2010/6/25

闇夜でも田植えをするの?  童謡唱歌こぼればなし
クリックすると元のサイズで表示します『夏は来ぬ』は、明治29年に刊行された教育唱歌講習会編『新編教育唱歌集・第五集』に掲載されました。当時の歌は、詩が先にできあがり、その詩に合わせて曲をつけるというのが普通でした。ところが「夏は来ぬ」は曲が先にでき、そのメロデーに合わせて詩が作られました。



                  夏は来ぬ
                                    作詞 佐佐木信綱
                                    作曲 小山作之助

             1.卯の花の 匂う垣根に
              時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
              忍音 もらす 夏は来ぬ

             2.さみだれの そそぐ山田に
              早乙女が 裳裾ぬらして
              玉苗植うる 夏は来ぬ

             3.橘の 薫るのきばの
              窓近く 蛍飛びかい
              おこたり諫(いさ)む 夏は来ぬ

             4.楝(おうち)ちる 川べの宿の
              門遠く 水鶏(くいな)声して
              夕月すずしき 夏は来ぬ

             5.五月闇(さつきやみ) 蛍とびかい
              水鶏鳴き 卯の花さきて
              早苗うえわたす 夏は来ぬ




 作曲した小山作之助から作詞を依頼された佐佐木信綱はメロデーに刻まれるリズムを生かしながら、『万葉集』や『栄華物語』『古今和歌集』などの古歌や古典の言葉を引用し巧みに織り込んで詩を完成させました。

 一番の“卯(う)の花”と“時鳥(ほととぎす)”の組み合わせは『万葉集』以来「夏が来る」ことの代名詞です。卯の花というのは空木(うつぎ)の通称で、五、六月にかけて五弁の白い花を咲かせます。“匂う”は色が美しく映えていること、また“忍音(しのびね)”はホトトギスの鳴き始めの声です。

卯の花 写真提供:生半可なつれづれ絵草子
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ほととぎす
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 二番には『栄華物語』から「さみだれの 裳裾ぬらして」が引用されていいます。三番は中国の故事「蛍雪の功」を踏まえたものです。四番の楝 (おうち)は、五月から六月に淡紫色の小花を咲かせるセンダンの別名で、万葉集や枕草子にも取りあげられている木です。このように夏の風物を四番までに散りばめられています。、五番はそれらの言葉を総集する形でまとめられています。

橘 (たちばな)
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クイナ
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楝 (おうち)
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五番の五月闇(さつきやみ)とは五月雨が降る頃の暗さを表し、昼間についても云うようです。しかし蛍が飛び交うのですから、夜の情景を表しているものと思われます。にもかかわらず『早苗植えわたす‥‥』となると、「蛍の飛び交う闇夜に田植えをしていたのかな?」と疑問を抱くのは私だけでしょうか?
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