二日ほど修道院に入り、身も心も神にゆだね、清らかな生活を送っておりましたら、風邪はすっかり治ってしまいました。
となると、生来、不謹慎、不摂生を絵に描いたような男です。たちどころに俗世に舞い戻ってしまいました。
昼間っからベランダでビールなど飲んでいます。
今年の二月、福岡で結婚式を挙げた姪のゆかちゃん夫婦が遊びに来たのです。
ガレット(そば粉のクレープ)を焼いてあげました。
焼いたソーセージを乗せ、ケチャップ、粒マスタード、モッツアレラチーズ、スライスした新たまねぎをトッピングして、包んで食べるのです。
大昔、フランスの片田舎アンジェで食べ、その素朴な美味さが忘れられず、時折、お客様が来ては作って食べさせています。
言ってみればフランスの餃子みたいなもんです。
そして、もう一品、ベランダで食べるとなれば定番、バーベキュー!ホットプレートで作れる簡単バーベキューレシピを伝授いたしましょう。
肉は豚のばら肉(しゃぶしゃぶ用の薄いやつ)、臭みを取るためにあらかじめレモン汁を振っておきます。
野菜は生で食べるのがミソ。
山のようなキャベツ、大葉、ミョウガ、カイワレ、玉葱を千切りにして混ぜ合わせ(とんかつの付け合せキャベツに香り野菜が混じってる感じです)、その上に焼いた豚ばら肉を乗せ、醤油をかけて野菜と一緒に食べる・・・これだけです。
野菜に肉汁と脂がジュウジュウ染みわたり、それを醤油がこれでもかと引き立ててくれます。
実にシンプルで、実に美味く、なおかつ野菜を大量に食べるので、とてもヘルシー、その上、きわめて安価なのです。
一緒に来たもう一人の姪(今年、HISに入社した)あゆみちゃん、それから、ピアニストの井福さんも大喜びでした。
ゆかちゃんは結婚式のDVDを持ってきてくれました。
私は披露宴で“This is the moment"を歌ったのです。
自分の歌を聞くのはとてもいやなものです。
アラばかりが耳に付き、ただ落ち込むばかりです。
去年の九月、ケアハウスでやった慰問コンサートのDVDには愕然と来ました。
あんなに一生懸命稽古したのに、びっくりするぐらい下手だったのです。
音程は不安定だし、ソフトボイスは貧弱で、本当にがっくりしました。
その翌月、知人のお嬢様の結婚式でも歌いました。
このDVDでは、多少の進歩は見られたものの、まだまだプロの域には達しません。
それから四ヵ月後、姪の結婚式ではどうだったのでしょうか・・・
緊張して私は画面に食い入りました。
シラフで見る勇気はないですから、ワインを随分と流し込み、周到に準備しておきます。
結果・・・
ずうずうしいのですが、あの・・・
悪くなかったです。
ケアハウス・コンサートから半年、随所に改善が見られました。
一番の収穫は課題のソフトボイスに進歩が見れたことです。
不得意だった中高音、そこにかなりの確率で音が届いています。
大いなる問題であった「音がフラット」・・・していません・・・そんなに・・・(苦笑)。
これは素直に喜びましょう。
ただ、問題もありました。
中低音が下がりきっていないのです。
「シャープ」してるってやつです。
「下」があるからこそ生きる「上」なのに、これでは全くダメです。
脂汗タラタラ、大いなる反省材料でした。
しかし、夫婦は毎朝のようにこのDVDを見ているそうです。
ゆかちゃんに至っては歌詞までしっかり覚えていました。
旦那のコージくんはこの歌を聞くたびに元気が出るそうです。
うーん・・・
ブタもおだてりゃ、木に登ります。
調子の乗った私は井福さんに頼んで、ふたりのために生演奏“This is the moment"をやってあげました。
ついでに、“Music of the night"も歌って、酔っ払いミニコンサートです。
二人は口をあんぐり開け、喜びました。
いい伯父様ですな。
(自分で言うな!)
ゆかちゃんの旦那、コージくん(理学療法士)は少し仕事を制限して、その時間を勉強に当てるのだそうです。
今のままでも立派な仕事をしているのですが、このまま過ごしていては頭打ちらしいのです。
もっと上へ行く為に、勉強しなおすといいます。
うーん・・・
立派です!
人間は向上心をなくしたらおしまいです。
現状に満足するのはとても簡単で、楽なことです。
かく言うわたしだって、いつも楽することばかり考えています。
しかし、「楽」あれば必ず「苦」は来るのです。
私なんか「苦」どころか「大苦」ばっかりなのに、この上、怠けたら「悶絶超大苦」であります。(なんのこっちゃ・・・)
去年、大苦の夏を乗り切ったから、神様がご褒美に昨日、極楽DVDを見せてくれました。
「極楽」って、ひょっとしたら「ご苦楽」なのかもしれません。
下の音があるから上の音が生きる。
「苦」があるからこそ「楽」がある。
人生はその大事なブレンドなのかもしれませんね。
明後日から、北千住で再び「ドラキュラ伝説」が始まります。
ちょうど一年前、同じ北千住で大苦した「ゲーム・オブ・ラブ」、あのリベンジを堂々と果たしましょう。
今日からまた虎の穴修道院に入り、念入りに準備します!
さあ、うんと“苦を楽しんで”、ご苦楽めざしましょう!
「うーん・・・」
「もういいっちーの!」
「チノの方がうまいっちーの!!」


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