四月、
一度フランス大使館に行ったが、書類不足との事で帰された。そのいきさつは次のようである。まずコピーが足りないとの事、写真も足りなかったが、普通に説明をしてくれればよいのだが、なにを聞いても無視するし、命令口調に言うのだ。
町の小さな郵便局ほどの広さで、種類の違うビザを受け付ける窓口が左右二つあり、わたしの受け付け窓口は向かって右である。並んで待っている間、他の人の様子を見ていたのだが、多くの人が怒鳴られてはもう一度書類を書き直したり、ぶつぶつと不満げに帰る人もいる。隣の受付の女性は聞いている限りでは親切そうである。しかしこちらの受付の女性ときたら態度が非常によくない。とりあえず私の順番が来たのでガラス張りの窓口の前に立つ。受付の女性が電話をしていたので、すぐ後ろのテーブルで書いている人の書類の書き方を見ていると突然窓口から大きな声で。
「何をしているのですか! ここに来て立っていなさい」と叱られた。子供じゃないのだからその言い方は無いだろう・・・・・・ と思った。
たしかに書類も揃ってなかったのではあるが、言い方が悔しい。
ぶっきらぼうに受付の女性は言った。
「ハイ 書類を出して! 」
私は書類の入った大きな封筒を窓口に出した。
「封筒は要らない! 」と怒鳴られる。次は書類に目を通しながら必要の無いものを窓口から投げ捨てるように「ハイ、ハイ」と投げ出していく。
「書類のコピーが足りないのでしたら、今すぐにコピーをとって来ます」と言ったら。「だめ! 十一時ごろに来ても受け付けませんよ、もっと早く来なさい、十時には来ていないと受け付けません、出直して来なさい」と、つめたく言われ少々悔しさがこみ上げてきたが、我慢して、「それでは月曜にまた来ます」と言って帰った。大使館まで来るのに、二時間はかかる、また出直しである。もう少し優しく言えないものかと思う・・・!
二日後
顔写真8枚とパスポート、その他の書類原本とコピー2部づつ多めに資料を作り持っていった。大使館に着き、まずは先日他の人が書き込んでいた用紙と同じものを手に取る。そこにはフランス語か英語で記入との事、文章全体がフランス語でかかれていた。少々戸惑いながら書類を見ていくとフランス語の下に小さく英語、所々日本語の訳が書かれている所もあったがフランス語だけの所が多い。事務所側としては簡単な単語なのであろうが、知らない者にとっては、わからないのも無理はない。
「職業や目的などフランス語でどう書けばいいのだろう?」一瞬考えてしまった。しかし、私はフランス語で書かれた資料をいろいろと持って来ていたので、それらを見ながら、どうにか書き込むことが出来た。私の隣で書いていた子連れの奥さんも困った様子で私に聞いてきた。私も分かる所は教えてあげたのだが、分からないところは他の人に聞いてあげたりしていた。すると、子ずれのお母さんが次のようなことを尋ねてきた。
「日本語で書いてはいけないのかしら」
私は首をかしげながら「さぁ、窓口で聞いて見ないと、どうなのでしょうね? 一応聞いて見ましょうか」私は先日と同じ窓口に行き、受け付けの女性に尋ねてみた。
「日本語で書き込んではだめなのでしょうか?」
「あなたフランスに行くのでしょ、フランス語で書けて当たり前でしょ、当然のことです」予想通りの冷たい返事であった。御もっともな事なんですけど、ハイ! と言った感じ。
その後、この用紙をフランス語で8枚書く事になる、それも裏表十六ページに及ぶ、大変である。先程の隣で書いていた奥さんはと言えば、子供も飽きてしまい、諦めて帰ってしまった。フランスに行くのも手続きが大変である。
私はと言えば、十時から十二時半までかかって、一応無事この日は済んだ。後は大使館からフランスに送り再び書類が日本に戻って来てからの事である。書類が戻って来たら電話連絡をしてくれるとの事。 本当かよ?

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