映画『パウロ 愛と赦しの物語』  映画関係

[映画紹介]

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「新約聖書」を題材とし、
イエスの生涯を扱う映画は沢山ある。
第1弟子ペテロが登場する映画も若干ある。
しかし、パウロを主人公にした映画は珍しい。
私の知る限りでは、初めてではないか。

パウロ(英語名ポール)は、
初期キリスト教の使徒の一人。
ただし、生前のイエスには会っていない。

ユダヤ教徒であったパウロ(ユダヤ名はサウロ)は、
当初熱心なユダヤ教徒の立場からキリスト教徒を迫害していたが、
旅の途上において、
「サウロ、サウロ、なぜ、わたしを迫害するのか」と、
天からの光とともにイエス・キリストの声を聞き、
回心してキリスト教徒となった。

イエスの福音はすべての人に無差別に伝えられたものだとして、
異邦人(ユダヤ人以外の民族)の伝道を重視し、
古代ギリシア・ローマ一帯の宣教に熱心に取り組んで、
キリスト教発展の基礎を作った。
スペインにまで伝道旅行をしたとの伝承もある。

パウロはローマ市民であり、
ギリシア語とヘブライ語を話すことが出来、
各地の信徒たちを励ます沢山の手紙を送った。
それらの手紙は霊感によって書かれたものとされ、
「ローマ人への手紙」「コリント人への手紙」など
14篇の「パウロ書簡」が新約聖書の中に収められている。
ただ、そのうち7篇は弟子が書いたものや
後代の筆者によるものという研究もある。

パウロは、イエスの十字架での磔刑を、
神の子として人間の身代わりとなって人間の罪を贖い、
神への信仰によってのみ救いが得られると説いた。

「パウロによってキリスト教は思想となり、
アウグスティヌス(354〜430)によって神学となった」
という説があるとおり、
キリスト教の歴史上、欠かせない人物で、
使徒の中でペテロと並ぶ存在だ。

大変な名文家で、
パウロ書簡の中には素晴らしい金言が多い。
たとえば、

たといわたしが、人々の言葉や御使たちの言葉を語っても、
もし愛がなければ、わたしは、
やかましい鐘や騒がしい鐃鉢と同じである。
たといまた、わたしに預言をする力があり、
あらゆる奥義とあらゆる知識とに通じていても、
また、山を移すほどの強い信仰があっても、
もし愛がなければ、わたしは無に等しい。
たといまた、わたしが自分の全財産を人に施しても、
また、自分のからだを焼かれるために渡しても、
もし愛がなければ、いっさいは無益である。
愛は寛容であり、愛は情深い。
また、ねたむことをしない。
愛は高ぶらない、誇らない、
不作法をしない、自分の利益を求めない、
いらだたない、恨みをいだかない。
不義を喜ばないで真理を喜ぶ。
そして、すべてを忍び、すべてを信じ、
すべてを望み、すべてを耐える。
        (コリント人への第一の手紙 第13章1節〜7節)        

など、キリスト教徒でなくても、
胸がキュンとなるはずである。

この映画は、そのパウロの青年時代ではなく、
老人となったパウロの、死への道を描く。

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紀元67年。
皇帝ネロはローマの街を焼き尽くした大火事の原因を、
キリスト教徒の放火と判断し、
その首謀者としてパウロを逮捕し、牢に閉じ込めた。
医師のルカはつてを用いて、
投獄されたパウロに会いに行き、
パウロの言葉を書き記し、人々に伝えようとする。
パウロはかくまわれているキリスト教徒たちに、
暴力ではなく愛をもって戦うことを伝える。
だが血気にはやった彼らは
剣を取ってローマ軍に立ち向かおうとする。
しかし、パウロにも、共に捕らわれたキリスト教徒たちにも
最後の時が近づいていた・・・

ルカ(英語名ルーク)は、
「ルカによる福音書」と「使徒行伝」の筆者だと言われ、
医師であったという伝承がある。
この映画は、その伝承を上手に使って、
物語を作り上げる。
獄舎の長官マウリティウスの娘が瀕死の病となり、
医師ルカにその救済を求める、などという設定は
映画上の創作で、伝承をうまく取り入れている。
また、パウロが回心前の自分が殺めた人々の夢を見て、
うなされるなどという描写も映画上の創作。

パウロは皇帝ネロの弾圧の中で命を落としたとされるが、
詳細は明らかではない。
「使徒行伝」は、前半はペテロ、後半はパウロの行跡を書くが、
パウロの死は触れていない。
作者と言われるルカがパウロの死を知らないはずはないので、
ルカは「使徒行伝」の続編で、
スペインへの伝道とパウロの死について
触れるはずだったのではないか、
との説もある。
なお、ペテロの死については、
外典である「ペテロ行伝」の中で、
ネロの迫害下で逆さ十字架にかけられて殉教したと書かれており、
その場所の上にサンピエトロ寺院は建設されたとされている。
(ピエトロはペテロのローマ読み。英語名はピーター)

この映画は、
ローマで捕らえられた晩年のパウロを
ルカとマウリティウスの視点で捉えた
しっかりした人間ドラマとして作っており、
その中にパウロの思想と
キリスト教の本質を織り込んでいる。
映画の中で奇跡は起こらないし、
宗教的に荘厳な描写があるわけではない。
宗教映画ではあるが、
宗教宣伝映画ではない


その点が大変ユニークで、見どころとなっている。

なお、メル・ギブソン監督の「パッション」でイエス・キリストを演じた
ジム・カヴィーゼルがルカを演じているのは、配役の妙。

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パウロを演ずるのは、ジェームズ・フォークナー

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監督はアンドリュー・ハイアット

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/238fo5HqQcc

ヒューマントラストシネマ渋谷で上映中。

ネット予約の時は、
席はガラ空きだったが、
現場では、席は埋まっていた。
つまり、ネットでチケットを取らない、
普段映画を観ないような
キリスト教徒の中高年が押し寄せており、
こういう映画も一定の需要はあるようだ。

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映画『ガンジスに還る』  映画関係

[映画紹介]

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インド人の死生観を描いて、
どの文化の者にも通じる普遍性を持つ佳作。

子供の頃の母との思い出を表す夢を立て続けに見て、
自らの死期を悟った高齢の父ダヤは、
ガンジス河畔の聖地バラナシへ行って死ぬのを待つ、
と家族に宣言する。
家族は反対したが、決意を曲げない父に、
仕方なく、息子ラジーヴが会社を休んで付き添うことになる。
バラナシで二人が住むのは、
死に向かう時をすごす人々が集う施設「解脱の家」。
そこで父と子は、人生の最後の時間を共に過ごす・・・

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バラナシは、ヴァーラーナシー、ワーラーナシー、
ヴァーラーナスィーとも表記される。
英領植民地時代に制定された英語表記のBenares の誤読により、
ベナレスとも日本語では称される。

ヒンドゥー教徒は、
バラナシで火葬されて、
ガンジス河に遺灰を流してもらうと
輪廻から解脱できると信じられているため、
インド各地から
多い日は100体近い遺体が
金銀のあでやかな布にくるまれ運び込まれる。

また、インド中からこの地に集まり
ひたすら死を待つ人々もおり、
ムクティ・バワン(解脱の館)という施設で、
家族に見守られながら最後の時を過ごす。
ここでは24時間絶えることなく
ヒンドゥー教の神の名が唱えられており、
亡くなる人が最後のときに
神の名が聞こえるようにと配慮されている。

しかし、映画で描かれる解脱の家は、
死を待つ人々でさぞ静謐な場所と思えば、
食事は自分たちで作らねばならず、
味に文句も出る。
洗濯もしなければならないし、
教義をしっかり学習しているわけではなく、
休憩室ではテレビドラマをみんなで見ている有様。
つまり、日常と同じことが繰り返されるのだ。
ルールもあいまいで、
期限は15日とされていながら、
15日を越えると、
名前を変えれば、延長が許されるという、インド的いい加減さ。
中には夫と共に入居して、
夫は先立ったが、
そのあと、18年も滞留している夫人がいる。

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原初の生活のように見えながらも、
ITの波は押し寄せて来て、
ラジーヴにはスマホで頻繁に電話が入るし、
ネットカフェで娘とテレビ電話をしたりする。
ラジーヴは長期仕事を離れていたため、客を逃がしてしまう。
やがて、妻と娘もやって来て、
家族全員が解脱の家で団欒を過ごすという光景も現れる。

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そういう日常の煩瑣なことに煩わされながら、
父と子は濃密な時を過ごす。
父が死にそうになり、
最後の別れの言葉を涙ながらに交わしながら、
死なずに日常が延長されたりもする。

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河べりに坐って、
「生まれ変わっても同じ家族になりたい」
という息子に対して、
「また人間にはなりたくない。
自分はライオンに、いや、カンガルーに生まれ変わりたい。
そうすれば、いろいろなものをポケットに入れられるから」

という父子の会話が麗しい。
死を前提としての親子の会話。
日本でそんなことが出来るのは、
不治の病にかかった父と子の間くらいだろう。
それは、病気による強制的離別だが、
映画で描かれるインドのそれは、
自然の変転に身を委ねた、
長い長い悠久の歴史の中での一コマに見えてくる。

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生まれ、結婚し、子供を生み、
子孫を残してこの世から去って行く。
そして、忘れられていく。
その何千年何万年も前から繰り返されてきた人間の営みを
雄大なガンジス河のほとりのバラナシの解脱の家での
家族の絆の中で描く本作は、
日本人の心にも共鳴しあう、
美しい映画だ。
深刻な内容だが、
終始ユーモラスな視点で描かれるのも好感が持てる。

息子ラジーヴ役のアディル・フセイン
父ダヤ役のラリット・ベヘルが好演。

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ベヘルはプロデューサーや監督としても活躍する才人。
監督・脚本のシュバシシュ・ブティアニ

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1991年生まれの現在27歳で、
これが長編デビュー作というから驚く。
20代で、このような人生に透徹したドラマを作り出すのだから、
並の人ではない。
さすが、サタジット・レイを生んだ国だけのことはある。

5段階評価の「4」

岩波ホールで12月14日まで上映。

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/e7xg4bMys90


私がインドでバラナシに訪れた時の旅行記は、↓をクリック。

沐浴風景

プージャーの儀式

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映画『お熱いのがお好き』  映画関係

[旧作を観る]

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東京国際映画祭の特別企画「トリビュート・トゥ・コメディ」で鑑賞。

実は、私のDVD・BDライブラリーに
入っているものと思っていたが、
先日、捜したら、みつからない。
録画した記憶は誤りだったか、
それでは、観とこう、とチケットを取った。
その数日後、ライブラリーにあったことが判明。
模様のついた盤の上に題名が書かれており、
見逃したのだ。
しかし、チケットは既に取っていたし、
4Kレストア版(原画フィルムをデジタル補正した版)でもあることだし、
と出かけた次第。

上映前に、「高速!参勤交代」「空飛ぶダイヤ」の本木克英監督の話があり、
ビリー・ワイルダーと会った時の思い出を語ってくれた。
アメリカでワイルダーの作品上映会を観た帰り道、
向こうから歩いてくるワイルダーとばったり会い、会話。

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当時本木監督は監督になる前でシナリオが採用されず腐っていた。
それに対してワイルダーは
「君はシナリオを書く時、
自分が楽しんで書いているか。
それが肝要だよ」
と言ってくれたとか。

他にワイルダーがモンローを評して、
「モンローのようなコメディエンヌは
後にも先にも誰もいない」
と言ったというエピソードも紹介。

↓本木監督。
手にしているのは、ドイツで出たという本。
「お熱いのがお好き」の全カットが掲載されているという。

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さて、その本編。

禁酒時代のシカゴ。
もぐり酒場で
サキソフォンを吹いていたジョー(トヨチー・カーチス)と、
ベースを弾いていたジェリー(ジャック・レモン)は、
警察の手入れがあって失職。
新しい仕事場へ向かうため、自動車を借りにガレージに出かける。
そこで、二人は殺人を目撃してしまう。
ギャングに追われる身になった二人は、
ジョーがジョセフィン、ジェリーがダフネと名を変えて、
女装して女性オーケストラ一行にまぎれこみ、
マイアミ演奏旅行に出発する。

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オーケストラの一員に、
ウクレレ奏者の金髪娘シュガー(マリリン・モンロー)がいた。

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ジョーは一目でシュガーに惹かれたが、
女を装っているから、求愛もできない。

マイアミに着いたジェリーのダフネは、
老人の大金持オスグッド3世(ジョー・E・ブラウン)に
一目惚れされてしまう。
ジョーは男の姿に戻って
シェル石油の御曹司「ジュニア」と偽ってシュガーに接近、

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オスグッド3世のヨットを使い、
シュガーを連れ出すことに成功。

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一方、ジェリーはオスグッド3世の求愛を受け入れ、
すっかり女性になった気分。
二人の二重生活が進む中、
二人を追うギャング団が
会合のために同じホテルにやって来てしまい・・・

あり得ない設定だが、
ビリー・ワイルダーの手にかかると、別に不思議ではない。
「喜劇とは神の目線」と言った人がいるが、
登場人物が気づいていないことを観客は既に知っていて、
いつ気づくかいつ気づくかと期待するのは、まさに喜劇。

いやいや女装したジェリーだが
寝台車の中で女に囲まれた女護ヶ島状態に
ウキウキしてしまう様や
ジョーがジェリーに「俺は女だ」と呪文を唱えさせるところ、
オスグッド3世とダンスをして、
すっかり女になってしまったジェリーに
逆に「俺は男だ」と呪文を唱えさせるところなど、面白い。
このダンスのシーンが傑作。

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ジョーの企みに気づいたジェリーが
ばれることを期待して、面白がるところも笑わせる。
まさにジャック・レモンあってのシチェエーションで、
レモンは、この演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネート
この年は、「ベン・ハー」大量受賞の年という、不運な巡り合わせで、
チャールトン・ヘストンに敗れたが、
助演男優賞なら勝てたのではないか。

企画当初は
フランク・シナトラとミッチー・ゲイナーが主演の予定だったが、
ワイルダーがこの役にピッタリのジャック・レモンを見つけ、
推薦したという。
シナトラとゲイナーだったら、
全く違う映画になっただろう。
とにかく、モンローが超可愛く、
モンロー、レモン、それにカーチスが
化学変化を起こした幸運な作品。

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モンローは当初この映画が、カラー映画だと思っていたのだが
白黒映画だと知った途端に不機嫌になった。
ワイルダーは、制作費が不足していたからではなく、
カーティスとレモンの女装がカラーだと
うまくいかないので、白黒にしたと語っている。

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タイトルはマザーグースのPease Porridge Hotの2曲目から来ている。

Some like it hot
Some like it cold
Some like it in the pot
Nine days old
(お熱いのが好きな人もいれば 
 冷たいのが好きな人もいる 
 中には9日前から 
 鍋に残っているのが好きな人もいる)。

金持ちの老人を演じたジョー・E・ブラウンも、
結果的にこの人以外には考えられない演技で、
最後のセリフ「完全な人はいない」(Well, nobody's perfect. )は
アメリカ映画の名セリフベスト100の48位に選ばれた。

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とにかく、無駄がなく、
始めから最後までニコニコ笑って観ていられる
コメディ映画の傑作。
アメリカ映画協会(AFI)選出の
「アメリカ喜劇映画ベスト100」の第1位に輝いている。

後に「シュガー」と題してミュージカル化もされた。

アカデミー賞では、
監督賞、主演男優賞、脚色賞、撮影賞など
6部門でノミネートされ、衣装デザイン賞(白黒部門)で受賞。

ドラマ部門とミュージカル・コメディ部門で分かれる
ゴールデングローブ賞では、
ドラマの「ベン・ハー」とかち合うことなく、
ミュージカル・コメディ部門で、
作品賞、主演男優賞 (ジャック・レモン)、
主演女優賞 (マリリン・モンロー)
 
受賞している。

なお、
私が選ぶ「宇宙旅行に持っていく10本のビデオ」の1本に入っている作品。

初見は、1960年12月25日のクリスマスに、
渋谷の東急文化会館(現ヒカリエ)の7階にあった東急名画座で、
父と母に連れられて観た。
こんな艶笑コメディに、
中学1年の息子を連れていくなど、
なかなかたいした親である。

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映画『氷の季節』  映画関係

本日、夕刻4時10分、
定刻どおりに娘が帰国しました。

日程は、
11月1日 羽田を出発
11月2日 北京、ミュンヘン2度の乗り継ぎを経て、ヘルシンキ到着
       アイスホールで羽生選手の練習を観る
      (娘の持っている通し券は、練習風景を観れる特典付き)
11月3日 朝練習見学
       男子ショートを観戦
       会場の廊下で羽生選手と接近遭遇
       ヘルシンキ観光
11月4日 朝練習見学
       ヘルシンキ観光
       男子フリー観戦 
       エキシビション鑑賞
11月5日 ヘルシンキ観光
       ヘルシンキ出発
11月6日 ストックホルム、北京を経て羽田到着

浦安までバスで帰るのかと思いきゃ、
宇多田ヒカルのコンサートで横浜に行ってしまいました。
やれやれ。


[映画紹介]

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東京国際映画祭で鑑賞。

19世紀、デンマークの農村地。
元地主のイェンスは、
広い農地の割には作柄に恵まれず、極貧にあえいでいた。
娘と甥たちの4人暮らしだが、
少ないスープを分け合い、
小さなパンを千切りあう生活。
夜は寒さに震え、甥を抱いて暖めてやる。
この冬を越せるかも不明で、
餓死するのも時間の問題だ。

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そんな時、裕福な地主から土地購入の話が舞い込む。
イェンスはうまく交渉して、
家だけでなく、娘と地主との結婚にまで話を持ち込む。
それは隣家のやはり貧しい兄弟への裏切りだったが、
イェンスは家族のことを第一に考えて踏み切る。
こうして、貧困から抜け出し、
自分も平穏な老後を手に入れたのだが、
歯車が狂い始め、イェンスは他の大切なものを失う羽目に・・・

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まず、百年以上前の寒村を描く撮影が見事。
常に曇り、陰鬱な北欧の風土が物語の雰囲気を高める。
まだ電気が無く、ランプで生活しているデンマークの農村地の
暗い光の中での生活が貧困の様を映し出す。

次にイェンスを演ずる主演俳優の演技。

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元地主のプライドにこだわり、
しかしまわりからは困窮した現状を見透かされている。
なにしろ、教会の席を金持ちに譲ることを求められたりするのだ。
金に困り、売買や仕事の交渉を自らしなければならない苦衷を
主人公の俳優が見事に演ずる。
観ていて、うまい役者だなあ、
と思っていたら、
途中で、「ヒトラーに屈伏しなかった国王」で
ノルウェー国王を演じたデンマークの名優
イェスパー・クリンステンセンだと気づいた。
うまいはずだ。

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そして、一人の男の苦悩、家族の崩壊を
アップの連続で緊迫感豊かに描いた監督マイケル・ノアーの手腕。
貧困から逃れるための選択が
異なる運命を引き寄せる
人生の残酷さを描くノアー監督の技法は見事のひと言に尽きる。
人間の愛と罪や業を描く重厚的なストーリーが
現代にもある格差社会、貧困と真の幸福の問題も想起させる点、
今の物語でもある。

嫁ぎ先の奸智にたけた母親、
地主に忠実な執事の行為、
いやいやながら、裕福な新夫との生活に入ると
意外や次第にきれいになっていき、
奥様扱いされて、逆に父親との間に溝が出来る娘の存在も
イェンスの亀裂を酷なものにする。

中盤に出てきたあるシーンが
最後のシーンに繋がる巧みさ。
音楽も素敵だ。

魂を揺るがす、重厚な人間ドラマ

東京国際映画祭では
惜しくもグランプリを逃したが、
実質第2位に相当する審査員特別賞を受賞。
イェスパー・クリステンセンは男優賞を受賞。

5段階評価の「5」

クリップは↓をクリック。

https://youtu.be/Ni7TIAPdVLc

公開は未定。

「ヒトラーに屈しなかった国王」の紹介ブログは、↓をクリック。

「ヒトラーに屈しなかった国王」



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東京国際映画祭・受賞作  映画関係

娘は丸1日かけて、
無事ヘルシンキに着きました。
3便とも、隣席に人がおらず、
ストレス無しに過ごせたようです。

30分早く着いたために、
フィギュアスケート会場に行って、
羽生選手の練習風景も見れました。

電話で30分も話しましたが、
これ、LINEの無料電話
昔、国際電話で料金を気にしながら、
早めに切り上げる努力をしたのが夢のようです。

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今日は、家で夕食を済ませてから六本木に出掛けました。
↓夜の六本木ヒルズ。

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10月25日から始まった東京国際映画祭も、
本日が実質的には最終日。

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午後、受賞式が行われ、
明日はその各賞受賞作の上映会。

で、夜になってから行ったのは、
グランプリ受賞作の上映会があるからです。

つまり、チケットを取った段階では、
何が上映されるか分からないというスリルとサスペンス。

コンペティション部門16作のうち、
グランプリに選ばれたのは、
フランス映画の「アマンダ」↓。

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パリで暮らす青年ダヴィッドが
テロで姉を失い、
残された姪のアマンダの養育者となっていく間の
戸惑いと迷いと決意を描く、家族の愛と再生の物語。

観た感想は、
残念ながら、私の心の琴線に触れる作品ではありませんでした。

それよりも、デンマーク映画の「氷の季節」の方が
魂を揺さぶられる思いがした作品で、
「氷の季節」は、
実質的に第2位とも言える
審査員特別賞を受賞しました。
また、主演のイェスパー・クリステンセン最優秀男優賞
受賞したのは、納得出来るものでした。


受賞結果は以下の通り。

コンペティション部門

東京グランプリ:「アマンダ」(フランス/ミカエル・アース監督)
審査員特別賞:「氷の季節」(デンマーク/マイケル・ノアー監督)
最優秀監督賞:エドアルド・デ・アンジェリス監督
                    (イタリア/「堕ちた希望」)
最優秀男優賞:イェスパー・クリステンセン(「氷の季節」)
最優秀女優賞:ピーナ・トゥルコ(「堕ちた希望」)
最優秀脚本賞:「アマンダ」(ミカエル・アース、モード・アメリーヌ
最優秀芸術貢献賞:「ホワイト・クロウ
                    (イギリス/レイフ・ファインズ監督)
観客賞:「半世界」(日本/阪本順治監督)

日本映画スプラッシュ部門

作品賞:「鈴木家の嘘」(野尻克己監督)
監督賞:武正晴(「銃」)、田中征爾(「メランコリック」)

アジアの未来部門

作品賞:「はじめての別れ」(中国/リナ・ワン監督)
国際交流基金アジアセンター特別賞:ホアン・ホアン監督
                          (中国/「武術の孤児」)

東京ジェムストーン賞

木竜麻生(「菊とギロチン」「鈴木家の嘘」)、
リエン・ビン・ファット(ベトナム/「ソン・ランの響き」)、
カレル・トレンブレイ(カナダ/「蛍はいなくなった」)、
村上虹郎(「銃」)

アジアでの映画祭だから
アジアの作品を、という理屈があるわけではありませんが、
コンペティション部門では、
ヨーロッパ映画が独占です。





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