2010/4/26

自然環境保護の願いが‥‥  童謡唱歌こぼればなし
『さくら』を調べていて、この歌の原曲とされる江戸時代の筝曲『さいた櫻』の歌詞が気になり、その内容を追ってみました。すると古代より自然が美しいとされる滋賀県や奈良県の風景が歌われていることがわかりました。また、この歌に自然環境の保護を願う心を感じとることが出来たのです。

     さいた櫻
   (江戸時代の筝曲)
  
   咲いた さくら
   花見て戻る 吉野はさくら 
   竜田はもみじ 唐崎の松
   ときわときわ 深緑


○吉野はさくら
 吉野山(よしのやま)は奈良県の中央部、吉野郡吉野町に位置する山で大峰信仰登山の根拠地であり、古くから花の名所として知られています。古来桜が多く、山裾から順に 下・中・上・奥の4箇所に約3万本の桜の原種である白山桜(シロヤマザクラ)が密集する名所である。いずれも「一目千本」と呼ばれ、おのおの下千本(しもせんぼん)、中千本(なかせんぼん)、上千本(かみせんぼん)、奥千本(おくせんぼん)と称えられています。

吉野山の桜
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○竜田はもみじ
 奈良県斑鳩を流れる竜田川は、古来紅葉の名所として知られ、多くの歌にも詠まれています。伝説では崇神天皇(記紀伝承の10代天皇)が川に流れていた八葉の楓葉を、五穀豊穣を祈願し生駒の竜田神社に献上されたとされています。
高貴な宮人達が歩いたこの辺りは、今ではよく整備された県立公園となり、朱塗りの堂山橋と紅葉橋が懸かり市民の憩いの場となっています。また、公園に含まれる三室山は小さい山ですが、春は桜が美しく、山頂には中古36歌仙の一人、能因法師の五輪塔があります。平安歌人在原業平は古今和歌集で『ちはやぶる神代もきかずたつたかはから紅に水くくるとは』と詠んでいます。

竜田川の紅葉
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○唐崎の松
 滋賀県大津市唐崎にある唐崎神社境内には宇志丸宿禰が植えたのに始まるとされる『唐崎の松』があります。『唐崎の松』は柿本人麻呂が唐崎を詠んだのを始め古人が多くの詩歌を残す名勝地として知られています。また境内から琵琶湖を背景に唐崎の松を描いた歌川(安藤)広重の『唐崎の夜雨』でも知られており、近江八景に選ばれています。

歌川(安藤)広重の『唐崎の夜雨』
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画像提供:大津市歴史博物館 (禁無断複製)



宇志丸宿禰が植えた初代の松は天正9年(1581年)に大風で倒れました。その後天正19年(1591年)に大津城主新庄駿河守直頼が植えた松は「唐崎の一ツ松」と呼ばれて全国に名を馳せた2代目が存在し、その松は1591年に大津城主新庄駿河守直頼が植えたものです。その松の大きさは東西に72m、南北に86mもの枝ぶりで、幹の太さ9m、高さ10mのとてつもない大樹であったと伝えられている。勇名をはせたその大樹も大正十年に枯倒、現在の松は二代目の実生木を移植して三代目として大切にうけ継がれています。

『唐崎の松』
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唐崎を詠んだ主な歌
 さざ波の志賀の唐崎さきくあれど大宮人の船まちかねつ 『万葉集--柿本人麻呂』
 よる波のいつつの色は緑なる松にも残るしがの唐崎 『新千載集--慈円』
 唐崎の松は扇の要にて漕ぎ行く船は墨絵なりけり 『古今集--紀貫之』
 唐崎の松は花より朧(おぼろ)にて 『野ざらし紀行--芭蕉』


○ときわときわ 深緑
 ときわ(常磐または常盤)とは元々、永久不変の岩をさす言葉でしたが、永久不変を意味する言葉として使われるようにりました。また、ときわ(常磐・常盤)は冬でも葉を落とすことのなく、緑色のままの常緑樹を指しているとも云われています。『ときわときわ 深緑』は永久に変わらぬ自然を願って結びとしたのではないかと思います。これは私の独断的な解釈で史実など何の根拠もありません。
 
 ※ 関連語:常磐木(ときわぎ)
        松や杉などのように、年中葉が緑色の木。常緑樹。

 奈良県橿(かしはら)市に常盤町と云う地名があります。その近くには万葉集にも詠まれている大和三山、『畝傍山(うねびやま)』・『耳成山(みみなしやま)』・『香具山(かぐやま)』がありますが、この常盤町も『ときわ』に関連しているのかも知れません。


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