「恋のから騒ぎ」というテレビ番組がある。
明石家さんまさんが司会をして女性たちと恋愛のトークをする番組だ。
さんまさんの天才的なボケと突っ込みが面白く、折りにふれては良く見ている。
毎年、女性たちは総入れ替えし、その年一番面白かったり、ユニークだった女性にMVPが贈られる。
その初代MVPが島田律子という、勝ち気で、生意気で、ドライだが頭の良い女性だった。
そんな彼女の著書を、劇場へ行く途中の乗換え駅でたまたま見つけ、最初の数行を読んで、即座に私は購入した。
「私はもう逃げない」
かなりすごいタイトルだ。
これだけだったら私は手にも取らないだろう。
だが、副題がこれだったのだ。
「自閉症の弟から教えられたこと」
ベンの役造りを始めたとき、実は知覚障害でいくか自閉症でいくか、私は迷った経緯がある。
このふたつは似て非なるものである。
前者は文字通り知能に障害がある症状だが、後者は喜怒哀楽の感情表現に問題があり、人と交流することができない病気だ。
しかし、すぐれた記憶力とか瞬時の計算力など、並外れた能力を兼ね備えていることが多い。
島田律子さんの弟:力朗(りきお)くんがこの自閉症だったのである。
彼女は弟が生まれてからのほぼ三十年、両親と共に味わった苦悩、そして喜びをできるだけ感傷的にならないよう、冷静に書き留めている。
興味深かったのは力郎くんの発する言葉である。
実に三か所、ベンのセリフにそっくりなのだ!力郎くんがその言葉を発した状況をベンの環境、人物設定に当てはめてみた。
すると、まるでジグゾーパズルの最後の3ピースのようにピタリと当てはまる。
電車の中でほぼ半分を読み終えた私は、楽屋に入ってからも読みあさった。
そして、とある「実験」を思い当たったのである。
力郎くんの「症状」をベンに入れたらどうなるか…いや、この症状はすでに試みていた。だからより強くそれを打ち出してみたのだ。
すると…私の中にある強い感情が生まれてきた。
あきらかに前日までよりは増幅された感情である。
しかも、かなり腑に落ちている。
楽屋に戻っても自分がベンなのか役者治田なのか分らなくなったりしたほどだ。
だが、果たしてこれが演技的にどうなのかということである。
へたをすると「やり過ぎの演技」ただの「から騒ぎ」なのかもしれない。
今日、土曜の二回もこれでやってみようと思う。
昨日のマチネも含む三回、ご覧になった方、ぜひ感想をお聞かせください!
一日で読み終えた「ベンと力郎くん」


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