帝劇のホリ裏(ホリゾント幕の裏・・・舞台の大奥にしつらえられた背景になる巨大な幕、
その裏は上手、下手へ移動できる通路がある)には、衣装早替え用の部屋があって、主に
女性が早替えA、そして男性は早替えBを使っています。
結婚式、そして舞踏会が終わってからデブレツィンまでの間に私はこの部屋でトート
閣下と一緒になります。椅子が隣同士なので色んな話をするのですが、ウッチー(内野
さんのこと・・・僕らはこう呼んでいます)とは、芝居の話とか体型(!?)の話をします。
稽古始めの時、私がかなり痩せていたので(まあ、大人だし、深酒とか、ラーメンの
ハシゴとかしなくなったもので・・・するな!)心配してくれてたようです。
「はるパパ、病気かなって思っちゃったよ・・・」
何しろ、初演の時より6〜7キロやせましたからね。最近、エネルギー補給のため
かなり食べているので少し顔がふっくらしてきました。
「そのほうがいいよ。おちゃめな感じじゃない、はるパパのキャラって。
芝居だって優しいもん」
「へ!?」
「なにやってもさ、優しさが芝居ににじみでるもん」
「あや、ややややや、てばなしの誉めようでんなぁ!」
なんてウッチーこそ優しく持ち上げてくれます。
「欲望という名の電車」のウッチーはワイルド感を出すためにやたらマッチョな体型
に作り上げていました。彼こそ日本のロバート・デニーロです。
もう一人のトート、佑さんはあのカリスマ性とは裏腹に普段はものすごく気さくで、
おちゃめで、楽しい人です。
どうしても、一時一緒にいた劇団四季時代の話になります。
「はじめて、佑さんのファントムをアトリエで見たとき、おれ、鳥肌たっちゃったよ!」
「や、パパ、やめてよ!」
なんて、やたら照れます。でも、お世辞でもなんでもなくて、ほんとに凄かった。
これが同じ人間か・・・なんて思っちゃったもん・・・
「だから、おれ、つくづくこの路線じゃないと思ったもんね」
「いや、パパはパパの路線で立派に確立してるし!」
なんて、これまた持ち上げてくれます。そして、私の母校のある四谷の
「とんかつ三金」、ここら辺で佑さんは子供時代をすごしたので、その話もよくします。
「いや、あそこキャベツと飯のおかわりできるのがいいよね!」
「そう!先ずキャベツだけでご飯三杯食べれちゃう!」
なんて盛り上がっていると、「そろそろ出番ですよ、着替えて」
なんて、衣装さんに怒られたりします。
そして、再び舞台へと向かうのです。この時は二人ともきりっと、あの黄泉の帝王
トートの目に戻っています。
二人とも、日本を代表する凄い役者ですけど、普段の顔はとてもおちゃめでかわいいの
です。観客席の向こうには虚構の壮大なドラマが流れているけれど、その裏にはこんな
たわいもない日常が潜んだりするんですよ。
PS
豆腐味噌漬けは、味噌をみりんでのばし、醤油少々、隠し味に赤ワインで4、5日
漬けるのです。豆腐はきちんと水を切ってください。しかしこれは副産物で、メインは
油ののったシャケです。ノルウェーサーモンの西京漬けなど至福の美味さですよ。
おためしあれ!

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