ツァイス製望遠鏡の造詣が深い安部賢一さんから、
【私が1986年に購入し3ヶ月で返品したツァイス製18cmマクストフカセグレン (Meniscas180)】 について、2015年2月16日に問い合わせのメールをいただきました。
安部さんから問い合わせがあったことから、購入時の資料で改めて確認したところ、私の記憶違いによる間違いがいくつかありましたので、訂正する意味からも、手元の資料を基に購入時の状況を少し詳しく書いてみます。
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ツァイス18cmメニスカスカセグレン鏡筒を返品する直前に撮影した画像です。
期待が大きかった分、落胆も大きくて冷たい顔をしています。28年前の私は若かった!
上の画像を撮影したのは1987年3月。購入の発端はそれからさらに7年ほど遡ります。
1980年4月の異動で、私の勤務先は札幌市青少年科学館建設準備室になりました。科学館がオープンする1年半前のことです。
科学館のプラネタリウムと60cm反射望遠鏡は、私が異動する前に納入業者が決定済みでした。ツァイス、ミノルタ、五藤光学による3社の指名競争入札が行われ、落札したのは五藤光学です。
ツァイスは応札価格がかなり高く、実際はミノルタと五藤光学2社の競いだったと聞いています。
プラネタリウムと望遠鏡は五藤光学に決定したものの、ツァイス社の窓口であった波木泰雄さんは、その後も技術的なアドバイスを篤志で続けておられました。
科学館建設準備室に私が着任後、波木さんと面識を得、その専門的知識と紳士的な行動に魅了されました。
科学館を退任後、高性能で評判が高かったツァイスの望遠鏡が欲しくなり、(株)エーピーの波木さんに相談したのは当然の成り行きでした。
時系列で当時のことを書いておきます。
1986.09.01 波木さんにMeniscas180鏡筒の購入を相談
1986.09.09 鏡筒は15%引きで1,672千円の見積
1986.12.14 Meniscas180鏡筒が札幌に到着
1986.12.23 札幌市南区の滝野観測所の赤道儀に同架
1986.12.28 Meniscas180の星像テスト。像が甘いことを確認
1987.01.04 波木さんに星像が甘いことを連絡
1987.02.04 代替品と交換することで了承
1987.02.10 星像の眼視スケッチを(株)エーピーにFAX送信
1987.03.07 Meniscas180鏡筒を(株)エーピーに返送
1987.03.23 波木さんが星像を確認。代替品は6月以降との連絡あり
1987.04.13 私の都合で代替品もキャンセル
1987.04.16 代金1,672千円が返金
時系列で書くとこのようになりますが、波木さんは実に誠実で親切なかたでした。
波木さんの話によれば、ツァイスの技術を信じ札幌へ出荷前に星像テストで光学性能を確認しなかったのはミスでしたと謝っておられました。
また、代替品についても早急に手配することになっていたのですが、諸般の事情で遅れるとの連絡があったため、購入自体をキャンセルしてしまったのは私の都合です。
このキャンセルについても波木さんは気持ちよく応じてくれました。唯一残念だったのは能力一杯の鋭い星像が見られなかったことです。
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上の画像は、1987年2月10日に波木さんへFAX送信したスケッチで、こいぬ座のプロキオンの焦点像と内外像を描いたものです。
明らかに鏡面が圧迫されています。運搬時に何らかのショックでもあったのでしょうか。
私が所有していたMeniscas180のシリアル番号は749xxです。(下2桁は伏字にしました)
このシリアル番号5桁を安部さんにお伝えしたところ、ツァイス18cmメニスカスカセグレンとしては初期型で販売台数が極めて少ないことが推察されるとのことです。
日本国内に輸入が確認された初期型は、福岡と札幌の2台だけだそうで、福岡のシリアル番号も749xx。私が所有していたものより3番だけ若い番号だそうです。
詳しくは安部さんのブログをご覧ください。興味深い記事が満載で、まるで推理小説を読むようです。
https://abe1998.blog.fc2.com/blog-date-201502.html
私が3か月間所有していたMeniscas180は、その後どうなったのでしょうか。
今回、貴重な情報をご教示いただいた安部賢一さんに感謝申し上げます。