映画『シカゴ7裁判』  映画関係

[映画紹介]

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1960年代末の
ベトナム戦争を巡る暴動事件の裁判を描く作品。
このような現代史を扱う作品を好む
スティーヴン・スピルバーグが監督を引き受ける予定だったが、降板、
その後、ポール・グリーングラスやベン・スティラーの名前が挙がるも、
結局、「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー脚色賞を受賞、
「マネーボール」や「モリーズ・ゲーム」でもノミネートされた
脚本家として実績のあるアーロン・ソーキンが監督した。(脚本も)

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1968年8月28日、
シカゴで民主党の全国大会が開かれており、
大統領選の候補者たちが
ベトナム戦争にどう対処すべきかという問題を議論していた。
同じ時、会場近くのグランド・パークでは、
ベトナム戦争に反対する活動家・市民1万5千人がデモのために集結し、
一部の参加者が民主党大会の会場に押しかけようとして警官隊と衝突。

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双方合わせて数百名の負傷者を出し、
暴動を扇動した容疑で告訴されたデモ参加者7人は
シカゴ・セブンと呼ばれるようになった。

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本作はこの裁判の様子を見事に活写する。
強権的な裁判長、自由奔放な被告たちの不規則発言、
何度も法廷侮辱罪が適用され、
中には、さるぐつわを噛まされる被告まで現れる。
被告側に立つとみなされる陪審員には脅迫がされ、
陪審員は隔離、長期の裁判に耐えることになる。
若手の検事は元々被告たちに同情的で、
どうしても言葉の端々にそれが現れる。
また、温厚な弁護士は被告たちを擁護し、
しばしば法的侮辱罪に問われる。
当初8人だった被告団の一人が
分離裁判になる過程もていねいに描かれる。
そして、裁判の終盤、
発言を許された被告が取った行動は・・・

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実に面白い。
深刻な内容なのに、
ユーモアもあり、
エンタテインメントとして成立している。
登場人物が生き生きと描かれており、
2時間があっという間に過ぎる。
これは、脚本と監督の成果であると共に、
俳優たちの功績でもある。
なにしろ、顔ぶれがすごい。

サシャ・バロン・コーエン(ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞)、
エディ・レッドメイン(アカデミー賞主演男優賞受賞)、
フランク・ランジェラ(トニー賞主演男優賞受賞)、
マーク・ライランス(アカデミー賞助演男優賞受賞)、
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世
ジョン・キャロル・リンチ
ジョセフ・ゴードン=レヴィット
ジェレミー・ストロング
果てはマイケル・キートン(ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞)まで登場する。

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本来9月25日に公開する予定だったが、
新型コロナウイルスの流行が一向に収束しない事態を
重く見たパラマウントは
本作の劇場公開を断念し、
5600万ドルでNetflixに配信権を売却。
(制作費は3500万ドル)
従って、Netflixオリジナル作品ではない。
10月16日にNetflixで配信開始
先立って10月9日に少数の劇場で公開。
アップリンク吉祥寺他で上映中。

評判は高く、来年のアカデミー賞の旋風になる可能性大。
少なくとも、作品賞や監督賞、編集賞や脚本賞、主演男優賞、助演男優賞
のノミネートは堅いだろう。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/FDCjq44keS0


映画『61年目の約束』  映画関係

[映画紹介]

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死期の迫る老女が、
孫に「航海に出た夫がなぜ帰ってこなかったのか、
今どこにいるのか、
死んだのか、墓はどこにあるのか、
調べてほしい」
と頼む。

戦争前のマラツカの漁村。
漁師だったオトマンと村娘のトムが恋に落ちる。

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日本軍による連行、
嵐の中の出航と、
二度の別れも、夫は帰ってきた。

しかし、三度目の別れは、帰って来なかった。
オトマンは、貨物船の船員となって金を稼ぎ、
妻に贅沢をさせたいと、村を後にしたが、
便りは絵はがきだけで、帰ってこない。

トムはハガキの差し出し地の香港に探しに出かける。
しかし、小さい村しか知らず、
すぐに見つかると思っていたトムには、
香港は大きすぎた。
失意の中、オトマンの親友に手紙を託すが、
それも届いたのかどうか分からない。

そして、物語は、オトマンの軌跡に。
船員をして、差別に遇いながらも、
金を稼いでいたオトマン。
しかし、乗っていた船が沈没して、
一文無しになってしまう。

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親友のつてでオトマンを訪ねて来た息子に事情を話すが、
しかし、実は隠された理由がオトマンの胸の中にはあった。

祖母に願いを託された孫はイギリスを訪ね、
リバプールで、オトマンの消息を知るが・・・

61年間の歳月の後、
愛し合う夫婦は再会できるのだろうか・・・

という話が、
叙情的な風景と共に語られる。
息を飲むような、漁村や島の素晴らしい景色が情緒豊かに描かれる。
監督の腕は確かだ。

ただ、いくらなんでも、
望郷の念はないのか、
妻に、息子に会いたくないのか。

最後の最後に、
オトマンが帰らなかった理由が明らかになるのだが、
誤解以上に、
オトマンとトムの中にある頑なさが生んだ不幸だと思う。
イギリスまで来た息子に
妻の近況を訪ねれば済んだ話なのに。
また、息子が率直に母親に真実を告げれば、
誤解は解けたのに。

疑問はわいても、実話という重みにはかなわない。
最後に、実在の夫婦の写真とその後が映し出される。
交通も不便、通信もない時代、
こういう悲劇は沢山転がっていたに違いない。

昔、商人は妻子を置いて旅に出た。
夫の帰りを待つ妻子の想いはどうだったろうか。
また、船乗りの帰りを待つ妻の気持ち。
いや、日本にだって、
出稼ぎに出て帰って来ない夫を待つ妻の話は沢山あった。
今のような電話やネットで連絡を取り合う時代とは違うのだ。

そういうはるか昔に、
世界のあらゆるところで展開された愛の物語。

2018年のNetflixオリジナル作品。
監督は、マレーシアの映画界で数多くの作品を手がける
インド出身のカビール・バティタ
センスがいいから、
いつか必ず世界的作品を生むだろう。

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ドラマ『弔辞はいかが?』  映画関係

[映画紹介]

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Netflixで9月17日から配信したドイツ製コメディ。

カーラは、
25年間の結婚生活の末、
歯医者の夫が脳動脈の破裂で死んでしまい、
途方に暮れる。

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死後判明したのは、
夫は2年間もクリニックを休み無収入で、
借りた秘密のアトリエで趣味の絵を描いていたという事実だった。

財産のないカーラは家族を養うために、
葬儀屋で働こうと考える。
というのは、カーラが夫の葬儀でしたスピーチで、
葬儀屋から葬式の語り手になったらいいとおだてられたからだ。

カーラの家族は、
自殺願望のある祖母、
恋愛で揺れ動く娘、
夜尿症でセラピストに恋する息子など、
問題が多い。

その上、雇ってくれた葬儀社は、
倒産目前で、妻との関係も破綻している。

カーラは、夫のアトリエで過ごすうち、
夫の幻影と会話をし始める・・・

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という、
頻繁に葬式と死体が出て来る、
かなりブラックな内容。
盛り沢山だが、
そのどれもが中途半端で、
話はうまく転がらない。

というわけで、作品そのものは、お勧めではないが、
ドイツの葬式事情が興味深いので紹介。

日本でも、地域によって葬式のやり方は違い、
田舎の葬式に出ると、
びっくりさせられることも多いが、
このドラマで見られるドイツの葬式のやり方も日本とはまるで違う。

遺体はまず葬儀社に運ばれ、
そこで全裸にされ、死化粧をほどこされる。
ひげは剃られ、髪も整えられ、
傷があったりすると、修復される。

そして、葬式の前に火葬場へ。
火葬場では親族は立ち会わず、
機械的に焼却される。
従って、お骨を拾うという、
日本独特の風景を見ることは出来ない。
葬式では、既に骨壺に入った状態で、
参列者は死者の顔を拝むことは出来ない。

葬式は「語り手」というのが進行役をする。
この「語り手」、事前に遺族と打ち合わせし、
葬式の趣向を決める。
そして、葬儀を仕切り、
哲学的なスピーチをする。
葬式の後は、教会の裏の墓地に
参列者立ち会いのもとに埋葬される。

遺体の尊厳などなく、
まるで「物質」扱い。
合理的なドイツ人だからそうなのか、
日本が異常なのか。

そういえば、公開中の「フェアウェル」という
中国人一家を扱った映画で、
墓場の光景が出て来たが、
みんな同じ規格の墓標。
そして、「泣き女」が登場する。
韓国でもそうだが、
死者のために、
大声をあげて泣くことが供養だと考えているらしい。
日本のように、
悲しみに耐える遺族、というのとは、ちょっと違う。
「フェアウェル」の中で、
「西洋では、死は個人のものだが、
東洋では、死は家族、一族全体のものだ」
というセリフがあったが、
なるほど、と思わせるものがあった。

作品の質としてはお勧めではないが、
もし、ドイツの葬式に興味ある方は、
「弔辞はいかが?」をご覧下さい。

6話で計3時間59分


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映画『ある画家の数奇な運命』  映画関係

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物語は3つに分かれる。
まず、1937年、ナチス時代のドイツの優生保護の話。
ドレスデン郊外に住むクルトは、
美しい叔母エリザベトと一緒に美術館に行くが、

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現代美術を頽廃芸術と決めつけられ、傷つく。
叔母は理解を示し、クルトを励ます。
そのエリザベトは、
遺伝による精神病と診断されて強制的に入院させられ、
劣化遺伝子の根絶のために断種手術をほどこされたばかりでなく、
ガス室で安楽死させられる。
その決定をしたのは、病院長のゼーバントだった。
ゼーバントは、ソ連高官の娘の難産を助けたために、
高官の庇護を受け、戦犯の訴追をまぬがれる。

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2つ目は、成人したクルトの美術学校での日々。
服飾科の学生で、エリザベトと面影が似ているエリーと恋に落ちる。
そのエリーの父こそ、
エリザベトを処刑に向かわせた張本人のゼーバントだったが、
クルトはそんなことは知らない。
エリーは妊娠するが、
クルトの父親が敗残者だったことを知ったゼーバントによって、
嘘の診断をされ、妊娠中絶させられてしまう。
ゼーバントの中には、優生思想は生き続けていたのだ。
クルトは、東ドイツの社会主義リアリズムの絵ばかり
描かされるのに嫌気がさし、
ベルリンの壁が建てられる直前に、
エリーと共に西側に脱出、
デュッセルドルフで美術大学に入学する。

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ここからが第3部。
クルトの芸術活動。
既に「絵画は死んだ」と言われている中、
キャンバスに固執するクルトは、
写真を拡大して描く技法が注目を浴びる。
その絵を見たゼーバントは驚愕する。
なぜなら、その絵こそ、
死んだエリザベトとゼーバントの因縁を描いた作品だった・・・

実在のドイツの芸術家である
ゲルハルト・リヒター(88歳)がモデルであるという。

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彼が東西ベルリンが分断される直前に西側に移住したのは事実。
写真から絵を起こす手法も、リヒターの技法を踏襲している。
リヒターは生存する芸術家の作品として、
最も高い価格がつく人。
映画化の条件は、人物の名前は変えて、
何が事実か事実でないかは、分からなくすること。
だから、映画のどこまでが本当で、
どこからが創作なのかは誰にも分からない。

監督・脚本はフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
あの傑作「善き人のためのソナタ」(2006)で、
アカデミー賞外国語映画賞を取った監督だ。
本作でも、2018年度の
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。
クルトをトム・シリング
ゼーバントをセバスチャン・コッホが演ずる。

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戦前のナチス時代の優生主義の犠牲になった女性のあわれさに
胸がしめつけられる。
その犯罪の張本人のゼーバントを
知らぬうちに義父にしてしまったクルト。
その過去の事実がいつ判明するのかと思ったら、
なるほど、と思わせる展開。
復讐物語ではないが、
ゼーバントへの復讐が、無意識のクルトによって、
芸術をもって行われるのは、素晴らしい趣向だ。
また、エリーが子どもを生むことで、
父親への復讐も果たされている。

3時間8分の長い作品だが、
緊迫感が途絶えることなく、
退屈せずに見れた。

ラストで、
美しい叔母がした行為を
クルトが再現する。
なかなかのラストシーンである。

「ある画家の数奇な運命」は日本でつけた題名で、
ドイツ語原題は「Werk ohne Autor」 (著者なしの作品)
英題は「Never Look Away 」(決して目を逸らさないで)。
映画の中でエリザベトがクルトに言う言葉である。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/6ZOMMMG2fEU

TOHOシネマズシャンテで上映中。

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映画『ミッドナイト・スワン』  映画関係

[映画紹介]

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新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ
トランスジェンダーの凪沙(なぎさ) は、

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育児放棄された親戚の少女・中学生の一果(いちか)を預かる。
預かることを迷惑事と思っている凪沙は、
一果が学校で問題を起こしても、自分は行かない、
と無責任な態度を取り、
「子どもが嫌いだ」とも言い放つ。

一果は、場末のバレエスクールを見つけ、
秘かにアルバイトをしながらそこで練習に励むが、
バレエの教師は、一果の才能を見出していた。

バレエスクールの友達に連れられたアルバイト先で
問題を起こしたため、
バレエスクールのことは凪沙にばれるが、
一果の夢に触れた凪沙は、
仕事を増やしてでも一果を応援しようとする。

そうしている間に、凪沙と一果の間に
何とも言えない絆が生まれるのだった・・・

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と、粗筋を書くと、
何だかファンタジーな話のように見えるが、
描写は現実的で陰鬱
ショーパブや美少女撮影会や性倒錯クラブなど
あまり描かれない業態の描写もリアルだ。

そうした目を背けたくなるような現実の中、
社会の影の部分に追いやられてきた凪沙と
実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果の
二人の想いが次第に深まっていく様が胸を打つ。

やがて、コンテストを通じて、
実の母親の強さを見せつけられた凪沙は、
タイに渡り、性転換手術を受ける。
それは、一果の母親になりたいという願望の表われだったが、
一果の実家を訪ねた凪沙は親族から拒絶される。

そして、中学卒業という契機で、
一果が自由になれる日が来るが・・・

こうした暗い現実を突き抜ける、
一果の夢であるバレエシーンが美しい。

特に、コンテストの踊りが、
足の故障でバレエをあきらめざるを得なかった親友のりんの
親戚の結婚式での踊りと重なるシーンは、
はっとさせられる。
夢をあきらめた人と、夢に向かって進む人の対比。
優れた演出だ。
その場面の最後のあの展開は、
どうやって撮影したのだろうか。

凪沙を演ずる草なぎ剛

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一果を演ずる新人・服部樹咲の演技が

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画面に厚みを加える。
草なぎ剛の面相は、
こういうトランスジェンダーがいたら不気味だろうな、
という風体で、哀れを誘う。
最後は普通の就職をしようとし、
肉体労働まで始める凪沙を演ずる草なぎは
役と同化し、なかなかの演技力を見せる。
バレエ教師役の真飛聖がいい。

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他に水川あさみ田口トモロヲ

ここで気づいたが、
稲垣吾郎の「半世界」
香取慎吾の「凪待ち」
そして、草なぎ剛の本作と、
ことごとくキノフィルムズの作品。
元SMAPメンバーのこの三人は、
まだCM以外、テレビでは不遇だが、
この若者たちの才能を生かそうとする
キノフィルムズの姿勢は評価していい。

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ただ、描写不足の部分もある。
りんの足が故障する場面は必要だし、
コンテストで客席から母親が現れる下りは意味不明。
更に、海岸に出かけた一果が凪沙を置いて、
入水自殺を思わせる行動を取るのも?がつく。

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題名は、凪沙がショーパブで踊る「白鳥の湖」、
一果がコンテストで踊る「オデット姫」の踊りに繋がる、
いい題名だ。

脚本・監督は内田英治
今年の日本映画の収穫の一つ。

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/qFWyZt8xG78

TOHOシネマズ日比谷他で上映中。


タグ: 映画




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