体ぶるかの様に溜めに溜めた歌い廻し、これテクニックなんでしょうが、ギミックとも取れます。ギミックは悪い事じゃないです。まぁ殆どの歌謡にはこれツキモノでしょう。タイ・ポップスらしさを如何に出すかというテクニック=ギミックが溢れ、かえっています。
もう一人、その手のテク=ギミが上手なのがパナッダー。ナット・ミリヤーがやった『オーム・ケァーン・ティー・ワーング・プラーオ』をオリジナルを凌ぐか?という程に迫っています。まぁ、この楽曲、そもそも素晴らしい出来ですのでパナッダーが歌えば結果は見えています。素晴らしい出来です。このパナッダーの様なタイ・ポップス謡の優等生にしても、タイ語の歌はとても難しいと言わんばかりの表情をまじかで見た事があります。あのタイ・ポップス独特の歌い廻しがとても難しいのよ!と言わんばかりの表情を、歌っている時の体の置き方に見せました。一言、一言をどう歌い廻すのかと苦悶しているようにも見えました。なんか傍で見ていて息苦しくなるかの様でしたよ。。。NJのNiewもあの『コン・ジャオ・ナムター』を歌っている時もそうでした。音程の高低もさることながら、どう歌い廻すかという辺りですね。しかし、そこん処が一番の聴き処でタイ語の持つ響きを一語一語、上手くメロディーの中にどう置いているのか。。ソコですね。
我々、聴衆は普通、録音されたモノを聞く事になる訳ですが、だから何回も取り直したものとか、場合によってはいい所だけを集めて切り貼りしたとかいうモノを聞いている事もあるでしょう。そういう上では最上の結果を聞いている事になります。普通はそこまでの結果と言うのは有り得ないと言う事もあるでしょう。だからこそ、生で歌うときは歌手は大変だと思います。大会場での聴衆も前にしてのライブとか、生放送の時のFM局で歌うとか。。。よく歌手が歌うときに胃の辺りに手を置いて歌う姿を見ますが、アレって歌い廻しに於いて自分が暴走しないように、音程を外さないようにと自分をコントロールしているかのようです。ここに居る歌手の中で男性歌手のオーフ・ポンサックなんかの生はいつも見ている側の者をハラハラさせるかの様な姿をよくみせます。胃の辺りに手を置いて。。。しかし、オーフも上手くなって来ていて、そのギリギリな歌い廻しの中にその魅力を爆発させるという、これはこれでイイモノを魅せています。余裕が有り過ぎるより、このオーフ位の方が、シッカリとシッカリと歌って100%を越す歌が出て来るという方がイイ結果を魅せる事もあるという一例でしょう。
よく、ベタなタイ・ポップスという言葉で、だからXと言う様な見識を見せる方が居ますが、私に言わせるとベタじゃないタイ・ポップスなんてタイ・ポップスの魅力をハナから捨てている様なモノだと思いますね。そして見所はそこから更に上記した様な部分だと言いたい。
さて、『Simply Emotions』で聞けるタイ人歌手に拠る英語曲は。。なんかどれも伸び伸びと歌っている様にも聞こえてきます。多分、既に膨大な模範となる録音が在るからなのか、それに当てはめて行けば良いと言う事なんでしょうか。。なんか言葉に対する責任の様なものから開放されているかのようでもあります。NJのJiewの歌にその実に伸び伸びとした歌唱が見えて、聞く者を掴んで来ます。一人、シーター(Zita)という娘、この娘はアメリカ人と呼んでも良いかのような印象ですが(否、先に出したソロ・アルバムでは実に上手いプレーン・タイを聞かせてくれますが。。)なんか、まんまという感じで上手いけど、スリルを感じないというか。。贅沢な事ですが。。さて、最後にロースですが。。彼女はやはり特別で、ワン&オンリーな歌世界の持ち主なので、タイ語曲も英語曲も私流を貫き通しています。件のアルバムではそれでもかなり普遍的なタイ・ポップス式なギミックをも出していますが、それでも余りタイ語に聞こえないというやり口は健在で、実にサバーイサバーイな歌い口をしています。アルバムは違いますが、この『Left』にも起用されている、コチラはタイ・ポップスのもう一人の申し子的な歌を聞かせるアイス・サランユーと歌った『Perhaps Love』でのアイスの丸出しの歌い口にサラッとロースの歌が乗っかる事によって絶妙なバランスを生んだあの歌が思い出されます。ロースは今後、どんな歌手に育って行くのか。。見ものではあります。
とまぁ、ホナーク氏のこのアルバムを私の切り口として書いて見ました。実際にはもっともっと深いモノがあるでしょう。それはまたどなたかにでも切り拡げてもらいましょうか。。。
アルバム内容詳細はコチラに。。

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