「オポポちゃんとサダ坊、そして、ミーちゃん(改訂版)」
稽古場情報
だったら、キッチンWがいいわよ!」
野良猫保護活動仲間Yさんが声高に言った。
彼女;我が民主猫党の党首でもある。
彼女は人間と猫の大連立を図り、常時30匹前後飼っている剛腕猫保護家で、「里親探し界の小沢一郎」と呼ばれる大物である。
幹事長の私が彼女に「レベッカ」とその役作りの話をすると、彼女の家の近くのレストランを紹介してくれた。
そこには知的障害者の子たちが常時働いているらしい。
「明るくって、とってもいい子たちよ!」
二週間前、宮崎から東京へ帰る日の朝、私は弟の車に乗せてもらい、「宮崎障害者雇用センター」に行った。
弟は「林林鉢(りんりんばち)」という丸太工芸家具を作っており、その磨きの工程をここに発注しているらしい。
http://dm15.cside.jp/~s15751-1/
「オポポちゃんていうとがおっちゃが。これが面白いやつやとよ!」
弟はニコニコ笑って教えてくれた。
車が施設に着くと、どこからともなくオポポちゃんは走ってきた。そう・・・オポポちゃん・・・
初めて会うのに、すぐに彼だと分かった。
オポポちゃんは満面の笑みを浮かべ、両手を挙げ、小走りで、私と弟を工場の奥へと案内する。
ドタドタ走ると木くずが舞う。ヒノキの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「おぽぽぽー!」
彼は歓声を上げた。
・・・これか・・・
名前の由来が分かった。
オポポちゃんは私に、綺麗に磨き上げられた丸太を見せる。
「これひとりで磨いたの!?」
私が聞くと、オポポちゃんは自慢げに叫んだ。
「おぽぽぽー!!!」
なんだかこっちまで幸せいっぱいだ。
丸太はつるつるに磨き上げられ、実に美しい。
「すっげえな、最高だよ、これ!!」
私が言うと、オポポちゃんは両手を上げ、再び歓声を上げた。
「おぽぽー!」
彼は胸を張り、満面の笑みを浮かべた。
サダ坊(仮名)は突然踊り始めた。
先ほど、私の食べ終わった食器を慎重に下げていた時とはまるで別人だ。
彼はどの食器からも決して目を放さなかった。
ひとつづつ、ゆっくり、丁寧に片付ける。
私はその動きをじっと観察していた。
お膳に乗せ終わったとき、一度だけギョロっと私を見た。
キッチンW、日替わりランチ;「フライド・サーモン照り焼きソース、サラダ添え、大豆とこんにゃくの煮物、味噌汁、手作りのお漬物、どんぶり飯」、これがなんと五百円!
実に美味くて、お腹もいっぱいだ!!
店員は全部で七人いたが、二人の責任者以外はみんな障害者だ。
しかし、仕事は丁寧で、愛想よく、なにより一生懸命だった。
ひとりの青年は私を気づかいながら、何度もお茶を入れてくれた。
ちょっと太目の男の子がレジの横で動いている。なんだか、ダンスのようだ・・・
「じょうずだねえ」
私が言うと、彼は表情を変えず、動きを大きくした。
あ・・・
これは・・・ヒップ・ホップだ!しかも、かなり上手い!!
ぽっちゃり体型なのに、動きがシャープで、しかも、ノリが実にいい。
「テレビとか見てて、一発で覚えちゃうんですよ!」
ご主人が言う。
「な、サダ、ただのデブじゃねえもんな!」
ご主人は嬉しそうだ。「サダ」と呼ばれたは構わずダンスを続ける。
「名前なんていうの?」
私が聞くと、少年はダンスをやめた。
そして、相変わらず無表情でなにか喋った。
ご主人が「通訳」してくれる。
そうか・・・サダ坊か・・・
サダ坊はまた踊り始めた。お世辞ではなくて、本当に上手い。
「マツケン・サンバとか、すごく好きなのよ」
今度は奥さんが解説してくれる。
すると、サダ坊はサンバ・ステップを踏み始めた。
ノリは相変わらずいい・・・だが・・・ちょっと違っている。
私はダンサーである・・・であった・・・昔。
サンバステップは脚を必ずクロスさせないといけない。
「あのさ・・・」
と、言いかけて、やめた。また今度、教えてあげればいい。
私は「今月の日替わりランチ・メニュー」をポケットに入れた。
「いや、美味しかった!また来るね!!」
私はサダ坊に言った。そして、手を振った。
サダ坊も大きく手を振った。
相変わらず無表情だが、なんだか、笑っているような気がした・・・
ミャー・・・
どこからか猫の声が!
声の方向を見ると、一匹の三毛猫が急いで走ってくる。
「あ、ミーちゃん!!」
「猫界の小沢」ことYさんが叫ぶ。
「ミーちゃん、お母さんの声がしたから、帰ってきたんでしゅね!!」
ミーちゃんを抱き上げる、小沢の顔にはもう「剛腕」の文字はない。
聞けば、一番最初に飼った猫らしい。
それなのに決して家には入らない、生粋の「外猫」なのだそうだ。
それにしても・・・
「お母さんの声がしたから・・・」!?
すごい。
さすが、民主猫党党首・・・ただもんじゃない。
声を聞かせたぐらいで、なかなか‘通りから猫を’呼び寄せられるもんじゃない。
党首に比べたら、わたしなどまだまだひよっこだ。
道で呼べるのはティッシュ配りの姉ちゃんぐらいだ。
だが、こうしていろんな人とつながっているから、いろんなことができる。
弟がいたからオポポちゃんに会えたし、党首がいたからサダ坊にも、外猫ミーちゃんにも会えた。
大事だね・・・横のつながりって。
「横はおらたちも大事にしてますだ!」
一番左は帽子じゃないよ!
明日はよいよ「レベッカ」締め切りです。
銀行振り込み、25日中に終わらせますよう、よろしくお願いします!

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