ほめ言葉も大切だけど、けなし言葉も大事だな…
長年私の舞台を観に来てくださるお客様、名古屋の社長が昨日、新幹線に乗っていらしてくれた。
自信を持ってご招待したんだけど・・・
ま、期待通りの感想は聞けなかったわけ。
それはそれ…謙虚に受け止めなくっちゃね。
浮かれ、誉められ、満足しちゃったら、先へは進めんから。
何か所か自覚症状あるから、今日本番前、チェックしなくちゃ!
終演後、劇場近くの中華料理屋で食事。
ここは共演者たちとも良く行くとこ。
美味くて、量があって、安い、言うことなしの店。
午後4時半、食事にはちと早いが、いっぱい汗を流した身体には問題なしのビールタイム。
まずは乾杯、冷たい麦汁が一気に喉を潤す。
矢継ぎ早に料理を注文。
突き出しの「もやしごま油和え」を放り込み、ばくばく咀嚼(そしゃく)・・・
ん・・・
名古屋の社長も、
「はるパパ、おれの口がおかしいんか?これ・・・」
塩辛い、それも半端なく。
お目当てのアボカド・マーボドーフもいつもと違う。
はっきり言って、まずい。
「料理人が変わったのかな・・・」
私が漏らすや否や、社長、大声でマスターを呼ぶ。
柔和な笑顔の中国人、Cさん。
「大将、これちょっと、食べてみ!」
もやしをCさんに渡す。
「金取って、こんなもん出すんか!?」
社長、とてもいい人なんだけど、とにかく喧嘩っ早い。
Cさんオロオロ、おれハラハラ。
「この食事目当てに、わざわざ名古屋から来たんだぞ!」
おれの舞台じゃないんだ・・・
「はるパパが美味いって言うから楽しみにしてたのに!」
そんなこと言われても・・・
「コックが変わったのか!?」
Cさんの説明によれば、5時までは別のコックが作り、Cさんはホール担当。
5時過ぎからCさんが厨房に入るんだそう。
道理で・・・おれらが来てたのはいつも6時過ぎ。
「あんたが作らなきゃダメだよ!!」
社長ったら、主張というよりシュプレヒコール。
まるでアルカイーダの過激リーダー。
Cさんがあわてて厨房に入る。
10分後、作り直した料理が運ばれてきた。
口にする。
あ・・・
「これ、あんたが作ったんか!?」
アルカイーダ、再び柔和な中国人を問い詰める。
Cさん、オロオロ、ドギマギ、泣きそうな顔。
「はい・・・」
消え入りそうな声。
それをかき消す大声で、
「うまい!どえりゃあ、うまいでいかんわ!!」
ほめ言葉も大切だけど、けなし言葉も大事だ…
あのまま黙ってたら、もう二度と客はCさんの店には行かないだろう。
確かに社長は過激だけれど、間違ったことは言ってない。
Cさんは「これ、サービスです」って、エビの甘酢あんかけを出してくれた。
黒酢が効いてて、本当においしい。
いつの間にか、アルカイーダはマザーテレサに変わっていた。
耳触りのいい言葉より、きつい言葉の方がうんと大事なんだね。
おれも謙虚に受け止めて、しっかり取り組まなきゃ。
社長も横浜に来たら、必ず、Cさんの店に行くだろう。
そういう人だ。
もちろん、五時以降だろうけど・・・
私の厨房。
今日も美味しい料理作んなきゃ!

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