映画『ジョジョ・ラビット』  映画関係

[映画紹介]

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ヒトラーとナチスとユダヤ人の話は、
あふれるほどおびただしい作品が作られており、
一ジャンルと言ってもいいほどだが、
これは、そのジャンルに新しい光を当てる映画だ。

10歳のジョジョは念願かなって、
ヒトラーユーゲント
(ナチの青少年教化組織で、
後に法律によって国家の唯一の青少年団体となった。
10歳から18歳の青少年全員の加入が義務づけられた)
に参加することになった。
立派な兵士になるための、不安一杯の門出だったが、
ジョジョには想像上の心の友、
アドルフがいて、励ましてくれた。

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しかし、ヒトラーユーゲントの合宿で、
命令通りウサギを殺せなかったジョジョは、
「ジョジョ・ラビット」という
不名誉なあだ名をつけられてしまう。
その上、手榴弾の投擲訓練に失敗して大ケガを負う。

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ジョジョはケガが完治するまで奉仕活動を行うことになるが、
亡くなった姉のインゲの部屋の隠し扉の奥に
ユダヤ人の少女エルサが匿われているのを発見してしまう。
実は、母のロージーは
ナチスと戦争に反対する地下活動をしていたのだ。

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ユダヤ人は悪魔だと教えられて来たジョジョは
パニックに襲われるが、
エルサをリサーチして、
ユダヤ人を壊滅するための本を書くことになる。
聡明なエルサに接触して、
ジョジョは次第に彼女に惹かれていく。
と共に、ユダヤ人は角が生えているとか、
コウモリのようにぶら下がって寝るとかの、
ヒトラーユーゲントの教えが、
事実と異なることにも気づき始める。

戦争は末期を迎え、ジョジョの町にも
連合軍の攻撃が激しくなって来るが・・・

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全体主義の国家で、
人種偏見に満ちた教えを受けた
十代の少年の揺れ動く魂。
罪のないウサギを殺せないという、
ごく普通のやさしさが
嘲笑の対象となってしまうような環境で、
子供心が真実を見抜いていく。

あのチョビ髭男にどうして合理的なドイツ人が
惹かれていったのか不思議だが、
冒頭のナチスの映像にビートルズの曲がかぶさるなど、
一つの熱狂の仕業だと分かる。
麻原彰晃といい、金正恩といい、
傍目からは怪異の容貌の男に
時代が巻き込まれていく。

その象徴的人物を、
ジョジョが心の友としているのがミソ。
アドルフはジョジョ以外には見えない存在で、
ヒトラーそっくりの容貌をしている。
ジョジョを変な方向に導き、
問題が起こるとさっさと逃げ出してしまうような人だ。
エルサとの交流が増えると、
次第にアドルフの出現は少なくなって来る。
それは、国家に洗脳された少年だったジョジョが、
真実に目覚めていく過程だった。

賢い母ロージーは
そんなジョジョを暖かく見守る。
戦時下でも、おしゃれを楽しみ、ダンスを踊り、
豊かで人間らしい暮らしが戻ってくることを切に願う母親。
母子の交流のシーンは心温まる場面だ。
自由を獲得したジョジョとエルサが
何をするか。
見事な幕切れだ。

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脚色をし、監督をしたのが、
「マイティ・ソーバトルロイヤル」などのタイカ・ワイティティ
自らアドルフを演ずる。
ヒトラーにはチョビ髭以外は似ていない。
母親を演ずるのは、スカーレット・ヨハンソンで、
アカデミー賞の助演女優賞にノミネート。

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ユーゲントの教官にサム・ロックウェル。
親衛隊の追究をかわす、証明書の場面はなかなかの出来。
そして、ジョジョ役には、
何か月も続いていたオーディションを一瞬で終わらせたという、
ローマン・グリフィン・デイビス
ユダヤ人少女エルサには、
ニュージーランド出身の若手女優でトーマシン・マッケンジー

アカデミー賞では、
作品賞、助演女優賞、脚色賞、編集賞、美術賞、衣裳デザイン賞
6部門にノミネート。

このような映画が作品賞の一角を占めるという、
アカデミーの姿勢を評価したい。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/OtlizKP73YU

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映画『フォードvsフェラーリ』  映画関係

[映画紹介]

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1966年のル・マン24時間耐久レースにおける
フォードとフェラーリの対決を描く。
セリフ部分は創作だが、
事実関係は実話に基づく。

フォード・モーターを率いるヘンリー・フォード二世は、
経営危機に陥っていたイタリアの自動車メーカー、
フェラーリの買収に乗り出すが、
創業者のエンツォ・フェラーリに
土壇場で破談にされてしまう。
エンツォは交渉に当たった副社長に
「ヘンリーは所詮二世。偉大な祖父には遠く及ばない」
と言い放ち、
その言葉を報告されたヘンリー二世は激怒し、
社の総力をあげてル・マンで
フェラーリを打ち負かすことを決意する。

マシン開発の依頼を受けたのが、
キャロル・シェルビー。
1959年のル・マンの優勝者だが、
心臓病のためにドライバーから身を引き、
引退後は自らの理想のスポーツカーを作るために
シェルビー・アメリカンを設立し、
経営者兼カーデザイナーとして成功した人物。

シェルビーは開発を担当するテストドライバーとして、
ケン・マイルズに声をかける。
あるレースの現場でシェルビーはマイルズと会い、
マイルズからスパナを投げつけられるが、
レースを見て、シェルビーはマイルズの優秀さを認めていたのだ。

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イギリス人レーサーのマイルズは、
イギリス軍を除隊すると、家族とともにアメリカへ移住し、
自動車整備工場を経営しながらレースに参戦していた。
マイルズの偏屈な性格もあいまって経営は楽ではなく、
税金の滞納から整備工場を差し押さえられる始末だった。

「わずか90日で王者フェラーリを負かすマシンを作る」という
シェルビーの野心的プロジェクトに
マイルズは心を動かされ、
一旦は引退したレースの世界に戻ることになるが・・・

という実話に基づく話を
虚実ないまぜにして、人間ドラマとして展開する。
巨大組織のフォードゆえに
あちこちから横槍が入るだろうというマイルズの危惧は的中し、
見映えが悪いという理由で、マイルズは外され、
挑戦したレースでは、
フェラーリが5連覇を達成したのに対し、
フォードは全車リタイアという惨敗を喫してしまう。

フォード本社にヘンリー二世を訪れたシェルビーは、
敗因は、会長と現場の間に何十人もの人間が入り込んで
情報伝達を阻害し
様々な部署から横槍が入るフォードの体制だと直言し、
会長は本気でル・マンに勝つ気があるのかを迫る。
ヘンリー二世はそれに応え、
プロジェクトを自らの直轄として指揮系統をシンプルかつ明確にし、
再度シェルビーに仕事を任せる。

ル・マンへの再挑戦のために
シェルビーはマイルズの家を訪問し、
取っ組み合いの喧嘩の末、
再び共闘が再開される。

殴り合う二人を見物するため、
妻のマリーが家の前に椅子を出して眺める
このシーンは笑える。

もう一カ所笑えるのは、
ヘンリー二世をマシンに乗せて高速で走り、
あまりの速さにヘンリー二世が泣きだしてしまうところ。

その場面を観たい方は、↓をクリック。

https://youtu.be/WbMJGYJkPqI

再びマイルズを外そうという動きに対して、
実績で示し、
いよいよ1966年の
ル・マン24時間耐久レースがスタートする・・・。

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とにかく、描き方がていねい。
そしてレースの疾走感が半端ではない。

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実にリアルにレースを体感できる。

そして、巨大組織のフォードの体質に闘いを挑む
シェルビーとマイルズに感情移入している自分がいる。
更に、男同士の友情、夫婦愛、父子愛も十分織り込む。
まさに非の打ち所のない映画である。

監督はジェームズ・マンゴールド
シェルビーにはマット・デイモン
マイルズにはクリスチャン・ベールが務め、
共に好演。

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音響の良い映画館での鑑賞をお勧めする。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/uOvwe25iCP4

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映画『ダウントン・アビー』  映画関係

[映画紹介]

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                                        2010年から2015年まで放送され、大ヒットした
テレビシリーズの映画版
ドラマの最終回の数年後、
1927年のヨークシャーのカントリー・ハウス、
ダウントン・アビーを舞台に、
グランサム伯爵クローリー家とその使用人たちが織り成す
人間模様を描く。
ドラマ版に続いて、脚本をジュリアン・フェロウズ
監督をマイケル・エングラーが務める。

ジョージ5世とメアリー王妃が行幸途中、
ダウントンを訪問するという通知が舞い込む。
(この冒頭シーン、
バッキンガム宮殿から郵便列車に乗って、
ダウントン・アビーまで配達される過程は、
流れるような描写で描かれ、わくわくする。)
グランサム伯爵家の長女メアリーを先頭に、
使用人たちは名誉ある準備に取り組む。
しかし、国王夫妻来訪の前に下見に来た従者たちは、
使用人たちを見下し、
自分たちが一切の世話や給仕をやると告げる。
憤懣やるかたない家政婦長ヒューズや料理長パットモアらは、
主導権を取り戻そうと画策するが・・・

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という話を軸に、
様々な人間のそれぞれの事情が物語を織りなす。

先代伯爵夫人バイオレットの従妹で、
今は王妃の女官を務めるモード・バグショーは、
自分の遺産をメイドに譲ろうとして、
バイオレットと一騎討ちをする。

メアリーは、難事を前に、
引退していた元執事のカーソンに助けを求め、
現執事のバローは反発する。

チェトウッド少佐がダウントン村に現れ、
国王のパレードの時、命を狙うが、
伯爵の三女の夫トム・ブランソンによって阻止される。
トムはレディ・バグショーのメイドのルーシー・スミスと知り合い、
恋に落ちる。
また、トムは庭で悲しむメアリー王女を見かけ、
身分を知らずに助言を与える。

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伯爵の次女イーディスと夫で侯爵のバーティーに対して、
国王は皇太子のアフリカ訪問同行を求め、
妊娠したイーディスは困惑する。

侍女アンナは王室使用人のロートンが盗みを働くのを目撃し、
脅迫してイーディスのために衣装を修繕させる。
ボイラーが故障し、修理人が料理人助手のデイジーに
色目を使ったことを気に入らない下僕のアンディは、
修理されたボイラーを再び意図的に壊してしまう。
デイジーはアンディを愛していることを確認し、
結婚を考え始める。

使用人たちの作戦は成功し、
王室の従者たちを排除して、
代わりにダウントンの使用人たちが料理を作り、
国王夫妻を給仕する。

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バローと王室付エリスはヨークに行き、
パブで待っていたバローは男に誘われて同性愛者のクラブに行く。
だが警察が取り締まりに来てバローら客を逮捕する。
エリスが王室使用人の身分を利用してバローを釈放させ、
自分も同性愛者であることを漏らし、二人は絆を結ぶ。

メアリー王女はトムの助言のおかげで夫との関係が修復できたと
両親に伝え、国王はトムに感謝する。
王妃は国王を説得してバーティーをアフリカ訪問旅行から外してもらう。

バイオレットは、ロンドンで診察を受けた結果、
自分の寿命が長くないことを孫のメアリーに伝え、
メアリーならダウントンの伝統を守れると話す。
経費の高騰から縮小を考えていたメアリーは考えを改める。

などという話が、
群像劇として描かれるが、
よく整理されており、
分かりやすい。

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人物の描き方も良好。
ただ、テレビシリーズを観ていない者は、
なかなか人物関係がわからず苦労する。
冒頭、簡単な人物紹介があるが、
一度では頭に入らないので、
人物が登場するたびに
字幕で紹介した方が親切というものだろう。
まあ、それでも頭に残らないかもしれないが。

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マギー・スミス
きら星のごとくイギリスの俳優たちが登場し、
素晴らしい演技を披露する。
演劇の歴史に裏打ちされた
英国俳優の実力と層の厚さは恐るべし。

英国階級社会の貴族たちの生活ぶりが興味深い。
社交と爵位の継承と遺産相続にしか関心のない人々。
現代の価値観からは異論もあろうが、
一つの時代の文化として、刮目するだけの価値はある。
成熟した文化は美しい

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/zLCPlHJkS84

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映画『家族を想うとき』  映画関係

[映画紹介]

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前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」
2016年カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、
一度は引退を表明したケン・ローチ監督
しかし、社会の底辺で生きる人々の現実を見るにつけ、
撮らなければならない使命感に駆り立てられ、
引退表明を撤回しての最新作。

舞台はイギリスのニューカッスル。
ターナー家の父リッキーは宅配ドライバーとして独立。

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しかし、雇用関係ではなく、
フランチャイズという個人事業者。
そのために介護福祉士をしている
妻のアビーが必要とする車を売り、
1000ポンドの手付けで配送車を手に入れる。
2年も働けば、
車の代金も返済し、
賃貸の家から抜け出せるはずだった。

しかし、個人事業主とは名ばかりで、
ノルマと会社の規則がリッキーを追い詰めていく。
次々と押し寄せて来る荷物に
1日14時間の労働を強いられ、
宅配先では理不尽な扱いを受ける。

車を失ったアビーはバスで訪問先を訪ね、
そのため、時間の調整がつかず、
時間外労働にのめりこんでいく。

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アビーは介護する先で、
「母親に対するように接する」実に誠実で優秀な介護士だった。
しかし、その誠実さがあだになり、
自然、高校生の長男セブと
小学生の娘のライザとの接触時間が減り、
家に帰っても寝るばかり。
ライザは情緒不安定になる。
家族を幸せにするための仕事が家族との時間を奪っていく
それもこれも家族を想ってのことだったが、
親の心子知らずで、
セブは反抗期で非行に走り、
学内暴力や万引き事件を引き起こしてしまう。
そのための家族面談に行くことも出来ず、
仕事を休めば、罰金が待っている。
1週間の休みを求めても認められず、
せめて5日、3日と食い下がるが、応じてはもらえない。

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宅配業者の過酷な労働環境は、
日本でもよく知られている。
飲食店店長の労働条件も厳しい。
コンビニオーナーの苦境も報じられている。
抵抗しようにも、出来上がったシステムの中で
もがいてもはじき出されるだけだ。

そして、リッキーはある事件に巻き込まれてしまう。
怪我をして病院で診察を待つ中、
会社に電話すると、
代替要員と機器の弁償を求められる。
温厚なアビーがついに切れて乱暴な言葉を吐き、
病院の待合室中の人に聞かれてしまい。
「わたしは介護する立場なのに、
人を罵してしまった」と
すぐに後悔する場面は切ない。

最後のくだりは、
それでも働かなければならないリッキーの状況に
胸がえぐられる。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」でも、
貧しい失業者に目を向けたケン・ローチ監督だが、
今回は更に厳しい現実に目を向ける。
ダニエル・ブレイクは妻を亡くした独身の失業者だったが、
今回は子どもを育てる父母の話だ。
家族のために働くことが
どうして家族の不幸を招き寄せてしまうのか


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万引き事件を起こしたセブを
警官がさとす場面が胸を打つ。
そうなのだ。
その状況から抜け出すには、
セブが学校で勉強し、
いい学校に進み、
良い就職をするしかない。
今を大切にするのが一番だ。
ところがセブにはそれが分からない。
自分のふがいなさに歯噛みするリッキーの姿。

「働けどはたらけどなお、わがくらし楽にならざり」。
しかも、ますます物事が悪い方へ悪い方へ転がっていく。

映画は安易な解決方法など提示せずに終るが、
その現状を打破するには、どうしたらいいかは、
観客の心に委ねられている。

富の公平分配は、
世界の課題だろう。
でも、誰がそれをする。
苦しむ庶民の味方はどこにいる。

オーディションで選ばれた俳優もみな素晴らしく、
一瞬も眠くならず、画面に釘付け。
83歳の監督の演出力は衰えを知らない

原題の「SORRY WE MISSED YOU 」は、
不在配達票に書かれた文句。

5段階評価の「5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/76_GaE1L7LU

今の時代に必要な立派な映画だが、
映画を見て、辛い思いをしたくない人は、
観なくていいです。
(いつも言うことで、すみません)

ヒューマントラストシネマ有楽町他で公開中。


ケン・ローチ監督の他の作品の紹介ブログは、↓をクリック。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」

「ジミー、野を駆ける伝説」

「麦の穂をゆらす風」

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映画『2人のローマ教皇』  映画関係

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「2人の教皇」とは、
第265代ローマ教皇のベネディクト16世
(ドイツ人のヨーゼフ・アロイス・ラッツィンガー。在位2005〜2013)と、

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第266代ローマ教皇のフランシスコ
(アルゼンチン人のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。在位2013〜現在)のこと。

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ちなみに、ベネディクト16世は、
ローマカトリックで598年ぶりの生前退位した方。
(自らの意思で辞任したのは719年ぶり)
その後を継いだのがフランシスコだ。

2012年、
カトリック教会の方針に納得できないベルゴリオ枢機卿は、
ベネディクト教皇に辞任の意思を伝えるためにローマを訪れる。
当時、カトリックは資金洗浄疑惑
聖職者の性的虐待問題で揺れていた。
二人は保守派と改革派で、
同性愛・堕胎・避妊等に対して保守的見解を示す教皇と、
時代に適応しないカトリック教会の旧い体質に
改革を起こすべきだとする枢機卿。
正反対の二人は、
教皇の別荘であるガンドルフォ城で数日を過ごし、
時間を共有する中で理解を深めていく。

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この時、ベネディクトは85歳、ベルゴリオは75歳。
つまり、老人二人の対話がほとんどを占め、
その間にベルゴリオの回想がはさまる。

ある契機で神の道を歩み始めたベルゴリオには、
アルゼンチンの独裁軍政時代に
軍部に妥協して、仲間を失った罪意識がへばりついている。
礼拝中に出席者から非難されたりもする。

また、ベネディクトは聖職者の性的虐待問題で
適切に対応できなかったという後悔が自分を責めている。

老齢のベネディクトは「神の声が聞こえなくなった」と嘆き、
ベルゴリオは「いつも聞こえるわけではない」と応じる。
聖職者には、常に信仰の危機が発生し、
それを乗り越えるのは、祈りしかない。
更に聖職者にも老残の哀しみが迫り、
深い孤独も襲って来る。
しかし、それでも、信者12億の
世界的組織の頂点に立つ者として、
くじけた姿を見せるわけにはいかない。

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二人の対話劇は、
風雲を含みながらもユーモラスに展開。
次第に二人の心が解きほぐれていき、
その果てに、システィーナ礼拝堂の
ミケランジェロの壁画の下の部屋「涙の部屋」で告解しあい、
許しを与え合う場面では、涙がこぼれた。

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教皇は神ではなく、
一人の罪人であるという当たり前の事実だが、
深い人間性に基づく、
愛と赦しの物語に心打たれた。

非公開のコンクラーベ(教皇選挙)の様子が
再現されているところも瞠目した。

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システィーナ礼拝堂の内部も詳細に再現されている。
まさかヴァチカンがロケ地に提供したはずはないので、
これは実物大のセットが組まれたに違いない。

監督は「シティ・オブ・ゴッド」(2002)のフェルナンド・メイレレス
ベルゴリオはジョナサン・プライス

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ベネディクトはアンソニー・ホプキンスが演じ、

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それぞれゴールデングローブ賞の主演男優賞と助演男優賞にノミネート。
素晴らしく調和の取れた演技合戦をする。
脚本はアンソニー・マクカーテンとフランク&コットレル=ボイスで、
ゴールデングローブ賞脚本賞にノミネート。

イギリス、イタリア、アメリカ、アルゼンチン合作。
実在の、しかも現在生きている人物を素材にする勇気に感服する。

2019年11月27日にアメリカで限定公開され、
12月20日にNetflix で配信開始。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/WJHFnRljkaA

アップリンク吉祥寺他で上映中。

フランシスコを扱った映画「ローマ法王になる日まで」(2015)のブログは、↓をクリック。

「ローマ法王になる日まで」

このブログには、
フランシスコに関する挿話が詳しく書かれているので、
興味のある方は、読んでもらいたい。

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