『日本の心をつくった12人』  書籍関係

[書籍紹介]

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筆者の石平(せき・へい)氏は、
1962年、中国で生まれ、
1980年、北京大学哲学部に入学し、1984年に卒業。
北京大学在学中から中国民主化運動に情熱を傾け、
1988年、日本に留学。
1989年に勃発した天安門事件で、
「この国にはもはや用がない、何の愛着も義理も無い」
と祖国である中華人民共和国と精神的決別。
2007年、日本に帰化
留学中から日本文化に魅力を感じるようになり、
孔子や論語の思想が日本の精神に生き続けていると感激し、
日本人以上に日本を愛する人となった。

この本は副題に「わが子に教えたい武士道精神」とあるが、
その「わが子」とは、石平氏の実の息子で、現在9歳。
中国人の血を引く息子に「武士道精神」を教えたい、
というのだから、驚く。
日本人の父親で、息子に武士道精神を伝達したい、
と思う人がどれほどいるだろうか。

「日本の心をつくった12人」とは、
源義経、北条時頼、北条時宗、楠木正成、徳川家康、徳川吉宗、
松平定信、大塩平八郎、武市半平太、大久保利通、東郷平八郎、西郷南洲

の12人。
我々日本人でも、それほど深くは知らない人が多い。
一体、石平氏は、どんな経緯で、
これらの人物に出会い、注目したのであろうか。
他に、乃木希典、昭和維新の志士、特攻隊員、
三島由紀夫、一色正春
(海上保安官)にも触れている。

自己保身を求めず、
清廉潔白を貫いた典型的な「日本武士」たちは、
東洋的教養人の典型であり、
武士の魂と儒教の理念と禅の境地が結合して渾然一体となり、
つくり上げられた高潔無比、純一至大の人格であり、
聖人の道を一貫して実現させてきたわが日本国こそが、
本物の「道義国家」、
「中華」「中朝」と賛美されて崇められてきた中国よりも、
わが日本国こそが本物の「中華」であり、
まさに「真中の王朝」としての「中朝」だとまで言い切る。
論語をはじめとする儒教の精神や禅の教えは
本家の中国では文化大革命で徹底的に破壊されてしまったが、
日本で独自の発展を遂げ、完成されたという。

まさに、日本人のことを
日本人ではない人の方がよく本質を捉えているのだ。

武人として闘いに生き、
「死ぬ覚悟で戦う」ことをする一方、
政治や権謀術数は苦手で、
それゆえに死んだ源義経に「武士道」は始まる、
と著者は見る。
そして、北条時頼、時宗が禅の心と出会って、
武士道が確立した、と見る。
楠木正成は義経同様「寡」をもって「衆」を制し、
死ぬ覚悟で戦い「大義」を得た、とする。

信長、秀吉、家康の比較も面白い。
信長は、徹底した合理主義者で、いわば「西洋人」
秀吉は合従連衡の中国に生きたと同じで、いわば「シナ人」
家康は「忍」の一文字で天下を取った、伝統的「日本人」
もし、信長や秀吉が天下を取っていたなら、
という仮想シュミレーションも面白い。
信長は、日本伝統の政治・社会・文化などの要素を、
無用なものとして容赦なく排除、
日本の良き伝統である「宗教的多様性」をも破壊し、
最後は天皇まで否定して、自身を神としただろうという。
つまり、天皇を廃絶して、
宗教的多様性が消え去った後の日本は、
もはや日本ではなくなったしまうのだ。
明智光秀は、そのような信長による日本破壊を阻止したのだという。
秀吉がもし中国侵攻に成功していたらどうなるか。
漢民族の文化に吸収されて、
日本人は消滅しただろうという。
朝鮮半島における敗北は、
日本にとっても世界にとっても幸運だった。
そして、家康は江戸時代という日本史上最長の武士政権を作り、
その時代に武士道は一つの文化的体系として確立された。

徳川吉宗は、安定化してしまった武士の精神を鼓舞し、
武士の原点に帰って武士道精神の回復を図った。
松平正信の改革も、
貨幣経済に飲み込まれて、
失われつつあった武士道の回復を目論んでいた。
そして、幕末は日本という国を生き延びさせるために
武士、しかも下級武士たちが活躍した時代であった。
幕末を過ぎ、明治維新という未曾有の変革の時、
日本を興したのは、江戸時代から生き延びた武士たちの力だった。
武士という階層がなくなって、
武士道が一層の輝きを放ったのが明治だった。

明治という時代は、
政・官・軍及び経済・文化の各界において、
元武士を出自とする多くの素晴らしい人物が
満天の星のごとく現れて
いっせいに輝いた時代である。
わずか45年間の歴史において、
それほど多くの素晴らしい人物が輩出して活躍したのは
日本史上最大の壮観であろう。


そして、その系譜は、
「死ぬ覚悟で戦う」特攻隊にも引き継がれる。

最後にこのように結ぶ。

日本はやはり「武士」の国であり、
この日本から「武士」と武士道の精神をなくしてはならない。
日本民族が存続していくかぎり、
あるいは日本民族が存続していくために、
日本の武士道の精神は
永遠に受け継がれていくべきであろう。
それこそが、本書において
武士道精神の流れをたどってきた筆者の私自身の
切なる思いなのである。


元中国人の帰化人による、
日本に対する愛情宣言

それを我々はどうやって受け取っていったらいいのか。





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