日本では、妊娠期間を十月十日(とつきとおか)と言いますが、外国だと「妊娠期間は9か月」が一般常識です。
今回のブログ記事は、なぜ日本では妊娠期間を十月十日というのか、天文の知識を元にその理由を解き明かします。
説明が少し長くなるのはご容赦ください。

沖縄県宮古島に在住するTさん6番目のお子さん、佑ちゃんです。2020年12月に出生。生まれて4日後の写真です。
赤ちゃんというだけあって赤いお顔ですね。十月十日(?)の間、お母さんのお腹の中でスクスク育ち、生まれました。
お母さんのTさんに承諾をいただき写真を掲載。承諾ありがとうございます。
佑ちゃんのお姉さんとお兄さんの5人はとっても元気。5人には望遠鏡を使った星空案内を2回ほど楽しんでもらいました。佑ちゃんがもう少し大きくなったら、佑ちゃんにも星を見て欲しいな。
さて、話を元に戻します。
現代の暦(太陽暦)で計算すると十月十日は
365.2425日÷12月×10月+10日=314日ほどになります。
日本では1872年12月(明治5年12月)まで、月の満ち欠けの周期を元にした旧暦(太陰太陽暦)を使っていました。
月の満ち欠けの平均周期(1朔望月)は29.53日ほどなので十月十日は
29.53日×10月+10日=305日ほどになります。
また、江戸時代までの日本は日常生活において「数え」という概念で妊娠の始めを1か月目としたようなのです。
数学的な言い方をすれば妊娠期間は10か月と10日間ではなく、妊娠の始まりをゼロから数える9か月と10日間が適切なはずです。
29.53日×(10月ー1月)+10日=276日ほどになります。
この276日という結果は、医学書に書かれている妊娠期間40週=280日とほぼ合いますし、外国の9か月ともほぼ合います。
なお、医学書では、1か月=7日×4週=28日を単位にカウントします。このカウント方法だと妊娠期間は10か月になりますね。
ところで、「数え」という旧暦の概念が、現在でも感じられることがあります。
◆事例1 「旧暦の日付」◆
旧暦では、「新月になった瞬間の日」を零日ではなく一日(ついたち)あるいは朔日(さくじつ)と表していました。月齢というのは、新月からの経過時間を日数単位で表示したものです。
新月になった日、つまり、月齢がゼロになった瞬間を含む日が旧暦の一日(ついたち)なのです。
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2019年3月8日(旧暦の二月二日)18時19分に撮影した月です。
新月は3月7日(旧暦の二月一日)1時04分なので月齢1.7ですが、旧暦の一日の翌日の月なので二日月(ふつかづき)といいます。
なお、二日月は日没後の明るい低空で短時間しか見られず、肉眼で見るのはかなり困難です。

これは、2012年1月25日18時09分に撮影した月です。慌てて撮影したためかピンボケ画像になってしまいました。
新月は1月23日16時39分なので月齢2.1の月です。月齢が2以上になると、肉眼で見つけやすくなります。
新月になった日の2日後の月なので、これが正真正銘の三日月(みかづき)です。撮影日の1月25日は旧暦の一月三日なのです。
旧暦が過去のものになり新暦を使うようになった現代では、もう少し太くなったお月様も含めて三日月と言う場合が多いようです。
日食のとき以外、新月の瞬間を肉眼で観察することは不可能です。古人(いにしえびと)は三日月を肉眼で確認し、2日遡った日を新月と推定したそうです。
新月の別名「朔」はこのことに由来していると国立天文台の暦Wikiの「いろいろな月」の項目に書いてありました。
◆事例2 「数え年」◆
現在でも仏教では「数え年」が使われることが多いようです。享年というのがそうですね。

我が家の墓石の裏には父や兄の享年(数え年)が刻まれています。
数え年の数え方は、例えば2020年12月に生まれた佑ちゃん(1枚目の写真の赤ちゃん)は生まれた時点で1歳。2021年1月1日で2歳と数えます。
元日に年齢を加算するのは、旧暦の閏月に生まれた人は何年か経過しないと誕生日を迎えられないことを避ける意味合いもあるようです。
現在は「年齢ニ関スル法律」に基づき数えることになっています。
生まれた日の年齢は0歳で、翌年の生まれた日の前日で1歳を加算することになっています。この加算方法で表したのが「満年齢」です。
小学校入学時の同級生の誕生日は4月2日〜翌年4月1日までの児童です。
その理由は、誕生日の前日に年齢を加算する「満年齢」の考え方によるもので、入学基準日が4月1日である以上、4月2日生まれの児童は前日の4月1日に6歳に達したとみなしますし、翌年4月1日生まれの児童は前日の3月31日に6歳に達したとみなすからです。