稽古の合間をぬって直人を見舞ってきた。
喉の管を外したばかりだし、なにしろ1ヶ月以上寝てたから、声はスカスカ、体は不自由、足は痩せ細り、自力では勿論歩けない。
ペットボトルの水を飲むのも両手で支えて、やっとこさ。
でもねぇ、たかだか一時間ぐらいの滞在だったけど、その間にも目に見えて回復していってる。
喋る語気が強くなってきた。
一昨日、電話で話したときは八割方聞き取れなかったけど、昨日はほとんど聞き取れた。
さすが、元劇団四季と感心した。
倒れたときの状況を聞いたら、全く覚えてないそうで、まる一か月、夢見状態だったらしい。
意識が戻ってからもずっと目は見開いたままで、「ここから目が覚めた」って言う「境」が無いそう。
夢とうつつを行ったり来たり。
「はるパパ、あるんですよ、そういう不思議な世界が・・・つい、こないだまではるパパたちと、‘看護師さんたちと’、なんかすげえ古いミュージカルに一緒に出てたって、はっきり覚えてるんです・・・」
「おれ、二回脱走したっすよ!」
直人の喋りに拍車がかかる。
「最初寝てたとこは野獣病棟でね…」
そこは夜中に患者さんがギャー!とか、ワー!とか凄い声でわめくんだそうだ。
「おれ、頭がまだおかしいでしょ。このままじゃ殺されるって思って…」
二時間かかってベッドから起き上がり、
「でも、生まれたてのバンビみたいだから、もうふらふら…」
前につんのめってベッドから落ちたそうだ。
だから、これは未遂。
二度目は東京で震度4の地震があった日。
「ここにいたら危ないって、夜中の二時に急に思って、廊下まで脱走したっすよ・・・でも、三時間かかって、たった10メートル!」
看護士に見つかって、こっぴどく叱られたそうだ。
と、まあ、こんな具合で喋りっぱなし。
「おまえ、元気じゃねえか!」
と言えば、
「はるパパ、人と会わなきゃ、リハビリになんないすよ!」
カスカスの声は変わらないが、とにかく喋る。
なんだか嬉しくなって、
「おい、ビールでも飲みてぇなぁ!」
と、言えば、
「もう、大丈夫なんですけどねぇ・・・」
(んなわけねえだろ!)
長居したら体力使うと思い、
「じゃ、おれ、そろそろ・・」
と、言うと、
「また、遊びに来てくださいよ。治ったら、ホルモンおごりますから!」
と、その後も20分近く喋った。
みんなの優しさに心から感謝してるって言った。
ふと、見回せば、カーテンに囲まれたベッドと机だけの狭い空間・・・
後ろ髪ひかれたが、病室を後にした。
そんな訳で、皆さん、面会に行ってあげてください!
先生もその回復力にはびっくりしているそう。
俺がいる間も分刻みで回復していってた。
済生会中央病院(大江戸線赤羽橋駅より徒歩五分)
面会時間;平日15時〜20時、休日12時〜20時。
ナリちゃんていう、気のいいお兄ちゃん看護士が案内してくれるよ!
まだ固形物は食べれないので「お見舞い不要!」と、言っております。
ただ、「ヨーグルトとかゼリーなら・・・」なんて、ぬかしゃーがった。(笑)
4人部屋だから、みんな、くれぐれも舞台発声で喋らないように。
いくら、手すりがあるからって、廊下でバーレッスンしないように。
頼みますよ!
直人がしんみりおれの話を聞いている。
「おまえが倒れたって、最初に電話してきたのは渋ちんなんだよ。
あいつ、めちゃくちゃ心配しててさ・・・
でもね・・・あいつからだったんだよ、電話来たの・・
アトムが倒れたときも・・・
だから、おれ・・・ホントは思った・・・
・・・危ねえんじゃねえかって・・・
でもね、FBやブログで皆にお知らせするとき、おれ、こんなイメージ、頭に描いたのさ」
『こんな写真載せる日、絶対来る!』
だから、今日、載せるよ。
「目、覚ましたぜ!」


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