映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』  映画関係

〔映画紹介〕

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トランボとは、ハリウッドの脚本家、
ダルトン・トランボのこと。

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「赤刈り」にあって
アメリカの映画界から追放。
偽名で脚本を書き、
そのうち2本がアカデミー賞の原案賞に輝いた人物。

赤刈りとは、
1950年代にアメリカ合衆国で発生した
反共産主義に基づく社会運動、政治的運動。
アメリカ合衆国上院議員の
ジョセフ・レイモンド・マッカーシーが中心人物であったことから、
「マッカーシズム」とも呼ばれる。
共産主義者であるとの批判を受けた政府職員、
マスメディアの関係者などが攻撃された。

映画界に対しては、
映画監督、脚本家や映画俳優などの中で
人生のある時期に
共産党と関連があった人物がやり玉に上げられた。
下院非米活動委員会が取調べを行なうため、召還したが、
召還や証言を拒否して
議会侮辱罪で有罪判決を受けた主要な10人を
ハリウッド・テンと呼ぶ。
列挙された人物は映画産業で働くことを拒否され、
思想信条差別の一大事件となった。
「自由の国」のはずのアメリカで
このような言論統制があったとは驚きだが、
東西冷戦下の副産物である。

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ダルトン・トランボはそのハリウッド・テンの中心人物とみなされ、
事実共産党員だったのだが、
服役後、映画界から追放を受けた。
(1952年、全米俳優組合は
映画スタジオに対し、
誰であってもアメリカ連邦議会で
自身の潔白を証明できなかった人物の名前を
スクリーンから削除できる権威を与えた。)

映画はその経過と
服役後のトランボの秘密活動を描く。
秘密活動とは、映画会社からB級映画脚本の依頼を受け、
それを追放されていた脚本家仲間に斡旋したのだ。

プロデューサー役のジョン・グッドマンがうまい。

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トランボ自身も脚本を執筆、
その鮮やかな出来ばえにプロデューサーが瞠目する。
バスタブに半身を浸かり、
タイプライターに向かって執筆、
切り貼りしてセロテープでつなぐなど、
実際のトランボのとおりにブライアン・クランストンが演じる。
レオナルド・デカプリオがいなかったら、
今度のアカデミー賞主演男優賞は彼のものだっただろう。

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他人名義で書いた「ローマの休日」(1953)が

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アカデミー賞の原案賞を受け、
(当時は脚本賞、脚色賞に並んで、原案賞というのがあった)
名義を借りたイアン・マクレラン・ハンターとの間で
オスカー像を真ん中にして、
「要る」「要らない」と話し合うシーンなど、笑わせる。

長年温めていた「黒い牡牛」(1956)でも原案賞を受けるが、

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この時は全くの偽名ロバート・リッチだったため、
受賞者が不明という事態も起る。

やがて、トランボに大作の脚本執筆の依頼が舞い込む。
カーク・ダクラス主演の「スパルタカス」(1960)だ。

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カークがやって来て、現在の脚本を示し、
「一つも面白くない」と言うところが笑わせる。
そして、「ストーリーはいいんだが」と。

オットー・プレミンジャー監督
「栄光への脱出」(1960)の原作を持ち込んで言う。
「駄作だ」そして言う、「ストーリーはいいんだが」。

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このあたり、脚本というものが
ストーリーだけでなく、
セリフがいかに粒立つかで決まる、
ということを示して興味深い。

映画界を牛耳るゴシップ・コラムニストの
ヘッダ・ホッパーヘレン・ミレンが演ずる)が
カークをたしなめて、
「どうしてそんなならず者になってしまったの」
と言うと、
カークが「前からそうだ。あんたが気づかなかっただけだ」
という部分も、カーク、男前、と拍手したくなる。

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ヘッダ・ホッパーの圧力にも負けず、
「スパルタカス」は評価を得るが、
その上映館で、スクリーンに写る
「脚本 ダルトン・トランボ」の文字が
トランボの眼鏡に裏写りするシーンは監督(ジェイ・ローチ)のセンスがうかがえる。
クレジットに彼の名前が再び現れるまでには、
追放から13年が経過していた。

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ハリウッドの〈赤狩り〉、
数多の才能ある映画人を破滅の淵へと追いやった狂気の時代、
偽名でシナリオを量産し続けた
不屈の脚本家の生涯を浮き彫りにして感動的だ。
家族間の問題も過不足なく描かれ、
妻役のダイアン・レインも好演。

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非米活動委員会でのハンフリー・ボガートローレン・バコール
オスカー受賞の瞬間のニュース映像など、
当時の映像が見事に使われ、臨場感があふれる。

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名誉回復後、脚本家協会の会合に招かれたトランボの
スピーチが感動的だ。

アカデミー協会が「黒い牡牛」で
トランボの名前を刻んだオスカーを彼に贈ったのは
1975年になってから。
また、トランボの死後、
イアン・マクレラン・ハンターの原案・脚本とされていた
「ローマの休日」が、
実は追放中のトランボが執筆したものであったことが判明し、
同作品でハンターが受賞していたアカデミー原案賞が、
1993年に改めてトランボに贈られることになった。
授賞式では、トランボの代わりに妻クレオがオスカーを受け取った。
映画のクレジットタイトルにも
トランボの名前が付け加えられたのだ。

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実名でハリウッドに復帰した後も、
「脱獄」「パピヨン」などの大作・ヒット作に名を連ねた。
ベトナム戦争最中の1971年、
65歳の時、自身の唯一の監督作品として
原作・脚本を兼ねて「ジョニーは戦場へ行った」を監督した。
そして「ダラスの熱い日」(1973)の脚本を最後に1976年死去した。

いかなる言論弾圧にも負けず、
実力で存在を認めさせた
骨のある映画人の記録である

5段階評価の「4」

予告編は↓をクリック。

https://youtu.be/9y98eVZaBoU


なお、映画の中でトランボがバスタブにつかったままで
シナリオを執筆するシーンが出て来るが、
これは事実で、
トランボは慢性的な腰痛に悩んでいて、
毎日風呂に何時間か入るよう勧められており、
そんな時間がなかったトランボは、
デスクを風呂に持ち込んだのだという。

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↓の写真は、

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NBCの人気トーク番組
「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」
ブライアン・クランストンが出演した時のワンシーン。
舞台に泡だらけのバスタブが登場し、
司会者とクライストンがバスタブの中に入って会話をするというもの。
その上、ズボンパンツまで脱いでしまって・・・

動画を見たい方は、↓をクリック。

https://youtu.be/AEJMU3SOv8I


〔参考資料〕

ハリウッド・テンの10人

1.アルヴァ・ベッシー(脚本家)
2.ハーバート・ビーバーマン(映画監督・脚本家)
3.レスター・コール(脚本家)
4.エドワード・ドミトリク(映画監督)
5.リング・ラードナー・ジュニア(ジャーナリスト・脚本家)
6.ジョン・ハワード・ローソン(作家・脚本家)
7.アルバート・マルツ(作家・脚本家)
8.サミュエル・オーニッツ(脚本家)
9.エイドリアン・スコット(脚本家・プロデューサー)
10. ダルトン・トランボ(脚本家・映画監督)

ブラックリストに載ったその他の人物(大物が多い)

オーソン・ウェルズ(映画監督・俳優)
ジョセフ・ロージー(映画監督)
ジョン・ガーフィールド(俳優)
ウィル・ギア(俳優)
リー・グラント(女優)
ジョン・クロムウェル(映画監督)
バーバラ・ベル・ゲデス(女優)
ジェフ・コーリー(俳優)
ピート・シーガー(フォークソング歌手)
アーウィン・ショー(作家)

ライオネル・スタンダー(俳優)
アーロン・コープランド(作曲家)
ジュールズ・ダッシン(映画監督)
ジェローム・チョドロフ(作家)
ドロシー・パーカー(作家)
ダシール・ハメット(作家)
オーソン・ビーン(俳優)
ロイド・ブリッジス(俳優)
ハリー・ベラフォンテ(歌手)
リリアン・ヘルマン(劇作家)

アーサー・ミラー(劇作家)
リチャード・ライト(作家)
ジョン・ランドルフ(俳優)
マーティン・リット(映画監督・俳優)
ロバート・ロッセン(脚本家)
エドワード・G・ロビンソン(俳優)
ポール・ロブスン(俳優・歌手)
レオ・ペン(俳優)

タグ: 映画



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