映画『ある人質』  映画関係

[映画紹介]

クリックすると元のサイズで表示します
                                       
ISの人質となった青年を
救出するために奔走した家族の実話。
原作は「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」↓。

クリックすると元のサイズで表示します

体操選手だったダニエル・リュー24歳は、
競技中に負傷して選手生命を絶たれたため、
写真家になることを決意。
戦場カメラマンの助手として訪れたソマリアでの経験から、
戦争の中の日常を記録したいと希望し、
そのための撮影旅行先として選んだのは、
内戦の続くシリアだった。

クリックすると元のサイズで表示します

トルコとの国境付近の町アザズで
許可証をもらって撮影中、
ダニエルは突然、ISの男たちに拘束され、
戦火のアレッポへ移送される。
拷問されたダニエルは、
高い窓から飛び下りて逃げたものの
住民に通報され、連れ戻されてしまう。
ISはダニエルを資金調達のための誘拐ビジネスに利用しようとしていた。

クリックすると元のサイズで表示します

ダニエルが予定の便で帰国しなかったため、
家族は、人質救出の専門家、アートゥアに依頼。
捜索を始めたアートゥアは誘拐犯を突き止め、接触、
要求された身代金は70万ドルだった。
(当時のレートで約7000万円)
テロリストと交渉しない方針のデンマーク政府から
支援を断られたため、家族が全額用意するしかなかった。

ダニエルはさらにラッカへ移送され、
様々な国のジャーナリストや支援活動家と合流する。
ダニエルはアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーと
意気投合する。
ジェームズはユーモアを忘れず、人質仲間を気遣い、
「ヤツらの憎悪に負けたくない。僕の心にあるのは愛だけだ」
と語る。

クリックすると元のサイズで表示します

家族は犯人側から送られてきたダニエルの写真を見て、
変わり果てた姿に衝撃を受けた。
借金をしても、25万ドルしか用意できなかった家族は、
やむなくその金額を提示した。
すると犯人側は「侮辱された」と激怒し、
身代金を200万ユーロ(2億円以上)に引き上げてきた。
200万ユーロを用意するため、
姉アニタの提案で、家族は募金活動を開始。
違法すれすれのところで活動を続けるが・・・

内戦地域への旅行は危険を伴い、
当然「自己責任」が問われる。
ダニエルはまだ報道写真家としては新米であり、
その点、甘かったと言わざるを得ない。
映画の中でも、
「彼は無鉄砲で無知な、ただの若者だ」
というセリフがある。

しかし、家族の身になってみれば、
そんなことは言っていられない。
血を分けた息子、弟のことだ
何をしてでも救出したいと思うだろう。

ダニエルたちがあのオレンジ色の囚人服に着替えさせられ、
射殺された仲間の遺体のそばで
「48時間以内に200万ユーロを払え」
というメッセージ板を持たせられる場面は残酷だ。

クリックすると元のサイズで表示します

世界には、どうしようもない悪意が存在する。
そして、無償の愛も存在する。
その体現者が家族たちだ。
この映画は、「悪意」と「愛」の闘いとも言うことができる。

一緒にいる人質たちの心境も様々で、
公式には「テロリストとは交渉しない」と言いながらも、
裏取引で無事解放される者もいる。
その瞬間ほど、「国」というものを意識する時はあるまい。
残念ながら、デンマーク政府は交渉に応じない。
残された家族の道は、
人々の善意に頼ることだけだ。
「国」ではなく、「国民」を信頼するしかない。
その問題提起は、重く、鋭い。

チラシの副題に「生還までの398日」とあるので、
ネタばれにはならないと思うが、
結果としてダニエルは解放される。
その拘束時間は2013年5月から翌2014年6月までの398日。
何と長い恐怖体験だったか。
最後に、ジェームスから託された記憶に留めた伝言を
アメリカの家族に伝える。
涙なしには見られない。
そして、シリアの内戦が早く収束し、
難民問題も解決するように祈らざるをえない。

監督は「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のニールス・アルデン・オプレヴ
全編みなぎる緊張感と臨場感で、
この監督の演出力のすごさを見せつける。
ダニエルはエスベン・スメドが演ずる。

クリックすると元のサイズで表示します

終始リアルな恐怖の演技に胸をつかまされる。
交渉役アートゥアを演ずるアナス・W・ベアテルセンは、
若い頃のブルース・ウィリスに似た風貌でカッコいい。
本作では共同監督も務める。

デンマークのアカデミー賞であるロバート賞で、
観客賞・脚色賞・主演男優賞・助演女優賞の4冠に輝いた。

ISの人質を初めて本格的に描いた映画として、
胸に迫る映画だった。

必見。

5段階評価の「4.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/yXhnNsyQzhQ

角川シネマ有楽町他で上映中。

タグ: 映画

ゴールデン・グローブ賞/テレビ部門  映画関係

第78回ゴールデン ・グローブ賞授賞式
2月28日にロサンゼルスにて開催された。
(日本時間は3月1日)

「ザ・クラウン」「クイーンズ・ギャンビット」が複数の賞に輝き、
Netflixの強さが証明された授賞式だった。

クリックすると元のサイズで表示します

「ザ・クラウン」は、
英国王室の人間関係を
生々しく実名でドラマ化したもので、
日本では、まず不可能な作品。
脚本、演出、俳優の演技は申し分なく、
イギリスの演劇界の層の厚さを感じさせてくれる。

「ザ・クラウン」は4シーズン目で、
チャールズ皇太子とダイアナ妃の下り。

ドラマ部門の作品賞
女優賞(エマ・コリン=ダイアナ役)

クリックすると元のサイズで表示します

男優賞(ジョシュ・オコナー=チャールズ皇太子役)

クリックすると元のサイズで表示します

助演女優賞(ジリアン・アンダーソン=サッチャー首相役)

クリックすると元のサイズで表示します

を獲得。

クリックすると元のサイズで表示します

「クイーンズ・ギャンビット」は、
ミニシリーズ/テレビムービー部門の作品賞
主演女優賞(アニャ・テイラー=ジョイ)を獲得。

クリックすると元のサイズで表示します

「ザ・クラウン シーズン4」の予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/R7iz69eI-2A

「クイーンズ・ギャンビット」の予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/EC5EqT70Cgg

このブログでも、
「ザ・クラウン(シーズン1)」と
「クイーンズ・ギャンビット」を紹介していた。

読みたい方は、それぞれ↓をクリック。

「ザ・クラウン(シーズン1)」

「クイーンズ・ギャンビット」

特に「ザ・クラウン」は、
私の生涯で観たテレビドラマの中で最高の作品だ。


映画『めぐみへの誓い』  映画関係

[映画紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

北朝鮮の日本人拉致問題を扱った映画。
2006年に「めぐみ 引き裂かれた家族の30年」という映画があったが、

クリックすると元のサイズで表示します

それはドキュメンタリーで、外人が監督、
今度の作品は日本人監督が撮った劇映画。
横田めぐみさんや田口八重子さんらが
拉致後、北朝鮮でどんなひどい扱いを受けたかを詳細に描写する。
つまり、創作だが、
帰国した拉致被害者らから取材した戯曲が元。

クリックすると元のサイズで表示します

新潟の海岸近くで拉致されためぐみさんは、
漁船に乗せられ北朝鮮へ向かうが、
気を失ったままのため、海に捨てられそうになる。
すんでのところで目覚めためぐみさんは船倉に押し込められ、
壁をかきむしって、爪がはがれてしまう。
「お母さん、お母さん、助けて」という
13歳の少女の叫びが悲しい。

クリックすると元のサイズで表示します

北に連れていかれためぐみさんは、
「朝鮮語を習得したら、帰してあげる」という嘘に騙され、
朝鮮語を必死になって学習する。
数年後、指導者の前に立って、
金日成と金正日を讃える言葉を
朝鮮語で言わされる。
その口調は、以前記録映画で見たことのある
北朝鮮の少女の、媚びたような、甘えるような言い方だ。
しかし、約束は守られず、心を病んだめぐみさんは
病院に収容されてしまう。

これらの描写は、拉致被害者の家族会の方は正視できないだろう。
自由を奪われ、家族を奪われ、人生の全てを奪われて、
独裁者の道具となっていく姿。

田口八重子さんは、子どもを二人残して拉致され、
あの大韓航空機爆破事件の金賢姫の教育係になる。
日本の習慣を教えられる金賢姫の戸惑いがおかしい。
「日本に帰りたい、東京の町を歩きたい、
クリスマスを過ごしたい、除夜の鐘を聞きたい」
という田口さんの言葉に「除夜の鐘って何ですか」と訊く金。
田口さんの嘆きは、
何でもない日常の中にある幸せが
人にとってどれほど大切か
を伺わせる。
その、小さな幸福を奪った北朝鮮の所業は許せない。

並行して、横田滋さん、早紀江さんを中心とする
家族会の活動も描く。

クリックすると元のサイズで表示します

しかし、最初の頃は「朝鮮人差別」だと罵倒されたりもする。
なぜか日本人は朝鮮のことになると、目が曇ってしまう。
外務省は「国交のない国だから」と動こうとしない。
旧社会党の議員たちは、拉致そのものを認めようとしなかった。
朝鮮総連も反発した。

2002年、小泉訪朝で金正日が拉致を認めた。
旧社会党の議員たち、朝鮮総連は反省も謝罪もしなかった。
5名が帰国し、拉致の事実が日本国民に明らかにされたが、
残りの人は死亡したとされ、
2004年にはめぐみさんのものというニセの「遺骨」が送られて来た。

それでも、家族会の人たちは生存を信じ、世の中に訴え続けた。
しかし、高齢の父母たちは一人二人と亡くなっていき、
横田滋さんも半年前に老衰のため87歳で亡くなった。
早紀江さんは、今、85歳。
生存を信じ、再会を待っている。

クリックすると元のサイズで表示します

めぐみさんが拉致されたのは、1977年。
もう43年がたち、めぐみさんは56歳になった。
小泉訪朝で道が開けるかと思ったが、
もう18年たつが、一歩も動かない。
政府認定の拉致被害者は17名だが、
日本の警察が「北朝鮮に拉致された可能性がある」と
公表している数は約882名。
こんなに沢山の人が、
悪質な国家犯罪の犠牲者になったのだ。

とにかく相手が悪い。
理論も理屈も誠意も全く通じない相手なのだ。
ヤクザでさえ、人の情、親子の情は理解する。
ヤクザ以下が北朝鮮という国(の指導者)だ。
その北に融和的態度を取って尻尾を降っている
韓国の文政権。
同根だと分かる所業だ。
こういうことを言うと、すぐ「差別だ」と言うが、
北と南は同じ民族であることを忘れてはならない。

前にも書いたが、
拉致問題は
その人の人間性を見るリトマス試験紙のようなところがある。
この問題に怒らないような人は、
心のどこかで正義感がマヒしているような気がする。

いずれにせよ、拉致問題は今に続く、現在進行形の事柄だ。
中国、韓国、北朝鮮のことになると、
なぜか腰が引けてしまう人々が多い中、
監督の野伏翔をはじめ
この犯罪に、真っ正面から斬り込んだ、
制作陣の勇気に感動する。
今まで誰も作ったことのない貴重な映画だ。

しかし、全国での映画館は少ない。
今日現在でわずか9館
3月になって少し拡大するが、
最大でも22館しかやらない。

東京では池袋の1館限り。
1日2回しか上映しない。
ガラガラだったらどうしよう、
と心配しつつ向かったが、
一つ置きとはいえ、ほぼ満席だったので安心した。

エンドクレジットで、
おびただしい人の名前が続く。
みな、クラウドファンディングで協力した人たちだという。
寄付の見返りは、チケットとかでなく、
このクレジットでの名前の開示だけ。
それでも、こんなに沢山の人が協力したということが心強い。

クリックすると元のサイズで表示します

そして、レビューには、
「全国民が観るべき」
「この映画を契機に日本政府を動かす力になれば」
「日本人は全員が見なければ、一生後悔する映画です」
「多くの人に映画館で観て欲しいです」
「とにかく一度ご覧ください!」
という声があふれていた。

映画の中で流れる美しい曲は、
私が好きな、
カッチーニの「アヴェ・マリア」
聴きたい人は、↓をクリック。

https://youtu.be/aYzhOe4CYNA

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/yPp-nyOlh1A

私は人生の最後に、
北朝鮮が崩壊して、
拉致被害者の方々が帰国して来る日を夢想する。
それを見届けるまでは生き延びたいと思っている。

「拉致問題国民大集会」に参加した時のことは、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20100425/archive

映画「めぐみ」については、↓をクリック。

http://star.ap.teacup.com/applet/shokuniku/20061221/archive


タグ: 映画

映画『ペンギンが教えてくれたこと』  映画関係

[映画紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

題名には「ペンギン」とあるが、
映画にペンギン鳥は登場しない。
物語で重要な役を果たすカササギフエガラスが、
体色の白と黒のバランスがペンギンに似ていたため、
付けられた名前である。

クリックすると元のサイズで表示します

カササギフエガラス・・・
   スズメ目フエガラス科に分類される鳥。
   カササギと外観は似ているものの、類縁関係にはない。
   むしろカラスに近い。
   オーストラリア及びニューギニア島南部に分布。
   体長は37〜44p、ミミズ等を食べる雑食性の鳥。

サマンサ・ブルームは夫と男の子ばかり3人の5人家族。

クリックすると元のサイズで表示します

みんなで出かけたタイ旅行中、
サマンサは折れた手すりに座ったため
屋上から落下して脊髄損傷の大けがを負い、
下半身不随になってしまう。
オーストラリアの自宅に帰ってからも
寝たきりと車椅子の生活で、
「自分は用なし」と自虐の日々を送っていた。
長男は、屋上になどに誘ったから、
お母さんが事故にあったと、自分を責め続けている。
かつてのような慎ましくも幸福な家庭にはもう戻れないのか。

クリックすると元のサイズで表示します

そんな中、巣から落ちて怪我をしたカササギフエガラスのヒナを
子供たちが連れてきた。
サマンサはそれをうっとうしく思っていたが、
傷ついた小鳥を放っておくこともできず、
渋々世話をする日々が続いた。
やがて、怪我を負って飛ぶことができない小鳥を
今の自分自身と重ね合わせ、
サマンサとペンギンの間に絆が芽生えていく・・・。

クリックすると元のサイズで表示します

家族の柱である母親の障害に苦しみながら、
一羽の小鳥を通じて生きる希望を見出していくという、
王道を行く、動物と人間の関わりを描く作品。
傷の癒えたペンギンが始めて空を飛ぶシーンは、
やはり、感動する。

クリックすると元のサイズで表示します

これ、実話
サムの夫のキャメロン・ブルームと
ブラッドリー・トレヴァー・グリーヴが書いた
ノンフィクション
「ペンギンが教えてくれたこと 
ある一家を救った世界一愛情ぶかい鳥の話」

を原作としている。

クリックすると元のサイズで表示します

原題は「Penguin Bloom 」で、
「Bloom 」は「花開く」の意味だけではなく、
ブルーム一家の一員であることを示している。

豪米合作で、
監督はグレンディン・イヴィン
主演はナオミ・ワッツが務めた。

クリックすると元のサイズで表示します

ナオミは製作にも名を連ねている。
夫のキャメロンはアンドリュー・リンカーン

クリックすると元のサイズで表示します

今年1月21日、オーストラリアで劇場公開された後、
1月27日にその他の国でNetflixにより配信された。

ペンギンに励まされたサマンサは、
カヤックに挑戦して、生き甲斐を見出し、
カヤックの世界選手権に出場。
のちに、障害者サーフィンの世界選手権で2度優勝している。
エンドクレジットで、
ブルーム一家の写真が登場する。

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/yKd2HtHQ_ZM

タグ: 映画

映画『私は確信する』  映画関係

[映画紹介]

クリックすると元のサイズで表示します

フランスで実際に起こった未解決の「ヴィギエ事件」を扱った
裁判サスペンス映画。

2000年2月、
大学教授ジャック・ヴィギエの妻スザンヌ、38歳が失踪、
夫のジャックがスザンヌ殺害の容疑者として裁判にかけられる。
ジャックの息子と関わりを持ったシングルマザーのノラは、
ジャックの無実を信じ、
敏腕弁護士デュポン=モレッティに事件の弁護を懇願。
自らアシスタントとなり、
膨大な通話録音データを分析するなど、
(250時間もの通話記録なんて、どこから取得したのだろう。
そんなものに証拠能力があるのか?)
ジャックの無罪を証明するために努力する。
(ほとんどの人物が実名で登場する中、
このノラだけが、創作上の人物だという。)
刑事、ベビーシッター、スザンヌの愛人らの
証言が食い違う中、最終弁論を迎えるが・・・

クリックすると元のサイズで表示します

国ごとに法体系は違い、
その食い違いに面食らうことがあるが、
この裁判はその最たるものだ。
なにしろ、スザンヌの死体が発見されない「死体なき殺人」
殺人の物的証拠もなく、ジャックの自供もない。
それなのに、
日本の裁判で常識の「推定無罪」も
「疑わしきは被告人の利益に」も
「証拠裁判主義」も通用しない。
8人の陪審員の心証のみ。
陪審員が「有罪」と判定すれば、
殺人罪が成立してしまうのだ。
陪審員の席も、アメリカのように、
脇から裁判を見守るのではなく、
裁判長の左右に4人ずつ配置される。

ジャックが疑われたのは、
彼がヒッチコック狂で、
「完全犯罪は実現可能だ」と言ったというからで、
マスコミの報道は加熱する。
そのあたり、週刊誌の「疑惑の銃弾」で犯人扱いされた
三浦和義「ロス疑惑」を想起する。
マスコミの報道を後追いする形で逮捕、裁判が行われたが、
「殴打事件」の有罪のみで、
殺人罪は最高裁で無罪と確定した。
その後、アメリカ側からの逮捕により、
身柄移送されたロサンゼルス市警の拘置所内で自殺している。
(他殺の説もある)

ヴィギエ事件は、
死体もなく、物的証拠も、動機も、自供もない事件で、
日本でなら、公判の維持困難で確実に立件しない。
日本の検察は「立件した以上有罪にする」が至上命令だからだ。

もう一度くり返すが、
死体なし、殺人の証拠なし。
それでも裁判に持ち込むフランス人は頭がおかしいのではないか、
と言うと差別的になるので、
フランスの司法当局は頭がおかしいのではないかと、言い換える。
何だか、一つの不条理劇を見せられているようだ。

そういうわけで、
「こんな事件で裁判とは」
という違和感がずっと付きまとったので、
映画は楽しめなかった。
とんでもない茶番に付き合わされている感じがしたからだ。

事件は未解決。
殺人か失踪かも判然としない。
もし単純に失踪だとすると、
一番悪いのはスザンヌということになる。
生きている自分を殺したとの咎で
夫が裁判にかけられているのを、
どこかで傍観していることになるからだ。
しかし、子供3人を残しての失踪は考えられず、
やはり殺人の可能性が高いが、
一番臭いのは、スザンヌの愛人だろう。
そのあたりの捜査はその後、どうなったのか。

2016年にパリで日本人女性留学生が行方不明になった事件で、
チリ人の男に殺人の疑いがかけられ、
チリに逃れていた男がフランスに移送され、
殺人容疑で裁判が開かれることになった。
これも「死体なき殺人」で、状況証拠のみ。
かなり怪しい。
ただ、容疑者は捜査官らに
「彼女がまだ生きていると確信している」と語っている。
つまり、映画と同様の裁判が現実に進行中である。

ただ、マスコミが一人の人間を血祭りに挙げて、
その家族たちにまで被害が及ぶ姿は痛ましかった。
容疑者の顔は憔悴し、心を病んでいるという。
マスコミの罪は大きい。

5段階評価の「3.5」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/fcg1lW5md1w

ヒューマントラストシネマ有楽町他で公開中。

タグ: 映画




AutoPage最新お知らせ