ミュージカル「愛の唄を歌おう」。
このカンパニーは「異種格闘技」集団だ。
だから、それぞれ独特のスタイルを持ってて、ミュージカル畑の自分には「目からウロコ」みたいなことが頻繁に起きる。
例えば、ポップス歌手、元ケミストリーの川畑くん、彼は自分らの常識ではありえないところでブレスする。
「♪・・・かんじてしまう・・・」だったら、「か」と「ん」の間で息継ぎするのだ。
浅利先生の逆鱗に触れるようなブレスの位置だ。
でも、ものすごくいい。
物凄く説得力があって、ものすごく心に響く。
決して彼は「歌詞」をないがしろにしているわけじゃない。
「リズム、メロディ、歌詞を含めた曲全体」をとても大事にしてるって感じなのだ。
それさえ持っていれば、ブレスの位置など枝葉末節なのかもしれない。
まさに「ハートに来る」って歌い方、聞き惚れてしまう。
「どこで勉強したの?」
と、聞くと、彼はこう答えた。
「ぼく、譜面も読めないし、ただ、歌が大好きなんです!」
ね、目からウロコでしょ。
渡部豪ちゃんがある個所でとても歌いにくそうにしていた。
かれの声域ではチェンジの音だからだ。
ところがあるとき、上手に息を混ぜてこれぞソトヴォーチェって歌い方をした。私が3年かかったのに、彼はものの三日でやってのけたのだ。
歌唱指導のちあきさんに、
「どんな教え方したの?」
って聞くと、
「あの子ね、テクニック教えたら、かえって変になっちゃうの。‘芝居で’歌ってるのよ・・・」
そう言えば、豪ちゃんがちあきさんにこんなことを言ってた。
「あ・・・この言葉を大事にすればいいんだ!」
ね、目からウロコでしょ。
カンパニーによっては台詞を一言一句変えてはいけないところがある。
四季もそうだし、井上ひさしさんのこまつ座もそうらしい。
このカンパニーは‘外さない限り’全くOKだ。
むしろ、役者のアドリブがそのまま正式な台詞として台本に書かれたりする。
以前、藤田まことさんと共演した時、私が一生懸命台本を読んでたら、
「治田くん、何してんねん?」
て、聞かれたんで、
「何してるやおまへんがな、台詞覚えてまんねん」
と、こたえると、
「そんなもん、覚えんでよろし」
「へ!?」
「大体それらしきこと喋っとったらええねん」
「・・・」
ぐっさんとじゅんちゃんコンビがまさにこのスタイルだ。
毎回言葉尻は変わり、相手がボケると必ず突っ込む。
もう、アドリブの応酬、まるでやすきよ漫才みたい、面白いったらありゃしない。
これぞまさしく「息があってる」。
役全体をつかんでいるから「大体それらしきこと」で全然OKなのだ。だから、ここぞってところは観客の心をぐっとつかむ。
共演者の私が何度ほろっときたことか・・・
ね、目からウロコでしょ。
ゴージャスロビー、私のストレッチ場。
これぞウォームアップ!
ね、目からウロコでしょ?


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