2006年5月27日、午後八時十分、日生劇場。
(カーテンコールの列から、治田、一歩前へ出る。大きな拍手に迎えてもらう)
また、私です。(ドッカーンと大爆笑)
また私ですが、本日はまだ、千秋楽ではございません。
皆様も良くご存知のように、この中の何人かが私達よりも一足先に・・・
家庭の事情で・・・(劇場が揺れる。拍手と笑いしばし止まず)・・・千秋楽を迎えられます。
で、在校生総代として、この私が卒業式をとり仕切ることになりました!(拍手鳴り止まず)
皆様には後ほど「蛍の光」を斉唱して(爆笑)いただくことになりますが、お付き合いの程よろしくお願いいたします。
それでは始めましょう。「エリザベート」、一足早いよ、ご卒業スペシャル!(嵐のような拍手と笑い)
(ドラムロール。「ありがとね!」と、オケピに手を振れば、大うけ)
さて、今から三年前、「エリザベート」はリニューアル工事に入りました。都内某所の稽古場へ参りますと、
「ああら、治田さん、わたし、覚えてます?」
と、一人の女性が近づいてくるではありませんか。
こんな時、村井国夫さんクラスだと、
「通り過ぎた女はいちいち覚えていねえぜ・・・」(大爆笑)
なんて、かっこよく言えるんでしょうが、私はすぐ思い出しました。
十五年ほど前、このカンパニーの森田浩平君なんかと一緒に「アニー」という作品で共演した女優さんだったのです。
「え!?あんたも出るの?」と、聞きますと、なんと彼女の息子さんが出るのだそうです。十数年の月日を経て、かつての共演者の子供と同じ舞台に立つわけです。
先日、私バオバブの苗を買いました。小さな鉢に植え替えましたところ、昨日葉っぱが芽吹きました。彼女が植えたミュージカルの苗も、すくすくとそだっているようです。
子ルドルフ;苫篠和馬!
和馬 「将来はルキー二かトートをやりたい・・・」
日生劇場は、この先に廊下があって、そこに神棚が祭ってあります。
先日、この方が、その前で手を合わせるわけでもなく、手をだらんとさげ、ぶつぶつと何かつぶやいております。ど、どないしたんやろ・・・と、思ってじっと見ておりますと、彼は神様に語りかけていたのです
「すまない・・・(場内かたずを呑んで聞き入る)・・・父を説得することができなかった」(劇場が揺れる)
神様も親切な方ですね、お稽古の相手をしてくれたんですから。
今年、菊田一夫演劇賞を受賞いたしました。
しゃにむに努力して、自分の力で役を勝ち得た栄冠です。
ルドルフ;浦井健治!
健治 「神棚に話しかけてる浦井です・・・」
舞台の上では、強く、厳しく、冷静で冷酷な方ですが、一歩舞台を離れますと、実にお茶目な方です。
私、猫を飼っておるのですが、その話を聞きつけますと、携帯電話を右手に持ち、どたどたどたっと走ってきて、「見て、はるパパ、見て!」と写真を見せてくれます。そこには、スコティッシュフォールドが、耳の折れたドラエモンみたいな猫なんですけど、それが二匹、写っておりました。一匹は黒っぽくて、もう一匹は茶色です。
「名前は?」と、聞きますと。「おはぎとキナコ」だそうです。(爆笑) そんな、お茶目なセンスが大好きです。
皇太后ゾフィー、寿ひずる!
ひずる 「初風さんの復帰が嬉しかった・・・」
私、この作品ではグリュンネ伯爵をやってますが、伯爵は非番の時、ブダペストのカテドラルで司教様のバイトをしております。(大爆笑。拍手鳴り止まず)
時々、劇場のお払いとかやったりするのですが、先日、戴冠式の仕事が入りました。で、この方に王冠をかぶせ、十字を切ってる時、目と目があい、しばし見つめあったのです。
その時の目が、お世辞でもなんでもなく、実にピュアな目をしているのです。(爆笑)なにがおかしいんですか?いや、私生活は知りませんよ!(爆笑)私生活がどんだけどろどろした目をしてるか知りませんけど(大爆笑)、本当にピュアな目だったのです。
で、ウイーンに戻りまして、私、この方にとんでもないことを言ってしまったのです。「陛下、バートイシュル行きのバスがお待ちいたしておりますが・・・」。
(劇場揺れる)そしたら、まあ、びっくりしたんでしょうねえ、「え、バス?」って目をしたんです。その目がピュアだったのです。(爆笑)
何日かして、同じく宮廷で、今度はこの方がこう聞いてきたのです。
「どう思う、グリュンネ将軍?」(大爆笑)
その目も、実にピュアでした・・・(ドッカーン!)
フランツ・ヨーゼフ;石川禅!
禅 「健治が神棚に話しかけるのは止めさせようと思っています・・・」
どんどん参りましょう。
昔、「ブラック・レイン」という映画がありました。マイケル・ダグラスとか高倉健さん、故松田優作さんが出ていたハリウッド映画です。
この中で、とある街並みを映し出すシーンがあって、見ていて「どこやろ・・・ロスかな、ニューヨークかな・・・と、思っておりますと、突然グリコのマークが映って、あ、大阪だ!と分かったんです。しかも、道頓堀でした。
へえ・・・あの大阪がこんな風に映るんかい、カメラが違ただけで、こない違うんや、これ、別の景色やで・・・
この方も我々に違う景色を見せてくれました。
トート閣下、武田真治!
真治・・・(とにかく、彼は話がうまい!場内大爆笑)
どうも、楽しいお話、ありがとうございました。
それでは、最後に、巣立っていく卒業生たちへ、校長先生から祝福の言葉を頂きたいと思います。
贈る言葉。一路真輝!
一路・・・(ありがとうございますのご挨拶)
ありがとうございました。一路校長でした!
卒業生の皆様、本当におめでとうございます。
校長先生のお言葉を胸に刻み、立派な社会人となってくださいね。(大爆笑)
さて、この「エリザベート」、明日までやっております。
やっておりますが、切符は一枚もありません。
大変な作品に出られたことを我々は誇りに思っております。
そして、そんな私達を支えてくださいましたお客様方に深く感謝いたします。
本日はどうも、ありがとうございました!
(割れんばかりの大拍手・・・!)
はるパパ・ワールド、ミュージカル「みにくいアヒルの子」!
作・演出・出演;治田敦
(チケット大好評発売中!!)
http://harupapa.net/info.html

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