小説『存在しない時間の中で』  書籍関係

[書籍紹介] 

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この本、8月18日発刊の書き下ろし。
つまり、山田宗樹の最新作

「シグナル」で、地球外知的生命体との遭遇を描いたが、
今度は宇宙を見守る「神」との遭遇

発端は、天山大学のキャンパス内にある
天文数物研究機構(AMPRO)。
同機構は、世界各国から百名以上の研究者や大学院生が集まり、
宇宙の始まりや仕組みなどの根源的な疑問を研究する機関。
その中に有志の集まりであるカピッツァ・クラブがある。
そのセミナーに一人の若者が闖入するところから始まる。
若者は突然セミナー会場に入って来ると、
ホワイトボードに数式を書き始め、23枚に及ぶ。
書き終えると、部屋から立ち去り、忽然と消えてしまう。

その数式を論文にして
アーカイブ(論文投稿サイト)に投稿したところ、
著名な理論物理学者アレキサンダー・クラウスが反応し、
長いステートメントを発表する。
それは、この宇宙の設計図を書いた
「何者か」との交信に関するもので、
それを確かめるために、ある実験を提案する。

それは、世界時7月1日16時(日本時間7月2日午前1時)に、
全世界の人々が同時に
空に向かって両手を左右一杯に広げ、
その姿勢を30秒間、保つ、というもの。
それが「何者か」の存在を受け入れるという、
人類の意思表示になるのだという。
後にこの日のことは「701」と呼ばれるようになる。

AMPROの屋上でも、
30人以上がその行為をした。

すると、空が真っ白になり、
月、雲、星、闇、夜空が消えた。
つまり、宇宙が消えた
その様子は、画像にも残された。

つまり、この世界を設計した「何者か」の存在が証明されたのだ。
それは、「神」と呼ぶしかないものだった。

宗教界が混乱する中、
その1年後、
奇跡が再現される、という期待が広がり、
天山大学には「聖地」として沢山の人々が集まる。

そして、再び「奇跡」が起こるが、
その記録は午前1時1分13秒までで、
その直後の午前1時1分14秒には、
大騒ぎする人々の姿が残されていた。
つまり、なんらかの「奇跡」が起こったが、
数秒間が時間ごと抜け落ちていたのだ。
(題名の「存在しない時間の中で」の意味)

同時に、謎の光に包まれた人々が目撃された。
確認されたのは全世界で99名(実際はそれ以上)で、
「光の人」と呼ばれるようになる。
それらの人々が異口同音に予言する。
「あと10年で宇宙が閉じられる」

そして、再びクラウスが受け取った、
「何者か」のメッセージが明かされる。

それは、人類が今いる宇宙は、
4次元時空(3次元空間+時間)。
時空シミュレーションのためのモデルとして、
「彼ら」が創造したもので、
今、研究は5次元時空(4次元空間+時間)にまで移行している。
最終目的は、「彼ら」の存在する
10次元時空(9次元空間+時間)モデルを完成させること。
だが、途中で4次元時空の中に人類を発見した。
人類が本当に自我を持つ生命体でないなら、
4次元時空モデルを閉鎖する。
しかし、自我を持つ生命体であると確認されたなら、
4次元時空を存続させる。
その証明期限は10年

人類は、「彼ら」=「神」に対して、
自らが「自我を持つ生命体」であることを証明しなければならない。
そんなことが可能なのか?
第一、どうやって証明するのか?
更に、どうやって伝達するのか?

という話が、カピッツァ・クラブのメンバー、
神谷春海、春日井建吾、平城アキラらの交流で描かれる。
同時並行して、莉央という少女の、猫を巡る生活が描かれる。
春海と莉央は、2度目の701の時、
別々の場所で「光の人」になる。
更に莉央は、新興宗教団体「センキア会」の後継教主になる。

そして、10年。
人類の住む4次元時空が閉じられるかどうかが決定する
701の日がやって来た・・・

という、やや難解な物語
最初の数式がどのようなものか分からない
(知っても理解できないだろうが)上、
クラウスの実験が、どのように策定されたかが不明だし、
そもそも、5次元時空、更に10次元時空がイメージできない。
「彼ら」が何のために実験し、
その宇宙の進化をどう見つめているかもイメージできない。
なぜ99人が選ばれ、
「宇宙が閉じる」というメッセージを送られたのか、
等々、分かるようで分からない。

カピッツァ・クラブのメンバーや
莉央という人物設定も生煮えで、
もう少し別な展開があったのではないか、
という疑問も沸く。

そういうわけで、挑戦は買うが、
疑問、不明に対して明快な答が提示されたとは言えず、
最後の展開も不完全燃焼のまま。
ちょっと困った小説だった。





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